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21.マッドサイエンティスト

昼食を終え、生徒たちがわらわらと修練場に集まり始める。


「思ってたよりも大きいですね。」


イリスが物々しく佇むモノリスを見上げる。



高さ3メートル、縦横奥行き共に2メートルの石柱。


高質量、高密度の物体は魔術で破壊するのは難しい。


それにこのモノリスはただの石ではなく、魔力抵抗が極めて高い、ガラス岩でできている。


ガラス岩に触れた魔術はその時点で魔力に込められた元素を拡散し威力が半減する。



「これはまずくない?」


「えぇ習得した魔術は使えそうにありませんね。」


「大体できないのが二人もいるんだから使わない方で行こうって話じゃん。」



イリスたちの考えていた方法は、純粋な魔力でただただ殴り続けるという、脳筋スタイル。




「ならもう一つの方法で行きましょう。化学の時間です。」










『第五種目を開始します。生徒はスタートラインに立ってください。』




アナウンスと共に、生徒たちが白いラインに立つ。



『スタートです。』




音声と共に、他クラスは2対3に分かれて、魔術を編み上げる。




「なるほどツーマンセルとスリーマンセルのローテーションか。セオリー通りで面白みはかけるが、なかなかわかっているじゃないか。」


リゼリアが感心する。


最も効率的な回し方ではあるし、魔力の持続時間で言えば最も効率的だろう。



「それでユーリー。お前のクラスは何をやっている?」



「俺もよくわからん。」




二人の視線の先には何やら慎重に作業する三人と、必死にジャミングを返す2人に分かれていた。



「複雑な式ではないが…何をやりたいのか見えてこないな。」



「うーむ。俺もさっぱりわからん。」




ユーリーもリゼリアも悩ましげな表情を浮かべて、特別編成クラスを眺めていた。








「あいつら何やってんだよ?」


「知らないわよ。それより早く術式組んで!」



他クラスの生徒は、未だにモノリスに一撃も入れていない特編クラスを見て訝しげに観察する。





「ジャミングが減ってきたね」



「確かにな。こっちのやってること、側から見たらなにやってるかわからないだろうし…」



ミーアと、ナーガがぼやきながら適当にジャミングを跳ね返していく。



「でもそろそろ相手もやばいぞ。第二はもう半分まできてる。」



「第1もいいペースねー。」


「だけどまぁ、イリスちゃんの言う通りなら成功すれば、勝負は一瞬らしいし。」


「だよねー。取り敢えず私たちは邪魔させないようにすればいいだけだし。」







「おいおい本当になにやってんだ?あいつらなにもしないで負ける気かよ!?」



ユーリーは若干の焦りと疑問に頭がいっぱいだった。



今のところ特編に動きはなく、他クラスはそろそろラストスパートに入り始める。



「えらく心配なんだな。だが私にも本当にわからんぞ。あいつらの使っている術式はわかった。収束、分離、そして冷却。いたって簡単な術だ。対象は…」



「空気だな。本当になにやろうとしてんだ?」









「液化まであと20秒です!」


リベラがそう叫ぶ。


「わかった。イリスさんこっちも分離と保存の準備はできてるよ。」



「了解です。サリウスさんは分離と同時に保存を。リベラさんはミーアさんとナーガさんと一緒にサリウスさんのバックアップを。」



(作戦は順調。あとは時間さえ…)



イリスははやる気持ちを抑え込み、モノリスに視線を向ける。



この量ならいける



計算を間違えてさえいなければ、確実に破壊できる。











「わかったか?」



「いんや?空気を分離、冷却をし続けたあと、さらに分離。これでなにができるって…あ。」



「どうしたんだ?何かわかったのか?」



「リゼリア!今すぐ第二と俺のクラスの間に障壁張っとけ!俺も特編の方に張っとくから!」



ユーリーは何か思いついたと同時に、跳ね起き、焦ったようにリゼリアに指示を飛ばす。


「ちょっと待て、いきなりどうしたんだ?障壁ならとっくに張ってあるが…」


「足りないかもしれねぇんだよ!あいつらが使おうとしてるのは…!」




その瞬間、圧倒的な爆発音と共に、特編のモノリスが弾け飛んだ。












「液体窒素?」


「えぇ。本で読んだことがありまして、液体から気体に気化する時の膨張率は約700倍。これを使えばあのモノリスもすんなりと木っ端微塵にできるかと。」



何食わぬ顔で言ってのけるイリスに残った4人は引きつった笑みを浮かべる。



「作り方は簡単。空気から余分なものを抜き出し、液体になるまで冷やしたら、あとは酸素と窒素にわかるだけ。魔術を併用すれば、やること自体は簡単です。あとはそれを思いっきり加熱して一瞬で気化させるだけ。」



ね?と同意を求めてくるイリスに4人は若干のマッドを感じていた。



「まぁイリスさんを信用するよ。」


4人は苦笑いをしながら頷くほかなかった。








黒い破片を撒き散らして爆散するモノリス。




「うひゃぁー思ってた以上にすげーな!」


「まるで花火のようだったよ。」


「これエンチャントなんてやらずにこっちやってればよかったんじゃない?」



口々に感想を述べながら、爆散した後を眺める。




「でもイリスさん最後ちゃんと障壁張ってたんだね。」



「それはどんな被害が出るかわかりませんでしたから。」



ニヘヘと笑ってみせるイリスに4人は、やはりマッドなものを感じ取った。









ブクマ、評価の方お願いします!

そろそろ体育祭編終わりにしたい…

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