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19.乱戦

最近お腹が緩くて困ってます…

「うらぁぁあ!」


ソラウスが第2クラスの本陣に突撃を繰り返す。


「ランゲルこいつヤベェよ!頭おかしいって!?」


「んなこと言っても仕方ねぇだろ!とにかく持ちこたえろ!」



「うわぁぁ!!また障壁が破られた!?」



奇襲を見事に成功させた特編クラスは、ゾフリットの率いるチャリオット班と、アレス率いる襲撃班に分かれて第1第2クラスを攻撃していた。



「人のことを頭おかしいとか言うんじゃねぇ!」


ソラウスはメンチを切りながら、障壁に殴りかかる。


「あんた無茶しすぎよ!身体強化かけてるこっちの身にもなりなさい!」


リベラが怒鳴りつける。



「あとちょっとなんだ!あと少しなんだが…ぁぁぁもう!鬱陶しい!おらぁ!」



「ソラウスくんの発言がだんだん知能指数が低くなってる…」


ナーガがため息をついて後方を見やる。



「ぼちぼち出てきはじめてるねー。」


ミーアが煙幕から出てくる生徒たちを見ながらそう呟いた。


「タイムリミットまではあと3分。ソラウスくん頑張って!」


フランがソラウスを励ます。



「くそう!まともに応援してくれるのはフランだけだ…」


ソラウスの目の恥から光るものが溢れていたのを知るものはいなかった。








「うぉおぉ!?やめろやめろやめろぉぉ!!」


シュラウドは絶叫を上げていた。


自分の棒の上に張り付く四人が、一斉に棒を揺らしはじめたのだ。


「シュラウド!あいつらなんか変なことしてるぞ!?」



生徒が声をあげた。


シュラウドは上を見上げると、そこにはいやらしい笑みを浮かべて、魔術を使うアレスたちがいた。



「おい、待て待て待て。何をしようとしている!?」



シュラウドは急いで適当な魔術式を編み、ジャミングを行使する。


「…ちっ…」


「おい今舌打ちしただろ!?分かるぞ!お前たちなんかやばいことやろうとしてるだろ!?」



アレスたちと第1の戦いは、拮抗状態にもつれ込んだ。

違いが魔術を使おうとしてそれを阻止する繰り返し。



「くそっ!アレス少しまずいぞ!」


シンカーが煙幕の方を見やりそう言うと、アレスも少し険しい顔を浮かべた。


「こっちはともかく、ソラウスたちは障壁が崩しきれてない…まずいな。」


アレスは少し悩み、顔を上げた。








「第2は捨てる。第1を落とぞ。」



アレスはそう言うと、指笛を吹いた。









「くそっ間に合わなかった!こうなったらやけだ!」



拳にありったけの魔力を流し込み、身体強化を活性化させる。



「くそっ!こいつまだやるつもりだぞ!?」


「障壁を出せ!」



ソラウスがこの三分間で割った障壁の枚数はおよそ70枚。三から二秒に一枚割っている。


第2クラスも魔術を行使し続け、疲労がたまっていた。



「あぁ〜もうこのバカは!」


「あっはっは!ソラウスマジで面白い!!」


「ソラウス君、一応余力は残しといてね。」


「あわわわ〜!む、無理しないでくださいね!?」



女子たちの声など我関せずと言ったように、ソラウスは打撃を繰り返す。


「ぬぁぁぁ!」


一枚、また一枚問われていく障壁を見て、ランゲルは焦りまくっていた。



(こいつヤベェよ!なんで殴り続けてんだ!やばいやばいやばい!このままじゃ押し切られる。)



そんな時…


「ソラウス下がれ!」



そんな指示を飛ばしたのはアレスだった。



「ミーア、フラン、ナーガ、リベラは後方に下がれ!ソラウスはチャリオットを引いて、時間を稼げ!」



「くそっ!時間かよ!」


悔しそうに引いていくソラウスを見て、ランゲルは嫌な予感を感じていた。




(女子四人が後方に下がって、チャリオットの防御力は下がった。今じゃなんの保護もない、ただ少し硬いだけの土塊。ソラウスが逃げ回ってもせいぜい2分が限度といったところだろう…ならなぜ?)



ランゲルが悩んでいると第2の生徒が声を張り上げた。


「ランゲル!俺たちのクラスがチャリオットに張り付いた!いけるぞ!」



そう指を指す方向にはソラウスの引くチャリオットに群れる第2と第1の生徒たち。


(いける!)


そう思った瞬間、ランゲルは視界の端に映ったものに、わずか数秒前に抱いた嫌な予感を想起した。






「ヒィィィィハァァァア!!!!」





煙幕から黒い影が飛び出す。

それはわずか数分前に見た光景。

飛び出したのは、ユリウスの乗る2台目のチャリオットだった。









煙幕から飛び出してきた2台目のチャリオットに、驚きつつも、ランゲルは指示を飛ばす。



「全力で障壁を張れ!!あのチャリオットの一撃はやばい!」



先ほどのチャリオットとは違い、形はずさんで装飾自体はほとんどないに等しい。


そしてすでにヒビが入っている。


が…



「なんだあのチャリオットを引いている牛!?闘牛かよ!」



そう。

引いているのは人ではない。


炎と雷によってかたどられている牛。


その速度は先ほどの比ではない。


圧倒的速度で第1クラスとの距離を詰めている。


「くそっ!早く落としてくれ!」


ランゲルは、ソラウスの持つ棒を眺め吐き出すようにそう言った。









「チャリオットを二台にしたら?」


そう提案したのは意外にもユリウスだった。


むくりと起き上がったユリウスは、眠そうに目をこすり続けながら続けた。


「多分だけど、相手は2倍の守備なんでしょ?なら、奇襲を陽動に、煙幕の中で二代目を作ってそれで二度目の奇襲をかけるなんてどう?」



「確かにそうだが、誰がチャリオットを作るんだ?それに誰が引く?ソラウス以外にあんなもの引ける脳筋はいないぞ?」


シンカーがそう聞くと、ユリウスはニンマリと笑って自分を指差した。


「俺がやるよ。多分一人でできるし。」


「お前やりたいだけだろ!」


シンカー達は訝しげにユリウスをみる。


そもそもユリウスの実力を知り得ない彼らにしてみれば当然だろう。


チャリオットの作成には魔術に長けた四人でやってもかなりギリギリという試算だ。


「できるんだな?」


だがアレスは短くそう聞いただけだった。


「できるよ〜。」


「ならいい。」



本人ができると言っている以上信じるしかない。


ユリウスの言う通り、決定力に欠けているのは事実だ。



「だがアレス、誰が引くんだ?」


ロキがそう聞くと、アレスの代わりにユリウスが答えた


「炎牛と雷牛に引かせるよ。あの魔術得意なんだ。」



炎牛と雷牛とは、高等魔術の一つ。

形状操作、一式によって足をかたどったものに、一時的に自立行動を付与する魔術。


対象が大きくなるほど難易度は上がり、また行動に対して詳細が細かいほど難易度が上がる魔術でもある。



「お前そんな魔術まで使えんのかよ…」


シンカーが呆れたように額に手を当てた。



「なんでもいいがお前ができる前提で作戦を組む。できないでは済まされないからな。」


「わかってるって。」








「ひゃぁぁぁ!!!これ楽しいいい!!」



ユリウスは風になると言わんばかりの速度で距離を縮める。



「おいアレス!あのバカこのまま突っ込む気だぞ!?」



「タイミングを合わせるんだ!3人とも雷鎖(らいさ)を用意しろ!」



第1の棒にめがけて突っ込んでくるチャリオットは、次第に地面から離れ出す。


シュラウドはその意図を感じとり大声で指示を出す。



「上にいるやつらを落とせ!あいつらチャリオットでこの棒を引く気だ!」



しかしその時すでに、ユリウスの引くチャリオットは、棒の頂上、高さにして8メートルまで浮いていた。


シュラウドたちは自分たちの真上を通って行くその光景を目に焼き付けるしかなかった。



「今だ!雷鎖を打ち込め!」



アレスの叫び声とともにらチャリオットの後ろ側に雷さが打ち込まれる。


すれ違いざまにチャリオットに、半ば転がり込む形で乗り込んだ四人。



「ユリウス!全力で引け!本体がもたない!」


アレスは乗り出すようにユリウスに叫ぶ。


「おっけー!」



炎牛と雷牛が加速して、一気に棒の先端を地面に引きつける。



「うぉぁぁぁ!!」



その反対からは、一人で本体を防衛するソラウスの断末魔が聞こえてくる






「「「いけぇぇぇ!!!」」」




土ぼこりとともに、二本の棒が倒れた

ほぼ同時。

勝敗はわからない。


『競技が終了しました。』




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