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1,職を見つけました

退団手当を会計で財務を担当しているアリスから受け取って、早々に王都に帰還した。

対処手当を取りに行った時、アリスからは考え直さないかとか聞かれたが、考え直すつもりもなければ、向こうが考え直しても退団するつもりだったのでNoとだけ言って手当を受け取った。


帰還するための馬車が次の日には来ると言うことだったので、その間に送別会をしてもらった。依頼された仕事はほとんど終わっていたので、団のみんな(副団長は除く)が来てくれた。


全員口を揃えて俺も職を探さなければとこっちを向いて言って来るが俺には関係ない。

関係ないったらない。

おいお前、こっちを見てため息すんな。


「みんなも転職すんのか?


しばらくは保留がほとんど。

転職する奴には実家を継ぐと言っている奴もいる

まぁ俺の場合孤児だから実家もクソもないけどね。

他には別の騎士団に入団するらしい。

これも俺には関係ない。

今は貴族の仕切る騎士団は信用できないのだ。


搾取ダメ絶対。


というわけで一番職の溢れている王都にやってきたわけだが…



どういうことだろう。

片っ端からクビになる。


騎士団の副団長を怒らせたと言ったら追い出された。

なんでも貴族に楯突く奴なんて雇えるかとのことだ。

接客業には、確かに貴族にへり下る傾向は強い。

だけどここまでとは思わなかった。


王都の役場の掲示板で仕事を見ていると、役人が求人を貼りに来た。


「どれどれ、紅玉騎士団入団者募集…却下だ。蹄亭コック募集中、あんな高級料亭で料理できるほど料理は上手くない。王城の執事を募集、給料高っ!絶対無理だけど…あ、この求人俺がクビになったやつだ…」


求人を見ながら悩んでいると、一枚の求人にたどり着いた。


「これ、俺にぴったしじゃね?」


『王立クラシアン学園騎士育成科非常勤講師募集。

※引退騎士、もしくは騎士育成科卒業生に限る。』



手にしたのは母校の求人だった。





求人を手に、母校へ足を運ぶ。

卒業したのは今から三年前。

それほど時間は経っていないが、三年間一度も足を運んでいないので感慨深いものがある。


「と思ったがそうでもねぇな。」


ぶっちゃけあまり学校に思い出はない。

この言い方だと、友達のいない可哀想なやつみたいに聞こえるがそんなことない。


そんなことないよ?


普通科のやっている文化祭とかいうお祭りもないし、ひたすら訓練と演習。体育大会と言う名のクラス合同練習。甘酸っぱい青春なんてありはしなかった。


そんな灰色一色の学校生活を思い出しながら歩いていると、校門が見えた。



「おっ、見えた見えた。おぉー綺麗になってる。ん?校舎もなんか変わってるな。改修工事でもしたのか?」


校門をくぐり事務室へ向かう。

事務室に着くと応接室に連れていかれた。


(間取りは変わっていないんだな。)


応接室にはまだ人事の人が来ていないようで、座って待っている。


2、3分してからドアが開かれた。


「本日面接を担当します、リゼリア・クインシーです。よろ…え?」


深紅の髪に、整った容姿、鋭くも美しい緋色の瞳をした面接官の女性は元担任だった。






「ユーリー・クロイツです。どうぞよろしくお願いします。」


知り合いでも今は採用を決める面接官だ。

ビジネスマナーはしっかりと、第一印象は爽やかに、

礼儀礼節は忘れずにおしぎの角度は四十五度で自己紹介を済ませる。



「ちょっと待て。貴様ここで何をやっているんだ?ユーリー・クロイツ。騎士団はどうした騎士団は?」


「前の職場ですか?諸事情で退職いたしました。」


もちろん敬語。

しかし一番最初に前の職場の話を聞かれるとは。

リゼリアめ、痛いところを突きやがる。


「退職?受理されたのか?お前が?馬鹿言え、金の卵を産む鶏を流す馬鹿がどこにいる!」



おぉっと?金の卵を産む鶏だと?そうそうに、評価が高いな。元担任だからか?それとも第一印象よかった?


「パワハラに耐えかねて、退職いたしました。」


正直に言うとめんどくさそうだからちょっと言い方をマイルドにしておきました。

嘘じゃないから大丈夫。


多分


バレなきゃ問題ない。


「どうせクビになったんだろう?貴様のことだ。クビだと言われて、煽るだけ煽ってやめたのだろう。そのうちリーシアから手紙でも来るだろうからすぐ分かる。」


うそーん

一瞬でバレた。なんなのテレパシーでも持ってんの?


「嫌だってね?俺は不当搾取を受けてたんですよ?ちょっとくらい煽ったってバチは当たらないでしょう?」


まぁ、煽ったのは不当搾取を受けたとわかる前だったけどね。一応弁明しておく。焦って敬語を忘れてしまった。


「まぁいい。貴様、いやユーリー、お前には騎士育成科の非常勤講師になってもらう。剣術と魔術の講師をやってもらう。お前は全系統を抑えてるからちょうどいいしな。細かい職務については後々説明するが、基本的に授業をカリキュラムに沿って行い、授業が終わったら日誌をつけ提出、評価方法については…まぁ裁量に任せるがクレームが来ないように。来てもちゃんと根拠を出せるようにしておけ。」


「え?採用してくれるんですか?」


「お前ほどの人間が教員として働いてくれるなら万々歳だ。こちらの都合も良い?」


都合が良いのか?よくわからん。

職務に関しては分かってはいたがかなりめんどくさそうだ。まぁ他に選択の余地がないから関係ない。


「日誌って報告書みたいなものですか?」


「少し違うが、報告書という点では一緒だ。何を何分やって誰がどう発言したのかだな。あとは次回の予定だ。」


ふむふむ。日誌自体はそんなに辛くはなさそうだ。小隊を2年率いて、報告書は書き慣れている。

リゼリアがちなみにと続ける


「カリキュラムといっても剣術はひたすら組手をさせながら指導。あとは筋力と体力のトレーニングだ。魔術に関して言えばそれぞれ系統の確定は済んでいる。共通の座学以外は個人技の特訓だからこちらもカリキュラムはあまり関係ない。」


「剣術と魔術の実技は自由にやっても良いと?」


リゼリアは頷く。


「まぁそんな所だ。自由といっても生徒が重症を負う様な指導や、虐待的な行為はもちろん禁止。騎士育成科だから割とそこらへんは緩いが、加減はしてくれ。」


おいおい。今の聞いたか?

重傷を負う様な指導は禁止だと?

俺がこいつに何回気絶させられたと思ってる?

心の中で中指を立てておく。

あくまで心の中でだ。よいこは真似しないでね。


「今考えていることを当ててやろうか?」


「わかってるならあの時自重してほしかったなー。」


ひらりと受け流して置く。


「まぁいい。こい、お前の担当するクラスを見せてやる。」


リゼリアはそういい、応接室から出た。その後をついていきながらいくつか質問をしていく。


「なんか校舎が綺麗になってるんだけどどうして?」


リゼリアはふっと、ドヤ顔で返してくる。


「国から金が降りてな。改装工事をしたのだ。当校の生徒が優秀なお陰だ。」


生徒が優秀だとなんであんたがドヤ顔するんだよ。

まぁ確かに、騎士団にいた時も他の騎士団の活躍はよく聞いた。確かに優秀なんだろうなー。


「でもなんでこんな時期に講師なんて募集してんの?」


今は10月後期に入ってから、日が経っている。

時期的にも講師を取るにはおかしな時期だ。


リゼリアは苦虫を噛み潰したような表情で答える。



「みんな退職したのだ。生徒が生意気すぎて。」


「は?」


え?

よく聞こえなかったんだけど?



「見て貰えばわかる」


そういってリゼリアは立ち止まった。

講義室の外にいてもわかるくらいのうるささ。

リゼリアが講義室を開けると一斉に静まり、こちらを向いた。


「貴様ら、自習とは休み時間とは違うのだ。貴様らは猿か何かか?まぁいい、新しい講師を紹介しよう。」


「どうもユーリー・クロイツだ。よろしく頼む。」


舐められては困るので敬語はなし。


すると講義室に笑いが起こった。


リゼリアは額に手を当ててうなだれる。


「お前の担当するクラスは最優秀かつ問題児の集まり。特別編成クラスだ。」









どうもはじめまして。

ユーリー・クロイツです。

少し前に上司にクビにされてから職を探して転々とした暁、やっと手に入れた職は母校の教師でした。

人にものを教えるのは得意なので、自信はありましたが、不安と期待で胸がいっぱいでした。

そんな自分を待ち受けていたのは、生意気にも初対面の大人に爆笑を被せてくる頭の湧いたクソガキ達でした。




あ、そうそう。

自分の嫌いなものを紹介しますね。

俺の嫌いなものは、平然と嘘をつく女と、金を貪ろうとするやつ。

そして…





生意気なガキだ!!!!!



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