18.チャリオット
棒倒二話めです。
「リベラ、数は?」
開戦と同時に一斉に襲いかかる第一、第二クラス。
「16、両クラス8人ずつだね。」
「予定通り、ソラウス、リベラ、ナーガ、ミーア、フラン。ソラウスお前が頼りだ。頼んだぞ」
「おうよ!」
「残った奴らは予定通りだ。おそらくかなり厳しい戦いだ。タイムリミットを6分に設定する。」
アレスは突っ込んでくるクラスを見つめる。
「行くぞ」
「手を組む?」
第一のシュラウドと、第二のランゲルが向き合う。
「そうだ。俺たちは今2回とも負けが続いている。お前らも特編にはいっぱいかまされてるだろ?」
「確かにそうだが…」
「俺たちは甘くみてたんだ。あいつらは確実に勝てる方法を選んでる。こっちの動き方も予測してな。だからこっちも確実に勝てる方法で行く。二倍の物量で押すんだ。」
シュラウドは悩む。
騎士として、チーミングは褒められることではない。
少なくとも、今まではそう思っていた。
だが…
「勝てる方法を考えるか…」
「第1と第2が残ったら、その時は陣地に戻ってリスタート、我が父の名にかけて約束しよう。」
ランゲルが心臓に手を当てて誓いを立てる。
「わかった。俺も父の名にかけて誓おう。」
ランゲルとシュラウドは手を取った。
「第1!第2と挟み込むように攻めるんだ!退路を作らせるな!」
「第2!トラップに気をつけろ!」
アレスとシュラウドが支持を飛ばす。
「シュラウド!敵の動きが…」
シュラウドは生徒の指差す方向を眺める。
そこには赤と青の球体が浮かんでいた。
「あいつら何する気だ!?」
「シュラウド!なんか変だ下がらせろ!」
ランゲルがそう言った瞬間、シュラウドはその光景に目を見開いていた。
赤と青の玉が地上1メートル弱で停滞し、玉同士が交わる瞬間。
アレスが確かにこちらを見つめ笑っていた光景を。
玉が交わった瞬間
白い煙幕を伴い、爆発が起きた。
爆発が起きた時、第1、第2の生徒たちは咄嗟に障壁を貼った。
「みんな大丈夫か!」
「こっちは問題ない!」
「こっちもだ!」
安否を確認する。
「水蒸気と土埃か!風を起こせ!視界を取り戻すぞ!」
オフェンスのリーダーが叫ぶ。
だがその返事は別のもので帰ってきた。
「お、おい。なんかくるぞ!」
「なんかってなんだよ!特編の生徒以外いないだろ!」
そう言って振り返ると…
「なんだあれ!?」
真横を大きな何かが通り過ぎた
「煙幕を使う。火系統と水系統の単純な蒸気と土ぼこりの煙幕だ。」
アレスは黒板に競技場の絵を描く。
「そもそもここまでの二戦を取ったら流石に警戒ぐらいはされるだろう。相手が結託しようとしまいと、俺たちを狙ってくる可能性は高い。」
「でもよぉー、そんなん風系統なり何なりで対処できるぜ?」
ソラウスが指摘したことに何人かが頷く。
「最終的には煙幕は解除されても構わない。タイムリミットを設定して、その間だけはこちらも煙幕を解除されないよう、妨害をかければいい。」
「それで?俺たちは煙幕の中で隠れているのか?」
シンカーの問いにアレスは首を横に振った。
「なんだ!?煙幕か!ランゲル、どうする!」
シュラウドが状況に対応しようと、結託中のランゲルに意見を求める。
「今引くのは的に背中を見せることになる!防御を固めるんだ!」
すると、煙幕の中から叫び声が聞こえてくる。
「うわぁぁ!!」
「なんだよあれ!?」
断末魔のような叫び声に、シュラウドとランゲルは息を飲んだ。
すると煙幕から大きな影がこちらに向かうのを確認する。
「おいおいおいシュラウドあれはなんだ?」
「知るか!なんだあいつら!こんなものまで用意してたのか!!」
煙幕から出てきたのは戦 車だった。
「敵陣につっこむだぁ!?」
ソラウスは大声を上げる。
「そうだ。この棒倒しは棒を持つディフェンスが、動いていいことになっている。この特性を最大限利用したい。」
この棒倒しは機動戦を重視させている。
棒を持つ本隊と、棒を攻撃する部隊に分かれ、どれだけ迅速に敵本陣を攻略できるかがかかっている。
「他のクラスと違って俺たちには人出が少ない。全員を攻撃に回す考えは的を得ていると思う。」
シンカーが頷く。
「確かに攻撃に兵力を割くのは得策だと思うが…棒のキャリーをゾフリットだけってのは…」
「そこはちゃんと考えてある」
「がはっはっは!おらぁ!行くぜぇ!」
棒を土の土台で固定し、浮遊の魔術をかけて浮かせる。
「ねぇ、少しこれ凝りすぎじゃない?」
ミーアが、そう聞くと
「そんなことないです!ナーガさんのセンスさがいいですもん!」
フランが返す。
「自分でもやりすぎたと思ってます。」
ナーガが下を俯く。
その頬は、羞恥のせいか少し赤い。
ナーガの形状操作によって作られたチャリオットは、まんまチャリオットだった。
棘のついた戦車の車輪
速度と軽量を重視したフォルム
そして猛牛のように笑いながら戦車を引くソラウス
「私的には最高。これ映像魔術で保存してんのかなー。してたら後で欲しいわ。」
リベラが笑いながらそんなことを言う。
「お前ら女子会じゃないんだから緊張感ってものをな…」
「おい隊長さん、このまま突っ込んでいいんだな?」
ソラウスがそう聞くと…
「全速前進だ。」
ソラウスは満面の笑みを浮かべる。
「お前ら速度を上げるぞ!舌を噛むなよ!」
「くそっ!全員防御を固めろ!」
「敵の目標はここだ!」
シュラウドとランゲルは焦ったように指示を飛ばす。
それも無理ないだろう
煙幕の中から出てきたのはあろうかとか完全武装の戦車。
猛牛のごとき速度でそれを引いているのは、巨漢のソラウス。
「障壁を前面にはれ!突っ込んでくるぞ!」
「ランゲル離れろ!このままじゃ乱戦に…!」
第1、第2が距離を取れないまま、特別編成クラスのチャリオットが衝突する。
障壁が割れる。
ソラウスが足を止め、戦車がその場に止まる。
「くそっ!距離を取れ!障壁を展開しつつ後退、一度攻撃隊と合流する!」
シュラウドは咄嗟に判断を下し、距離を取ろうとする。
しかしその瞬間、自分たちの棒に衝撃が走った。
思わず棒の上を見て確認する。
そこにはアレスたちがいた
「光 学 迷 彩を使用したい。誰か一人でいい、これを取得して欲しい。」
インビジブルは、高等魔術。
式の構造は単純なのに対し、作用点が四箇所に別れることで、習得が難しい。
「先に聞いておきたいんだが、インビジブルで何をするつもりだ?」
シンカーが尋ねる。
「攻撃部隊はユリウス一人を除いて四人全員ともチャリオットに乗り込む。ただし棒のてっぺんにしがみついてな。」
アレスの考えた作戦はこう。
まず煙幕を発生し、チャリオットを作成。女子はチャリオットの保持とゾフリットのサポートに徹する。
攻撃部隊はチャリオットに固定された棒のてっぺんにしがみつく。インビジブルで限界まで姿を消す。
この状態で敵陣に突撃。障壁を貼り、乱戦状態を作る。
乱戦を作り出したら、棒にしがみついていた攻撃部隊は高所からの奇襲をかける。
「これをやるには最低一人のインビジブルが使用できる人間が必要だ。」
すると、ロキが手を挙げた。
「俺インビジブル使えるよ?」
ロキはそういうと術式を展開し、姿を消した。
「すげぇな…インビジブルつったら高等魔術だろ?なんでできるんだ?」
ソラウスが驚く。
「うちの系譜魔術がインビジブルなんだ。俺は発現が早かったから使えるんだよ。」
そう言うと、ロキが姿を見せた。
「でも弱点もあるんだ。この術式、看破されにくい代わりに、それ以外の魔術が付与できないんだよ。だからこれ使ってる間は対象者は魔術が使えないんだ。」
「なら問題ない今回は攻撃部隊は身体強化ぐらいしか魔術を使うつもりはないからな。」
「シュラウド!煙幕の中にいた奴らがやっと戻ってきた!ここを耐えればいけるぞ!」
第1の生徒がそう叫ぶ。
「分かった!第1全力で守れ!上についてるやつらを落とすんだ!」
棒倒しは第2局面に差し掛かった
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