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16.レッド・ゾフリット

2日空いてすみません。

多分もう一本投稿します。


レッド・ゾフリットは猟師の息子だ。


特別な家柄でもなく、両親はいたって普通の人たちだ。



レッドは小さい頃から空想家で、よくぼんやりと空を見上げながら思考にふけていた。



どうしたらより効率的にイノシシを狩れるのか。

次の狩ではどのような群れが来るのか。



考えることに夢中になり、村ではすこし浮いていた。



そんな彼が魔術を使えることがわかったのは13の頃。レッドは魔術の本を読み、その才能が花開いた。




家中は大騒ぎ。

魔術が使えるということは、騎士になれるということ。


両親は国立の学校に入れようと、親戚中を駆け回り、レッドもまた、それに付き合わされた。



本人としては、騎士になれることはどうでもよかった。


別に憧れていたわけでもないし、魔術が使えるからなんだという話だった。


だが、曲がりなりにも親の信頼や善意を否定する気には、13の少年には無理だった。




流されるままに騎士育成科に入学し、学校に行くことになった。


騎士育成科は意外にもレッドにあっていた。


考えることの少ない田舎よりも、日夜発見に溢れる学校生活はとても華やかなものだった。



ある日、レッドは講師に向かって質問をした。



「そんな正面から戦うより、欺瞞情報でも流して両端の崖上から奇襲をかけたほうがいいのではないでしょうか?」



講師は言った



「そんな卑怯な絡めて、騎士の名折れである。正面から堂々と戦え。お前の悪い癖だ。」




訳がわからなかった。

自分はただ効率的で勝率の高い作戦を考えただけだったのに。

帰ってきたのは下らない騎士のプライド。



レッドは今までの勘違いに気づいた。


ここは頭の固い、プライドだけが高いやつらが、競って力を上げる場所だと。



その日からレッドはより一層思考にふけるようになった。

それは一種の意地であり、抵抗であった。



なんて言われようが搦め手を使い、卑怯な戦法だってとった。



そして、不良生徒として特別編成クラスに入れられた。









「…ふぅ。」



レッドはゴーレムを前に片膝をつく。


身体強化は切れていないものの、ゴーレムを倒すのにあと一歩足りていない。



「レッド!あと1分だ!それまでに倒せないならゴールしてもいい!」



クリアタイムを延ばすわけにはいかない。


(ハイラとクラリスは…)



後方からやってくる二人を横目に、ゴーレムとの攻防を続ける。


二人はゴールまであと15メートル弱。

その間のゴーレムは12体と言ったところだろう。


(順調か…なら救援は望みが薄いな。)



バックステップでサークルガードの、一撃を避ける。


その前踏み込んで首元に剣を突き刺すも、ヘビーソードによって一撃を防がれる。



このままゴールしても、一位にはなれるだろう。

だからこそシンカーも交代を許した。


だが…








修練上に這いつくばるのは何度目だろう。


背中には自分のクラスの講師、ユーリー・クロイツが座っている。



「あと1分持てばクリアできたんだがなぁー。」



身体強化を使用時間が足りず、組み伏せられた状態で、ユーリーは話を続ける。



「お前は騎士に向いてるよ。作戦を立てて、敵に立ち向かう。いいことだ。」



今までの講師とは反対のことを言ってくる。


「お前は正しいが、その正しさには力がない。」



「力?」


ユーリーは頷く。


「そうだ。馬鹿げた話だろうけど、現状正しいのは今までのやつらだ。それはあいつらに正当性があるからだ。あいつらが今まで培ってきた歴史があるからだ。たとえそれが嘘で塗り固められていたとしてもな。」



「お前には騎士の素質がある。頭の回転ももちろん、それを実行するだけの実力もな。ただ自信がない。」



「自信ですか?」


レッドは聞き返す。


自信がないつもりはない。


いつだって自分の考えには自信がある。



「だってそうだろ?自信があるなら人に隠したりはしないさ。お前がそういう人間であることを隠す必要はねぇんだからな。」



「いいか?お前の正しさを証明したいなら結果を出せ。正しい、正しくないなんて、結局は結果次第さ。お前の考えたこすい搦め手、卑怯な戦術、全てを使って他のクラスを倒せばいい。それがお前の実力の証明になる。」


ニヤリと笑うと、ユーリーは立ち上がった。



「なぁーに、それでもお前を馬鹿にする大人が現れたら、おれが何とかしてやるから。」







ヘビーソードの大振りが、レッドの脳天をめがけて振り下ろされる。


それをわずか数ミリで避け切る。


(あと40秒…クラリスとハイラは倒し終わってゴールまであと3メートル。なら…)



再び振り下ろされるヘビーソード


レッドはそれをしっかりと目で捉え…



剣を手放し懐に飛び込んだ。



「あぁぁぁぁあ!!」


腹の底から声を上げる。


ヘビーソードの柄を手に取り回転するように捻りあげる。


それはかつてユーリーの見せた太刀どり。



捻り上げたヘビーソードを重力のままゴーレムの片手に振り下ろす。


(もう一度振り上げている時間はない!なら…)


横薙ぎに振られるサークルガードを跳躍で回避。


腕に全力で魔力を流し込み、式を活性化させ、その腕でゴーレムの頭にヘッドロックをかける。




「アァァァア!!!」



怒号をあげ、首を引きちぎる。


「行けぇぇ!レッドォォ!!」



ソラウスが叫ぶ。



レッドは首を引きちぎり、ゴールラインに向けて走る。



最後の一人がゴールラインに入り、ブザーが鳴った。



『競技が終了しました。クリアタイム、9分57秒、撃破数、100体。総合点数…』




『150点』





「「「ウォォオォォー!!!!」」」



特別編成クラスの全員が第一修練上に出て、競技者五人にたかる。



「よくやってくれた。レッドは特に、最後の敵をよく倒してくれた。」



「ほんとだよぉ〜。後ろからめっちゃ心配してたんだかんね?」


ハイラとクラリスが頷く。


「私たちも応援に行きたかったんですが…」


クラリスは申し訳なさそうに頭を下げる



「いいんだ。そもそも独力で倒すつもりで作戦を組んでいたからな。あの最後の一体ずつだけやたらと強かったな。まぁソラウスには関係なかったが…」



ソラウスが大笑いする。



「はっはっは!!確かにな!」



「お前の基準はおかしいんだ!なんであんなパワーファイターを俺に振った!?」


シンカーがソラウスに詰め寄る。



「まぁいいじゃないか。勝ちはしたんだから。それより次の競技が…」



そうアレスが言いかけた時、アレスのすぐ横に、紙くずが飛んできた。




「何が勝っただ!ルールの隙をついて、それでも騎士になる人間か!無効だこんな試合!」



観客席からそう言ってきた人間はどこか見覚えがあった。



「あれ…グフ先生じゃないか?」


それは、かつて特別編成クラスの講師だった人間だった。







「無効だ無効!こんな試合に意味はない!」



「そうだそうだ!こんなの騎士の試合じゃない!」



「正々堂々やりなさいよ!この卑怯者!」




ギャラリーから非難の声が上がる。


そんな中、特別編成クラスの生徒たちは、特に怒りや悲しみと言った表情を浮かべていなかった。



そのことに他の生徒たちは不思議で仕方ない様子だった。


「あいつらなんで言い返さないんだ…」


「そうだよな?俺たちが負けたのは別にあいつらのせいじゃないのに…」


そんな声も上がっている。



そんな時、修練上の中心に、爆炎が上がった。



「なんだ!?事故か!?」


「キャァァァ!?」



ギャラリーたちは、騒然とする。




「どうも紳士淑女と言う名の世間知らずの皆さん!」



大きな声が上がる。


声の場所は先ほど爆炎の上がった修練上の中心。



「この度は生徒たちの成長を見ていただき、誠にありがとうございます。」




そこに立っていたのはニヤリと不敵な笑いを見せる、いつもと変わらないユーリーだった

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