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15.奇策発動

百人斬り編です。

あと1話続きます。

もしかしたら二話。



「「「「「身体強化」」」」」



五人の出したその言葉と光景に全員があっけにとられる。



『魔術の使用を感知。個々人に一度目の使用として注意勧告、及び警告を行います。二度目の使用は失格となりますのでご注意ください。』



会場にブザーと警告音が鳴り響く。

当の五人は…



「「「オラァァァァア!!」」」



猛進

先頭を走るのはシンカー、ソラウス、レッドの三人。


獣のごとく剣を振り、切っては踏み進み、切っては踏み進みの繰り返し。


瞬く間に五十メートルラインを超える。




「おいっ!反則だぞ!」



「審判は何をやっている!!」



「止めろ止めろー!!」



口々にバッシングを飛ばす観客たち。

だが…



「いいぇー?これはルール範囲内でございます。」



ユーリーが競技場に出て憎たらし笑みを浮かべる。



「彼らは一度魔術を行使し、注意勧告を受けただけです。二度目は失格ですが、一度までは見逃しているのは共通のルールです。」



リゼリアが補足の説明をする。



「そういうことかっ!…」



シュラウドは悔しそうに唇を噛み締めた。



「ど、どういうことだシュラウド!」



「彼らは一度魔術を行使した。ルール上問題ない行為ではある。そして一度目の魔術による事象は、この場合考慮されないっ!」


時は競技分けの時まで戻る。








「魔術を使う。」


レッドは四人を見つめそう言った。



「この文章的に、魔術の行使は許容範囲なのだろう。むしろあの先生だ、使えるものなら使ってみろと言われているようにすら聞こえる。」



「たしかに。一度目までは注意ってのは、そういう見方もできるな。」


ソラウスも頷く。


「だけどこれ、魔術使ったところでじゃない?このゴーレム、前見たことあるけど、耐性あるし、その上私たちの魔法で倒せるのはせいぜい15体くらいが限界よ?」



ハイラがそう言った。



「身体強化にしても、少ししか頼りにならないな。肝心の後半ではおそらく効力切れが落ちだ。」



シンカーが同意する。



「たしかにいくら五式でも、これを倒すのはせいぜい15体くらいが限界だ。身体強化も多少タイムが短くなるくらいだ。」


レッドが一枚の羊皮紙を出す。



「そこで複合魔術を使う。今回は身体強化と、魔力固定、そして事象固定の三つだ。」


羊皮紙にはかなり複雑な術式が編まれていた。



「先生に作ってもらった。まず術式に問題はないだろう。魔力固定で一度の発動で大量の魔力を保存し、事象固定でできる限り強化を保つ。」



「ちょっと待て、俺たちはそんな高度なことできないぞ?この式だって、かろうじて一つ一つの式が表す事象を認識できるくらいだ。接合部分なんてわけわからん。とても使えるものじゃ…」


シンカーがまくしあげ、反論を返す。


この複合術式は、多元が二つ、四式がひとつの複合魔術。

高難易度な魔術であり、とても今の五人には使える代物ではない。



「えぇー?シンカー諦めんのー?できないからって?だっせぇぇー」


水を差したのはユーリーだった。


「なっ!?そんなんじゃありません!ただ現実的かつ効率を考えるならっ!」



「効率の意味を履き違えてるようだから教えてやる。勝てる作戦もねぇのに勝負を挑むのは効率とは言わん。ただの無謀だ。」



ユーリーはヘラヘラと笑ってシンカーを煽る。



「だいたいお前ら授業サボりまくって勝てると思ってるあたりお花畑だろ。入学した時頭良かったとか言ってもサボり魔はねぇー?」



シンカーは額に血管を浮かべる。


「いいですよ?この複合魔術を習得してやりますよ!こんなの簡単すぎて、特訓にもなりませんよ!」


シンカーの答えを聞いて、待ってましたと言わんばかりにニヤつくユーリーを、シンカー以外の四人はしっかりと見ていた。







「あっるぇぇ?できないのぉぉぉ?」



「くっ!?ちくしょう!こいつマジでウゼェェ!?」



シンカーは暴言を吐き出し、地面をたたく。




「同時並行でやろうとするからだ。ひとつ一つをできる限りタイムラグゼロでつなぐ。すると式がひとつになり、予想通りの結果を生む。接合部分を意識しすぎだ。ほらもう4セット。」



複合魔術の最大の壁、それは接合部分。

式同士のつながりが複合魔術の要となる。


接合部分をおろそかにすれば、魔術は発動しないか、ひとつ目の式だけの魔術となる。


かと言って接合部分を意識しすぎると、魔術全体の流れが乱れ、発動したとしてもろくな事象変換を及ぼさない。



「ほれほれ!さっさとやらねぇと実践特訓すらできねぇぞ?」


ユーリーの高笑いが修練上に響いた。










「くそがぁぁ!」


「どけよおらぁぁ!!」


「ふんっ!!」



三人は最後尾まで到達する。


目の前にいるのは全部で15対のゴーレム。今までの雑魚とは違い、サークルガードとヘビーサードを持っている。




「1人五体か。」


「いけるか?」


「余裕!」



三人がゴーレムに飛びかかる。



「なんであいつら身体強化があんなに持つんだよ!」



「不正だろ!調べろ!」


「だけど監視ゴーレムはなんも反応してないぞ?」




そんな怒号が飛び交う中、アレスはレッドの意外な側面に驚いていた。


レッドは寡黙な生徒で、自己主張が少ない。


能力は高いのだが、それを知る機会は少ないのがアレスの抱いていた評価だった。



(なんて奇策を考えてくるんだ…少し侮っていたな…)


そんな感想を抱いていると、三人の奇妙な行動に、アレスだけではなく、多くの人々が頭を傾げる。



三人は一撃ずつ入れると、後ろに下がったのだ。


そして…



「シンカー!」


「レッド!」


「ソラウス」



ソラウスがレッドを呼び、シンカーがレッドを呼ぶ。

そしてレッドはソラウスを呼んだ。



三人は場所を入れ替え、再びゴーレムに襲いかかる。



ソラウスは飛びかかる際、今まで持っていた剣を捨て…



「魔力固定解除!」



拳に魔力を送る。


送り込まれた魔力が、身体強化の事象を活性化させ、ソラウスの上腕から、拳にかけての筋肉を肥大化させる。


そして拳を振り上げ…


「しゃおらぁぁあ!!!」


ゴーレムの頭部を砕いた。


第2、第3と攻撃を続け、4体目と、5体目を砕く。


「先ゴール入ってるぜ〜。」



ソラウスはそういって、ゴールゾーンまで走って行った。







(まずい…)


シンカーは自分の身体強化が切れかかっていることに焦りを感じ始める。


振り下ろされる。



(ソラウスの馬鹿野郎!俺が一撃入れたやつより攻撃が重いぞ!)




そう。

シンカーたちが一撃で後退して場所を入れ替えたのは、ゴーレムの相性で場所を変えたのだった。


前の二試合で、ゴーレムの特性に偏りがあることに気づいたシンカーの提案だ。

だが…



「あの脳筋の判断基準に合わせたのが、ここで付け足してくるとは!!」



ソラウスの怪力を基準に選ばれた敵は、シンカーには重い攻撃だった。



「っ!」


斬撃を剣の腹で受け流し胴体に打ち込む。

2体目を倒し、3体目に行こうとしたその時、


「まずいっ!?」


身体強化が切れかかった。


反応に遅れ、振り下ろされる剣を見つめるしか無くなる。



「くそっ!」


魔力固定で残された魔力を全力で足に回す。


右足を軸に体を開いて一撃を紙一重で避ける。


そのまま前傾姿勢になったゴーレムの腕を切り落とし、回転を使って首をはねた。



「ふぅ。なんとかなったな…レッド!先に行っているぞ!」



そう言ってゴールに向かって走る。


声をかけられたレッドは…






残り一体の前に、片膝をついていた。


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