13.開会、それすなわち開戦である
しばらく三千字前後の投稿が続きます。
できるだけ毎日投稿を頑張る予定ですのでよろしくお願いします。
体育祭当日、学園は一種のお祭り状態だった。
一般化の生徒や保護者はもちろん、新聞各社や、来賓のお偉い方々、また騎士団の関係者などが学園に訪れていた。
「報道陣や、要人の誘導。警備体制の確認は済んだ。どうだ?人をこき使う気分は?」
リゼリアが青筋を浮かべながらそういう。
「まじで助かります。ありがとうございます。」
ユーリーは素直に頭を下げる。
今回の体育祭には国王も来ており、全てリゼリアと校長の手配によるものだ。
「我が校のためになると承諾してくれた校長には感謝しきれない。」
リゼリアが事後承諾という形で校長に報告したのだが、重度の教育バカの校長は二つ返事で了承。
1週間寝ずの毎日を過ごし今に至る。
「彼の方は本当に教育熱心だからな。生徒の方はどうだ?」
「下でそれぞれブリーフィングしてるよ。」
騎士育成科第一クラスは、高ぶる高揚感に満ち溢れ、落ち着かない様相を見せていた。
「みんな聞いてくれ!」
一人の掛け声に、あたりは静まり返る。
声をかけたのは第一クラスのリーダー、シュラウド。
公爵家の一人息子で、優れた成績と容姿、そこからくるカリスマ性はひときわ高い。
「俺たちはこの日までよく練習してきた。リーツ先生の指導や助言を受け、血の滲むような練習を積んできた。あとはそれを発揮するだけだ!俺たちは勝てる!」
「行くぞ!!」
「「「おぉぉぉ!!!」」」
大きな意気込みが修練場に響いた。
「みんな聞いたか?第一クラスの奴らは血の滲むような練習を積んできたんだとさ。」
皮肉めいた口調でそういうのは第2クラスのリーダーランゲルだった。
「俺は平民出だし、シュラウドみたいなカリスマはない。」
「だが俺たちには仲間がいる。互いに認め合い、これまで高め合ってきた仲間だ。みんなは俺をリーダーだって言ったけど俺はリーダーなんかじゃない。俺に出来ることはせいぜいみんなに作戦を伝え、勝率を上げることだけだ。」
「そんなことねぇよ!」
「そうだぜリーダー!」
口々に激励を送る。
貴族、平民問わず、一人一人がランゲルを認めている。
「ありがとう。だから俺は俺に出来ることをやる。みんなはみんなに出来る全力を出してくれ!」
「「「「おぉぉぉ!!!」」」」
こちらもまた、第一クラスに負けないほどの雄たけびが上がったのだ。
両クラスがリーダーの激励を終え、高ぶる興奮に息巻いている中、特別編成クラスは静かに待ち構えていた。
アレスは大きく息を吸い込む。
「聞けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
その怒号は修練場全体に響き、静寂をもたらした。
「俺たちは勝たねばならない!勝つことに全霊を捧げてきた!」
「「「おう!!」」」
アレスの叫びにクラスの生徒たちが呼応する
「俺たちは屈辱にまみれた1週間を送ってきた!違うか!!」
「「「違いません!!」」」
「無能と罵られ、何度も地面を舐めてきた!違うか!!」
「「「違いません!!」」」
「勝たねばならない理由がある!勝たねばこの屈辱の一週間は、あの教師によって真の意味での屈辱を持って幕を閉じるだろう!!」
「許せるか!!」
「見返してやる!!」
生徒が口々に叫ぶ。
「なら勝たねばならん!俺たちなら勝てる?勝って当然であるべきだ!一人一人が全力を尽くす?甘ったれるな!当たり前だ!」
「皆が全力を出すことは疑いようもない事実だ。」
故にと、アレスが叫ぶ。
「皆に言うべきことはただ一つ!」
「死んでも足を引っ張るな!!!!勝利は我々の手にある!!!!!!」
「「「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」」」
歓声ではない。激励でもない。
正真正銘の雄たけびが修練場に鳴り響いた。
「あれはなんだ?」
リゼリアがユーリーに問いただす。
その顔には滅多に浮かばない困惑の色がうかがえる。
「んー?ま、俺に対する怒りと見返してやるという決意の表れだな。」
「何をした?」
滅茶苦茶睨んでるし。
そんなに変なことはしてないんだけどな〜。
「あいつらが本気で稽古つけてくれって言ったから、本気で育つように稽古をしただけだぞ?」
「罵詈雑言を浴びせ、ひたすら弱点を突くところのどこが教育なのだ?」
「あんたがそうやってたんだろ!!」
ユーリーの教育方針は多くがリゼリアに受けた仕打ちから来ている。
「私はそこまで怒りを買うほどのことはしていない…」
なら目そらすなよ。
「やる気があるにはいいことだ。お前のクラス、楽しみにしているぞ?」
ニヤリと笑ってみせる。
「最高に面白いぞ?三分たりと目を離すなよ?」
開会式が始まった。
特別編成クラスは一番左端にならんでおり、第2クラスの隣だ。
「アレス君さっきはすごかったなぁ。」
「それはどうも。」
アレスに絡んできたのはランゲル。
煽りを入れているのだ。
「まるで蛮族じゃないか、らしくない。」
「勝つためには蛮族にでも、首狩りにでもなろう。」
ランゲルは煽りが通じないことにすこし苛立ちを感じた。
「まるで王位欲しさに勝利を狙うようだなぁー?」
アレスはランゲルを見つめる。
「なんだよ?」
「お前は、負ければ死ぬかもしれない戦いというものを知っているか?」
「は?」
ランゲルは情けない声を出す。
「俺は王位などいらない。俺が欲しいのは普通の学校生活と、自分の命の安全だ。そのためには勝たねばならん。」
ランゲルは訳がわからないと、頭を悩ませる。
命の安全?
普通の学校生活?
それが勝たないと手に入らない?
こいつらは何をやっているんだ?
次々と疑問が浮かぶがそれに答えるものはいない。
第一クラスのシュラウドが宣誓を終え、開会式は終了した。
「アレス君!それにシュラウド君!」
シュラウドがアレスのもとにやってくる。
「今日はよろしく頼む!俺たちも勝つために練習を積み重ねてきた!決して負けないよ!」
「それは俺たちも一緒だ、特別編成クラスの問題児はもちろん、お前ら第一にだって負けねぇよ!」
シュラウドとランゲルが睨み合う。
「俺たちは問題児だらけだが、この体育祭には命をかけている。比喩的な意味ではなくな。」
「勝たねば死ぬ。故に勝たせてもらうぞ。」
鬼気迫ったアレスは、どこが鬼のような雰囲気をまとっていた。
第一競技、身体強化綱引き
始まりまであと10分。
タイトルのつけかたを変えました
今までのもそのうち変えるかもしれません。
ブクマ、評価お願いします!!
ついに体育祭本番です!!
毎日投稿頑張ります!!!