仲間
深く続く通路の奥をにらみながらつかの間の急速をとる一行は、下層階に向けて作戦を練っていた。
「導師、下層にはさっきの機銃やセンサー・・・失礼、どんな動きも見逃さない目よりも険しい道のりになると思われます、危険度はさらに上がるでしょう」
「うむ、次は何が出るか見当もつかぬ・・・先程の盾は消耗が激しい、それに持ち運ぶには大きすぎるしのう」
「そこでなんですが、以前飛竜との戦闘で使ったリミッターの解除をもう一度掛けてくれませんか?あの力があれば俺とフィリアが連携すれば飛竜クラスにだって対抗できます」
「・・・ダメじゃ」
「な、何故です?!あの力さえあれば!」
ジーロンがヴォルトに向けかざした手をスッと降り下ろす、すると青年の身体は鉛のコートを着せられたかのように重くなり両の膝を地についた。
「少し落ち着け、ヴォルトよ・・・君はあの力をえらく過信しとるようじゃがな、アレを何と心得る?神から授かった奇跡か?敵を討ち滅ぼす武力か?それとも望むままに破壊と殺戮を振りまき己の強さを誇示したいのか?」
「それは・・・」
「今一度よく考えよ、限界を越えて身体を痛め付け一時の快楽に身を任せることが本当に必要なのかどうかな・・・、あの時は他に方法がなかった、だから君に大きな負担を強いるとわかっていても、その内に眠る力に頼るしかなかったんじゃ」
「すみません、俺が浅はかでした・・・確かにあの変身が解けたあとの身体の痛みや疲労感は凄まじいものでした」
「あの、ヴォルトさん その変身は私も賛同しかねます」
ジェシカが二人の会話に加わる。
「ジェシカさん・・・」
「直接見たわけではありませんが、ヴォルトさんの身体を治療した私だからわかります、それを多用すれば確実に寿命を縮め死を招くでしょう・・・如何に貴方が特別な存在だとしても人間であることにはかわりません、フィリアお嬢様のためにもどうか・・・」
「・・・・・・はい、フィリアごめん、俺だけ熱くなっちゃって・・・反省する。」
「わかってくれたらいいんです、でもそれだけだとちょっと足りません だからはい、ギュッてしてください!」
「うん」
「丸く収まったようじゃのう、二人が満足したら改めて作戦をたてるとしよう」
「そうですね」
大きな力を手にしたことでそれに溺れ道を見失うものも多い、しかしそれを諭し導いてくれる存在、寄り添ってくれる人達がいる。
そんな幸せを青年は噛みしめる。