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第1階層

ダンジョンの入り口へ到着すると遠目からはわからなかった透明の扉が口を閉ざしていた。


「これは・・・取手も繋ぎ目もないがどういう物質なのだろう、ガラスとも少し違うようじゃ」


扉を物珍しそうに手指で撫でるジーロンの目は好奇心で満ち溢れている。


「叩いたら割れるかな?わたしちょっと試そうか?」


「!!!っ、待て待て待て、待つのじゃフィリアよ この物質はとても貴重なものかもしれん! 見よこの透明度を!」


誰に聞くでもなく、すでに手甲を嵌めて肩を回し準備万端のフィリアをその身を盾にしてジーロンが止めにはいる。


「あの、先見隊の調査資料には何か書いてないんですか? 扉のカギとか」


「うむ、ソレなのじゃよ 先見隊からの資料では森の奥地でダンジョンと見られる建造物の発見と外装の記述だけで、このような扉のことは書いてなかったんじゃ」


「じゃあこれは俺たちが来たから現れたのかもしれないですね」


「その可能性は十分にあるのう・・・ん? あれはなんじゃ?」


ジーロンの視線の先にはちょうど手のひら大のくぼみがあった、SF映画の認証装置が近いだろうか。


「ヴォルト君や、ここを見てくれ雷のマークがある 君ならこの扉を開けられるかもしれん!」


「そ、そんなにうまくいくでしょうか?」


「ものは試しじゃ ほれほれピリッとやってみるんじゃホレ!」


ジーロンに急かされるまま、くぼみに手をかざし雷を放つ、すると扉は音もなく地面へと吸い込まれていく。


「ヒャッホーウ 開いたぞ皆の衆!それワシに続けーーー!」


当初の静観さはどこかに消えてしまった見た目は大人のわんぱく少年を追いかけ、三人はダンジョンの通路を突き進む。


「キタ・・・光ノ御子ガ、・・・世界ヲ救ウ勇者」


ダンジョン最奥にて彼らを待つ者の声が小さく響く。


「ん?今なにか聞こえたような・・・」


長く続く通路を駆け足で進む中、普段なら気に留めることもない謎の音に青年の胸はざわめいた。


「そう言えばジェシカさん全然しゃべらないね?どこか具合わるい?」


「あ、確かに・・・扉の前でも黙りこくっててすこし気になってたんだ、何かあったんですか?」


二人は浮かない表情のジェシカに呼び掛ける。


「・・・・・・、としました。」


「「え?」」


「落としました・・・お財布、たぶん都市門前の売店でパンを買ったときに・・・さっきポケットを探ったら無くて」


彼女のこの世の終わりのような顔を前にかける言葉はなく、三人の間に微妙な空気が流れる。


「進もうか」


再び走り出してから10分ほど過ぎた頃、先行していたジーロンが迷子の子供のように座り込んでいた、どうやらここまでの調査を終えてテンションが元に戻ったのだろう。


「ジーロンさん やっと追い付きましたよ、この先は大広間でしょうか?他に通路はないですし、広間の奥に見える扉を抜けないと下には行けそうにないみたいですけど」


「おぉ皆集まったか~ワシ寂しかったぞほんとに・・・まあそれはいいか、確かにあそこを抜けねば先に進めぬようじゃがどうも怪しくての」


「怪しい、ですか?でも確かにここまでの道に罠や敵も居なくて変だとは思いましたけど・・・」


「皆様、すこし宜しいでしょうか あの物陰で何か光ったのですが」


ジェシカの指差す先には黒く細長い筒のようなものがこちらを向いていた。


「あれは・・・!みんな通路の影に隠れろ!」


「ぅえええっヴォルトさん急にどうしたの!?」


「お嬢様!こちらに!」


「ヴォルト君よあれが何かわかったのか?」


青年の声に従い4人は広間から見えない位置に身を隠した。


「みんな、あれは恐らく銃だ! 火薬を使い指先ほどの大きさの礫を飛ばしてくる武器で一発でも当たれば死ぬこともある」


「なんと、銃とはそれほどに恐ろしいものなのか?」


「物にもよりますがとても危険です、でも俺たちはまだ運がいい・・・ジェシカさん!その鎧を脱いでください!」


「え? こんな時に発情ですか、・・・いえ、でも動物の本能ですもんね・・・命の危険を前にすこしでも多くの種を残そうと・・・・・・ですが良いのでしょうか、わたし・・・はじめての相手が10も離れた子供というのは倫理的に・・・お嬢様も居ますのに・・・はあぁ~」


「あの、ね?ジェシカさん、あの人たぶんそう言う意味で言ったんじゃないと思うの」


「・・・あの、鎧を魔法で皆の身を隠せる盾にしようと・・・はい」


ジェシカは今にも火が着きそうなほど赤くなりながら鎧を脱ぐと、此方に向かって放った。


「で、では改めてジーロンさん、この鎧を魔法で盾に加工してください、強化魔法もあわせて」


「ああ、まかせなさい」


10分ほどで鎧は1枚の強固な盾に姿を変えた。


「ありがとうございます、じゃあ皆盾の後ろに!扉の奥まで全力で走るぞ!」


「はい!」


「うむ、了解じゃ」


「・・・ハィ」


「いくぞーー!」


広間の中央付近に差し掛かった時、構えた盾に重い衝撃と、それに不釣り合いな軽い音が響く。


「止まるな!走れ‼」


一心不乱に走り、その勢いのまま扉を突き破りすぐさま盾を翻し背後を塞いだ。


「皆怪我はないか?」


「なんとか無事じゃ・・・」


「だいじょ~ぶ」


「問題ありません」


「それじゃ、すこし休んだら先に進もう。」


第1階層を切り抜け、暫しの休息をとる4人は更なる困難が待ち受けるであろうダンジョンの深部を目指す。

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