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チュートリアル1


 ああ、いったい何がいけなかったのだろうか。あんなに快適な生活は、めったにあるものじゃないだろうに。さすがに、長居しすぎたのがまずかったのかな。だって、しかたがないじゃないか。本当に素晴らしい、生活環境だったのだから。


 悔いてもしょうがない。これからは未知なる世界で、生きていかなくてはならない。もちろん不安は、ある。しかし、私にはチュートリアルで得た様々なものがあるので、それを上手く利用していくしかない。チュートリアルを退場させられたから、今はプー太郎か。いや、ちと古いか。今ならニートか?、まぁ少し違うような気もするが、これからはスラニーとでもな名のろうか。



 私ことスラニーは、神様とやらに異世界へと飛ばされた。といっても、神様とは会えずに、立て札に書いてあった。その際に得た能力は『スライム』。そう、ファンタジー世界での雑魚やエロや様々な姿で描かれるあれである。まぁ、私も転生前は、30代ということもあり。チート最強などの中二病は卒業していると思いたいが、やはり若干憧れているのも事実である。作品次第では、最強にも最弱にもなりえる、この能力は当たりなのかもしれない。少なくとも、エロ的には大当たりだろう。



 私が神様に飛ばされた場所は、チュートリアルの部屋だったらしい。部屋といっても広大で様々なエリアがあり、様々なモンスターがいた。他にも水場やら海やら山、果樹や食べれそうな植物もたくさんあった。だから、しかたないと思うんだ。いきなり異世界に連れてこられて、得た能力が『スライム』ですよ。慎重にもなるってもんです。


 だてに30年以上生きていたわけではないので、様々な知識はある。というか知識欲は強い方なので、ぶっちゃけ色々知ってます。まぁ、最優先なのは水と食料かな。ご丁寧に水場が見えたので行ってみた。例えば、井戸を掘ったとして、運よく水が出たとしても、出てきた水が飲み水に適しているかいないかを調べなければ飲水は危険である。でも、チュートリアルなので、そこまで意地悪ではないだろう。


 「あぁ、美味い。なんとか、気持ちを落ち着けそうだ。」


 知識があるというのも、たいていの場合はよい事が多いのだが、知識があることで困ったこともある。ただたんに、水を飲んでいるだけなのに、これは軟水だ硬水だ。飲む以前に危険だ安全だなんて、よけいなことを色々と考えてしまうのだから。


 次は食料だ。サバイバル番組などもよくみていたが、実際に体験するとなると食料を探すのは大変である。しかし、そこはチュートリアルである。めっさ林檎なってますやん。ご都合主義に、手の届く位置に林檎が見える。しかも、大きさもある。種類によっては本当に小さい林檎であるが、これだけ大きければ十分腹のたしになりそうである。


 一つもいで食べてみるが、ジューシィーで甘く、蜜もある。この林檎があれば水分確保の必要さえなかったかもしれない。知識欲が旺盛といったが、広く浅くなので肝心のところが抜けていたりもする。林檎を一日3つ食べれば病気しらずや、医者の顔が青くなるなんてことは知っているのに、林檎だけでどれくらい生活できるかは知らない。フルーツのみを食べる生活をしている人が、特殊な体内環境で栄養素をどうたらこうたら、ということは知っているがそれだけである。


 「しかし、黄色。いや、むしろ黄金みたいな色をしているな。味もいいし、寿命が延びたような気もするな。」


 まぁ、普通のサバイバルならパッチテストをするんだろうけどね。たしか、皮膚の薄い場所にこすりつけて様子見、変化なしならなめてみる。それでも大丈夫そうなら、少し食べて様子見などをすることである。これでアルコールに弱いや、自分のアレルギーを調べることもできる。

 

 さらに見渡してみると、胡桃の木があった。普通は長い棒などで落とすのだろうが、スライムになった私には関係ない、体を伸ばして胡桃の実を叩き落していく。そして、それらを拾い集めて果肉をとっていった。本当は乾燥でもさせればいいんだろうけど。二つの胡桃をもって割る。


 「見た目や味的に、西洋胡桃にちかいかな。しかし、林檎が簡単に手に入れれるのに、胡桃が困難って何を考えていることやら。能力次第では食べれないじゃん。」


 「まぁ、チュートリアルって書いてあるし、さっさとクリアできるからとらなくてもよくなっているのかもね。でも、食べた後になんだか不思議な感じがしたな。」


 「転生物の約束で魔法とか使えるかな。『火』よ。」


 適当にしてみたら、指先から小さな火がでたものの、すぐに魔法は打ち止めになってしまった。後々、胡桃を食べていると日がたつごとに、魔法の使える回数は増えていった。きっと、体がスライムに馴染んでいったからに違いない。


 そうやって、私のチュートリアルライフが始まったのであった。

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