救急隊の日々で見つけた物
人生には唐突に何かを思い出したりする事があると思います。
何故もう一度消防士のままで
警察官採用試験を受けようと唐突に感じましたが、
それは救急隊員時代に出会った多くの生と死を見る中で、
反面教師のような人生を見てきたからだと思います。
もし人生に迷ってるなら、
周りを見てなりたい人生かなりたくない人生を比較してみると見えてくるものもあると思うます。
救急隊の日にはとても充実しているように感じていた。
何よりそれが貴乃に取ってみればどこか、
昔夢見た人と本当に近い現場ばかりだったからだ。
その中でこんな現場が多くあった。
その人がどんな人生を歩んだかはわからなかったが、
彼らにもそこに人生があったんだなと感じられる。
それが...
死後硬直していようが、
腐敗が始まっていようが、
病院に到着後に医師から死亡した事を告げられたり....
もちろん、
なんともない日常の一コマで怪我をしていても、
ちょっと風邪をひいて動けないとかでも....
そこには人それぞれ、他人が語ろうが、
その人人自身が言葉を発さなくて語ろうが人生があるんだなと感じ。
その一コマに関わっていることを感じられた事にある意味での面白みを感じられていたが....
「あれ、なんか変だなー何もやる気が起きないや」
タカノはふと休日にそう一人でに言葉を発した。
やりがいを持って助かる助からないは置いておいて、面白い仕事をしてることに誇りは持っていた。
救急隊の仕事は好きだが、どこか何かが足りない気がしていた。
ある人は、
身体は腐っていたが貴乃に何かを言っていたような気がする。
そして、ふとこの腐ってゴミだめの中に蹲る最期が自分の人生だったら?と考えてしまった。
「本当は、あれをしたかった」
「昔は良かったんだよね」
「誰もいないんだよね」
そんな傷病者からの言葉が頭から離れないでいた。
もしも、あのアパートの一室で一人で寂しく人生を
『昔は良かったね』
と思いながら、真っ黒になって誰にも看取られないで終わる人生なのかなと....
いやいや。
そんな事はない、だって消防士だ。
定年までは仕事もあるし早々そんな人生にはなならない....
『今日定年退官だったんですよね。挨拶回りとか行ってて動いてたんだけど...』
と定年退官をした〇〇官の姿を思い出す。
彼は心身をボロボロにして孤独な家に戻ってきてから突然動かなくなって119通報をした。
言ってはいけないのだろうけど....
いつも会う人生を悔やんでる人と同じ匂いと雰囲気を感じ取っていた。
『昔は俺も公務員だったんだよねー』
と目を輝かせて過去の話をする身寄りがない老年の元〇〇官のことも頭をよぎる。
そんな事を思えば思うほど、
この先のことを思うと....
「もし、無事に定年を迎えても....」
と呟いていた。
ーーーー
「でさ、君は本当は何をしたいの?」
目の前にいる元公務員の成功者はそうタカノに語りかけてきた。
「警察官になりたいです。
でも、成れないかもしれませんが....
消防士を定年までは勤めるのは死んだ人生を送りそうなので
人生後悔したくないですし....」
成功者はそれを聞いて、ぽんと肩を叩いてこう言った。
「なら、警察官もう一回目指してみれば?」
タカノはそう言われた瞬間に揺れる救急車内に自分がいることにふと思い出す。
仰向けに傷病者が口から赤い液体を吐き出したので慌てて横に向けるーーー
吐血?と思ったが、明らかに臭いが違っていた。
「もしかして、トマトジュース飲みました」
傷病者は意識があったので頷いて答えてくれたーーー
そこでふとタカノの中で色覚異常の事を思い出した....
以前にネットで見た鍼灸での治療というのが頭をよぎったのだった。
「まー行ってみますかな。赤と緑の識別弱いのわかったし....赤色で思い出したからな」