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Color Blindness 〜夢見る20代〜  作者: アーサー・リュウ
4/7

夏の戸惑い


「進入時間5分」


そう言って、空気ボンベの面体を慣れた手つきで装着し、貴乃は手に持った40㎜口径のホースに繋がれた筒先を手に握って、黒い煙が黙々と立ち込める建物の中に低い姿勢で向かい始めた。


暗闇の中では、何も見えない。要救助者が残されている情報はある、すべての感覚を研ぎ澄ませて足で探りながら進んでいく、ほんのりと熱気を感じながら煙の中を進んでいると、メラメラとと燃えてる火柱を見つけた貴乃は


「火点発見!」


「放水始め!」


そうこもった班長の面体によってこもった声が聞こえて。

筒先を火点に向けて放水を始めた。

火はすぐに消えて、白い煙が部屋の中を包み込んだ。


………


「あちー」


そう口々に班の仲間から聞こえてきた。それもそのはず今日は8月で35℃は超える昼過ぎの警防訓練だからだ。汗だくになった活動服は水につかったかのような、感じになってる。すべて汗だ。


真夏の14時の訓練は過酷を極めた、

中には昼飯で食べた食堂の飯を全部吐いていた人もいれば、熱中症でばたりと倒れてしまった人もいるほどだ。


今日行ったのは、屋内進入をして火を消す訓練だ。

総重量約20㎏の重たい状態で一時間以上ぶっ通しで訓練は行われている。水分補給はあるが、そんなんじゃ追いつかないくらい汗をかく。訓練が終わってから、着ていた活動服は絞れば水がしたたり落ち程だ、すぐに洗濯機にぶち込んで、次の座学へ向かわなくてはならない。


消防学校の生活は訓練がメインと思われるが、公務員としての法律やら消防行政に関する法律、現場で使用する火を消すための消火戦術、予防防火査察に関する座学、救急に関する座学などなど……


小隊長が集まれの号令と共に駆け足で、全員が整列して、人員把握が終わり。


「分かっれ!」


「よし!」


貴乃は解散号を聞いて、敬礼を小隊長に送ったとたんにふーと一息ついた。



消防学校のスケジュールは過密に過密を極める。数秒の遅れも許されない。

座学に遅れたとしても怒号が飛ぶ、教官室に呼び出されればダッシュで向かう。消灯時間になればベッドに入らなければならないし、もちろんその後は私語も厳禁だ。


私語がばれて巡回中の教官にばれて、真夜中に廊下から怒号が飛び交っていたこともある。


そんな生活がすでに半分は終わったと思えば少しは気楽に感じられる。生活にも慣れてくるからだ。

その中で、将来どういう部署に着きたいかという話が上がり始めていた。


消防学校の初任教育を終えて、初めに配属されるのは消防内で中核を担うポンプ隊がおおよそ普通のルートだ。救急救命士持ちの人は場合によっては初めから救急隊ということもなくもない。


貴乃は迷っていた。

頭の中でずっと、訓練中も授業中でも何かひかかるものはあったせいもあるかもしれない。

が、例外なく定年退職の日まで勤める組織になるのだから、どういう仕事をその中でするかは大切だとは感じていたが、どれをとってもどこかピンとくるものは浮かばなかった。


確かに興味があるものはあった、

予防や火災原因調査なんだか。

新幹線内でガソリンをまかれて火災になった事件のニュースを見ていたときにふとガソリンの規制や火災予防に関する何かがあれば防げたのではとそう感じたからだ。

でも、予防を勉強をしても頭には入り込んでこない。


確かに、燃える前に人を助ける、笑っていられる環境を守る仕事ではあったけど……


自分でもそれが何でか分からないまま。

自分って何やってもダメじゃないのかな?

どうしてこんなこともできないんだろう?

と思うことが多くなってきた。


もしかすると、新幹線内で起こった火災を防ぐためにあらかじめ不審者に声をかけている自分の姿を頭の片隅で思い浮かべていたのかもしれない………



そんなことを続けていたら、あっという間に初任教育が終わり、現場配置の日がやってきた。



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