はじまり
~1.5~
「私、あなたのことが好きかもです。」
部活終わりの部室棟の一角にある男子テニス部の部室で告げられた。時刻は分からないけど、夏の始まりを告げる夕焼け空と夜の始まりを知らせる星空がお互いを飲み込み合うような綺麗な空。遠くからは野球部たちの練習する声がうっすら聞こえる。そんな以下にも青臭く若々しい風景の中、君は身勝手なセリフを投げてきた。
「え?かも?」
俺はとてもつまらない聞き返しをしてしまった。
「うん。好きかも・・・です。」
そう彼女は、英語でいうisの部分をもったいぶって口にした。
この子は、なぜこんなにも中途半端な思いを告げ、後始末を俺に任せるつもりなのだろうか。
「それはさ、つまり、俺が君のことを気になっていたとしたら付き合おうよ。ということなの?それとも君の抱えている心のモヤモヤの正体を口にして確かめようとしただけなの?」
我ながら相手のセリフを受け止め選択肢を与えるなど、なんて紳士的なのだろう。
そんな自分に酔う直前だった俺に冷静になる一言が降ってきた。
「あなたが付き合いたいと思っているなら、そうしよう!うん!決まりだ!」
彼女はものすごく笑顔だ。
「え、えぇ、よろしく、」
押し切られたのか、何なのか分からない状況に合意の言葉しか出てこなかった。