第二章ノ一
翌日。昨日の出来事が夢であったかのように、普段通りの日常がやってくる。
起きてから学校に着くまでは何の変化もなかった。教室内で友人たちと話していると、昨日は白昼夢か何かを見ていたのではないかと感じる。
しかし現実はそうではないようで、
「おはよう、新庄君」
ひかりが話しかけてきた。それでツバサは改めて昨日の出来事が現実であったと認識した。
「よう、米原」
軽く手を挙げて挨拶を返す。その反応を確認すると、ひかりはツバサだけに聞こえるように声を潜めて言う。
「今日の放課後、ちょっと用事があるから付いて来てくれる?」
おそらく魔法少女絡みのことについてだろう。ツバサはそれに素直に従うことにした。
声に出さずに首肯して返すと、ひかりは自分の席へと去っていった。
時間にして一分もかかっていない短いやり取り。
だが、たったそれだけのことなのに、三人の友人たちは餌を撒かれた鳩のような勢いで食い付く。
「おいツバサ。昨日いろいろ言われたって言ってたけど、何言われたんだよ」
「昨日まで会話なんて何もなかったのに」
「昨日商店街で何があったんだ」
魔法少女になって件の噂の正体であるエフィアルティスと呼ばれる化け物を倒しました。なんてことを言えるはずもなく、ツバサは言葉を濁すことしかできなかった。
放課後。昨日についていろいろと不信感は抱かれたような感じではあったが、その後ひかりが話してくることもなく、普段と何ら変わらない学校生活を送ることができた。帰りのホームルームが終わり、空気が弛緩しきった教室の中、ツバサは自分の椅子に腰を下ろしていた
「よし、それじゃ今日もいつも通り不審者捜索にでも行きますか」
誰からともなくそんな言葉が出てくる。それほどまでにツバサたち四人は噂の真実を突き止めたかったのである。しかし、今のツバサはその答えを言っている。それがもう現れないことも知っている。そして何より、ひかりとの約束があるのだ。
「悪い。俺は今日ちょっと参加できないわ」
そう告げると、不思議そうな視線が三人から向けられる。
「ん? どうした、急に?」
ハクトが不思議そうに言う。
「この四人の中で最も暇人なお前が参加できないのか」
ひどい言われようだとツバサは感じた。とは言ったものの特に部活に入っているわけでもなく、忙しい委員会に所属しているわけでもなく、まして恋人がいるわけでもない。暇人と認識されても致し方ない部分もあるだろう。
「いや、ちょっと今日はいろいろあってな」
「そう、新庄君にはやってもらわないといけないことがあるからね」
突然会話に女子生徒の声が割り込む。
いつからそこに居たのか、ひかりがカイジの後ろに立っている。
「昨日みたいに目的もなく商店街をうろうろされると、どうしても気になっちゃってね。どうせ暇なんだったら、忙しい人の手伝いをしたほうがいいと思ってさ」
そういうとひかりはツバサの手を取って強引に歩き出す。
「おっと」
バランスを崩しながらも、帰宅する準備が整えられていた鞄を掴んで、何とか体勢を立て直す。
あっけにとられてる三人をよそに、二人は教室を離れた。
「ここまで来ればよさそうだね」
昇降口まで移動したところで、ひかりが口を開いた。同時に、掴んでいた手を離す。
「こんなとこまで連れてきてどうするつもりだよ」
「どうするって、用事があるって言ったでしょ? 付いて来て欲しいんだけど」
それだけ言ってひかりはローファーに履き替える。
「付いて来てって言われても、どこに行くんだよ?」
そんなツバサの質問は、
「どこにって、協会に決まってるでしょ?」
より難解な答えを返されて終わった。
投稿するの忘れてしまっていてすみませんでした。
今回はちょっと短めです。