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香風  作者: 春 周沙
1/3

前編

とある自動車メーカーのショールーム。

年は若干25歳。淡いスーツに細めのネクタイが爽やかさを増す好印象でトップクラスの営業マン。




「では納車は2週間後ということで。ありがとうございました。」

一組のご夫婦を見送る。



そのお客様は、ご主人は普通の公務員。

奥様は余り愛想はないが可愛らしい雰囲気の人。

お子さんは幼稚園と小学生の二人の男の子。

どこにでもある幸せそうな家庭に見えた。



職業柄、奥様に好印象を与えないと商談成立は難しい。

やはりお財布を握ってる奥様方が最終的OKを出すのが大多数ですからね(笑)

清潔感や好印象を与えるのも営業テクの一つです。



2週間後、無事そのお宅に新車を納車し、私はまたいつものように忙しく営業に走り回っていた。

ある日、外回りから帰ると電話メモの中にそのお宅の奥様からのメッセージが。

何か不具合でも?と気になり電話してみると・・・


「一度お会いしたいのですが・・・」と、言いにくそうながらも明るい声でそう言ってきた。

「申し訳ございません。。そのような個人的なご用件にはお応えすることができないのです」

私は丁重にお断りをした。


営業をしてるとそういうこともなくはない。

だけどお客様の奥様と個人的にお付き合いするなんて以ての外。

会社にバレたりすれば当然クビだろう^^;

でも少し気になり始めたのは事実だった。。



数週間が過ぎ、たまたまそのお宅の近くを通りかかったのでインターホンを押してみた。


「新車の調子はいかがでしょうか?」

「あら!桜井さん?どうぞお入りになって。今コーヒーを入れますから」

「いえいえお構いなく・・・」


応接間でお車の調子や感想を伺い、他愛も無い話にしばし和やかな時間が過ぎ去った。

そこにはショールームで会ったその人とは違った笑顔の可愛い一人の女性。

彼女は私より7つも上とは思えないほど普通に若々しい。


「それではご主人様にもよろしくお伝え下さい。」そう言って私は立ち上がった。

彼女も嬉しそうな笑顔で「今日はありがとうございました」と玄関まで見送ってくれる。


少し安堵感に似たものを感じながら玄関に下り靴を履いてると、

不意に私の背中に黙って彼女がぴたりと寄り添ってきた。


なんとも言えない柔らかな香り・・・・


驚いて振り向き、私は彼女の肩に両手を乗せて制止するように少し冗談めいたように言った。


「ダメですよ。ほんとに好きになっちゃいますよ?」

「・・・いいの」

「ぇ?・・・」


正直驚いた。

微かな言葉。そして大きな瞳。

長い沈黙の後、思わず彼女を抱き寄せてしまった。


ふと我に帰り、「やっぱりダメですよ。。自分を抑える自信がなくなってしまいます」

そう言うのが精一杯なのが自分でも分かった。


「いいの・・・」


再び見つめ合い・・・

そして張り詰めてた1本の糸が切れた。


次の瞬間、唇を激しく重ね合い彼女を再び強く抱きしめていた。


*後編へ続く























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