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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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死神が掴んだトカゲの尻尾

――うおっ、気付いたらこんな時間……!


でも何とか間に合ったぞ!

「とりあえず、街が落ち着くまでメノラには暫く残ってもらおう。後は何人かガルティ達の護衛に残していく――――直ぐに動けそうな連中を集めてくれ、俺達は予定通り昼にはここを出る」

 住民の死に対して、気持ちを整理し終えた悠理は今後は行動を決めていく。

 まずクヴォリアの事は早急にグレフへ連絡を送り、対処してもらう必要がある。その間、住民達が再び自暴自棄にならないかの見張りも必須。自分達がここに留まれれば一番良いのだろうが、そうも行かない。

 合流したばかりで悪いと思いつつ、その役に適任なのはメノラであるのは間違いない。

 淫魔の魅了効果を自殺防止の抑止力として使うのはどうかとも思わなくも無いが……。そこは本人が了承すれば問題も無いだろう。  

 次に救出したガルティ達のこと。自由になったとは言え、グレッセの現状を考えれば彼女達を故郷へ帰すのは返って危険である。

 かと言って、このままクヴォリアで過ごす――と言う訳にもいかない。この街もこの街で大きな傷を負ってしまったのだから……。

 暫くの間は他者を省みる余裕などあるまい。簡単に言えばガルティ達の居場所を確保できる保証がないのだ。

 ましてや、ガルティ達亜人はともかく、捕まっていた者の仲には祝福喪失者も大勢いる。

 いくらグレッセ領での奴隷態勢が低いとして、今のクヴォリアではふとしたキッカケで差別行為が起きても不思議ではない。

 人は自分がどうしようもなく弱っている時、更に弱い誰かを責める事で苦痛から逃れようとする。

 全ての人間がそうではなくとも、常に全体の何パーセントかにそれは潜んでいるもの。

 可能性が低いからとって考慮の埒外に放っておけば、たちまち現実となって悲劇を起こす。

 その“もしも”を起こさない為に、部隊から何名かを割いて彼女達を護衛し、郊外に寝泊りしてもらう。勿論これはスルハから増援部隊が来るまでの繋ぎ、応急処置。

 合流後は彼等へ保護を頼み、グレッセの件が片付き次第各自を故郷へと帰す事になるだろう。

 ――面子が揃っていない為に独断だが、今後の大まかな方針はこんなところ。

  

『応、多分そう言うんじゃないかと思ってな。ノーレとマーリィに準備させてあるぜ』

 レーレは悠理がこの街に留まる可能性は低いと睨み、事前に準備を勧めていた。

 部隊の人員は住人へのケアを手伝う為に殆どが出払っていて、動けるのは50程度だろうとのこと。

「……随分手際が良いな。じゃあ、早速――――」

『――その前に、伝えておかなきゃならない事がある』

 今すぐにでも出発できる様に自身も準備にとりかかろう――とするが、真剣な表情のレーレに呼び止められる。

 何やら表情には珍しく緊張の色。いつも自信満々で悪っぽい彼女らしくない。

「! レーレ、まさか?」

 恐らくは、その薄い胸に秘めたであろう話の内容へ辿り着く悠理。

 気付けば後は単純、緊張は自分へと伝播し額に汗が浮かび上がる。

『ああ、お前が考えている通りの話題さ』

 察しが良いのは助かると思う――が、二人はそれ程以心伝心の仲だったかと言われれば、それは悪巧み限定だろう。

「ま、まさか――――レーレから告白?」

『こッ!? バッ、ちげーよ!』

 案の定、悠理の口から飛び出したのは予想斜め上。告白と言う言葉に反応したレーレは湯気を出しそうな程に赤い顔。

 当然、この場で告白なんて起こりえるハズも無いが、常識に囚われないのが廣瀬悠理……。

 少なくとも、自分の個性は遺憾なく発揮できた様だった。

「何だ……違うのか……」

 見るからに残念そうに暗い表情、そのままテントの隅っこへ行き体育座り。典型的ないじける人のポーズである。

『どうしてそんなにがっかりしてんだよ!? しかも、さっきより落ち込んでるってのもおかしいだろ!』

 あからさまな意気消沈に思わず突込みが冴え渡る。住民の死を訊いてもそこまで落ち込んでいなかっただけに、この落差は十分驚きに値した。

 ――つまりそれは、もしも告白されていたら彼は嬉しかったと言う訳で……。

 勝手に膨らんでいく妄想を頭を振って打ち消す。でも、喜んでくれたら嬉しいな――と思ってしまった辺り、誤魔化しきれていない様だった。


「――で、本題は?」

『……テメェ、後で絶対殴るからな?』

 妄想世界で悶々としている内にあっさり立ち直った悠理を恨みがましそうに睨むレーレ。

 しかし、彼のテンションに付き合っていては振り回されるだけだと経験則で解っている。

 溜息を一つ吐いてお望み通りの本題へ。

『――――敵の正体が解った』

「――――――――――マジか?」

 あまりに予想外の展開に悠理も思わず目が点になる。解れば良いなぁ――と、思ってはいたが期待はしていなかったのだ。街一つをここまで静かに占拠する連中……。そんな相手は痕跡が残るを非常に嫌うもの。どんな手掛かりを掴んだかは解らないが、これはかなり凄い事に違い無かった。

『ああ、メノラの報告によると、ジャダってジジィがゲロったってよ』

「それで、相手は――――って、聴いても俺には解らねぇか」

『いや、問題ねぇ。むしろ、お前ならあっさり受け入れるだろうさ。そうだな一応、前置きから話しておくか――――』

 ――メノラの拷問によって、思わず口を割ったジャダからの情報は以下の通り。


 ジャダはあくまでただの協力者だが、バドレは何かの組織に所属していると言うこと。

 祝福を受けた水晶玉を使って誰かに報告をしている時があり、水晶玉から映し出された相手は壮年の男で眼鏡をかけていて、バドレからは“チーフ”と呼ばれていた。


 ――以上が、手に入れられた僅かな情報である。

「眼鏡をかけてて“チーフ”って呼ばれてた、ねぇ……。 でもそれだけじゃ相手は絞れないだろ?」

『ああ、あの淫魔は殺す順番を決定的に間違えたのさ。まぁ、そうでもしなきゃこの情報すら得られなかったかも知れねぇが』

 メノラを責めるのは筋違い。彼女は最善を尽くしたと言っていい。

 だがバドレもバドレで全く情報を吐きそうになかった為、ジャダに標的をシフトしたのだ。

 目の前で人一人惨殺すれば大抵の人間は怯え、助かる為に藁に縋ろうとする。ジャダも例外ではなく、吐けるだけの情報は吐いた。

 今はまだ生きているらしいが、最早虫の息なのは間違いないらしい。

「うーん、相手が解ってと言って良いのか、これは……」

 折角手に入れた貴重な情報を喜ぶに喜べない。何しろ、名称はともかく特徴に関してはありふれ過ぎていて手掛かりにして良いものかどうか……。

『良いんだよ、少なくとも俺には心当たりがあったから』

 微妙な顔で唸る悠理の肩をレーレが慰めるようにぽんと叩く。

 彼女の珍しい反応に気遣われた嬉しさを行動で表そうとして――――。

「……すまん、もう一回言ってくれないか?」

 聞き逃してはいけない単語があったことに気付く。聞き間違いでなければ、だが。

『心当たりがあるんだよ。こんな事をしそうな眼鏡の“チーフ”って奴にな』

 どうやらそれは聞き間違いではなかったらしい。これは思わぬ前進である。


「――――――レーレ」

 俯きプルプルと震える悠理。

 それは嬉しさによるものか、はたまた別の感情からか。

『あん? 言っとくが嘘なんてついてな――――』

「いや、良くやった! 愛してるぞ!」

 どうやらとびきり喜んだらしく、思わずレーレに真正面から抱きつく。

 力一杯――とまではいかないが、ぎゅっと抱きしめて話さない程度には熱い抱擁である。 

『ほぁっ!? いや、ちょっ、は・な・れ・ろー!!』

 突然の出来事にレーレは混乱せずにはいられない。行動もそうだが、口から出た思わ発言に恥ずかしさ半分嬉しさ半分で、どうしたら良いのか解らず悠理のなすがままに抱きしめられ続けている。

 もう思考はショート寸前、()()()()()()()()()()。 

「――アンタ等……何やってる訳?」

 ――いつの間にかテントを覗き込んでいたカーニャに!

「――――あ」

『お、おい! 勘違いするなよ! これは――――』

 慌て弁明の言葉を捜すレーレ、カーニャは悟ったように笑顔を浮かべる。

「はいはい、解ったから――――一発殴らせなさい……!」

 一転して怒り爆発の修羅の顔! もう何を言っても通じそうにないが、悠理は義務感の様な感じて叫ぶ。それは芸人がボケを前に出されたら思わず突っ込む姿に良く似ていた。

「解ってないじゃねぇか!」

 ――この後、悠理はとりあえず殴られ、公平をきす為、カーニャにもとりあえず抱きついたが今度はレーレに殴られ、小一時間二人から説教されたという……。

敵の正体は解ったものの、カーニャの登場で発表はお流れ


物語の核の一つなんで、もうちょっと開示は引っ張るかも知れません

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