街に潜んだ暗闇共
うむ、全然書く事に集中できんな!
――とりあえず、書ける部分は書いて後で手直しなり、統合するなりします。
「ユーリ、外の様子はどう?」
地下施設にて捕らえられていた少女たちを全て解放した悠理達は地上へと帰還。
一先ずは悠理が地下への入り口がある廃墟から外へ様子を探に行く。
カーニャとガルティは建物内に残って、少女たちを護衛。
亜人種達はともかく、その他の少女達は殆ど祝福喪失者だ。
その上、長期間捕まっていた為に衰弱している者も多い。この場から離れるにしても退路が確保出来ていない限りの移動は望ましくない。
それに、悠理が居なくなった後で必ずバドレが攻撃を仕掛けに来ると睨み、レーレ達には予め準備をさせていた。恐らく街を巻き込んで戦闘が開始されているに違いない。
――――それにしては静かなのが気になるが……。
「――どうやら、随分派手にやってたみたいだな」
呆れ顔の悠理が親指で外を示す。何の警戒も抱いていなそうな所を見ると安全は確認出来たらしい。
「えっ、あ、あー……」
その光景を見てカーニャは顔を引き攣らせる事になった。
道と言う道に人が倒れている様はさながら長蛇の列……。直ぐ傍に倒れている少女に近づき、首筋に指を当て脈を計る――――大丈夫、気を失っているだけの様だ。
戦闘が合ったと言う割には建物に損害が出ていないのは気になったが、一先ずは良しとする。
「おーい、とりあえず安全だから出てきていいぞー」
何度も周囲を確認した上で少女達に呼びかけると、恐る恐る外へと出てくる少女達。
最初は倒れている人々に驚いたみたいだが、懐かしさすら覚える地上の空気と、夜空に輝く星々を前にすれば、もう気持ちは抑えられない。
『――地上だ……。本当に戻ってこれた……』
『何だか夢見たい……。もう諦めていたのに』
地下深く、助けすら諦め死んだ様に日々を送っていた少女達は今この瞬間に蘇った――いや、生まれ変わったと言うべきか。
口々に地上への生還を喜ぶ声はまるで産声。ここから再び彼女達は自由を手にし、その命を輝かせていくのだ。
「――――――フフッ、良かったね」
そんな少女達をカーニャは嬉しそうに眺める。欲しかったものが少しで手に入った気分。ずっと――――彼女はこの光景が見たかった。祝福と自由を奪われ、奴隷と言う身分にまで落とされた者達の解放……。
戦いは未だ序章、行き着く場所は遥か彼方。されどこの一歩を忘れまいとする様に、彼女はこの光景を瞼の裏に強く焼き付けていた。
「さてと、どうしたモンかな……」
一方、悠理はこれからどうしたものかと思案に暮れていた。
この状況から察するにレーレ達は無事だろう。街からの差し入れにかけられていたバドレの祝福は解除してから皆に配ったし、こちらは個人戦力が破格の人材も居る。
彼の心配事は味方の損害云々ではなく、解放した少女達の処遇。直ぐにでも故郷に帰らせてやりたいのは山々だが、現在は王都解放への進軍中……。共に連れて行く訳にもいかず、かと言ってこの街に置き去りなんて出来ない。
――それ以前に、だ。クヴォリアの代表者が闇に通じていた事実は想像以上に重い。下手をしたらこの街を一から建て直す必要がある。かと言って、こちらにそのフォローをする余裕などありはしない。
いっそグレフ達に任せるのが最善策かも知れないが、事態は急を要する可能性大だ。彼等が到着するのを待ってなど居られない。
――――と言った具合に、さしあたって突き当たる問題に頭を悩ませる悠理。
しかし、頭脳労働が苦手な彼に良い結論が導き出せる訳も無く、脳はオーバーヒート寸前で今にも叫び出しそう……。
『オーイ、ユーリーーー!』
臨界突破が間近に迫った頃、自分を呼ぶ声に思考が中断され、知恵熱で燃えあがった脳が一気に冷えて行く。
声の主は考えるまでもなくレーレ。空中を高速飛行し、こちらへ一直線に向かって来ている。
「おー、レーレ! 随分派手にやらかしたじゃ――――ブヘッ!?」
高速で突っ込んできた死神娘の一撃を頭部にモロに受け、悠理はその場で身悶えることになった。
『何言ってんだバカ! お前が派手にばら撒いたあの光で、操られてた街の住民が全員ぶっ倒れたんだよ!』
――ジャダが言っていた様に、街の住人は全てがバドレの支配下にあった。卑怯にも彼等をレーレ達にけしかけ、抵抗すれば人質として自害させる……。
そう言われた時には部隊の連中が怯んだが、レーレは速やかに“魂の半分引っこ抜き”を行使し、バドレを気絶させた。それから住民達も同じく気絶させ様とした矢先に、突然地下から虹色の光が溢れ出て――――現在に至る。
街の人々は全ては悠理の力によって悪しき祝福の影響から解放され、そのまま緩やかに気を失っていったらしい。
「何っ、俺が原因なのか? ――――まぁ、それはいいや。バドレの野郎は?」
この事態を自分が引き起こしたとは露知らず、それ所か後回しにまでして諸悪の根源がどうなったかを問う。
『アイツなら――――ホレ』
レーレが指差す後方には拘束されたバドレがファルールに連行されている所だった。
「――――大人しくしていろ」
「バ、バカな……。こんなバカな事が――――」
自分に何が起きたかを未だに把握しきれていないのだろう。足取りは動揺で乱れ、普段は糸目の彼が驚愕で目を限界まで見開いてる。
ぶつぶつと『これは何かの間違いだ……』と繰り返し呟いている様は、悪夢に魘されているかのよう。
「よぉ大将、ご機嫌いかが?」
たっぷりの皮肉を込めた笑顔と挨拶をしながら近づいていく。
悠理の姿を視界に捉えたバドレが敵意をむき出して食ってかかる。
「キ、貴様! 何者だ!」
そこに込められた意味はきっと複数あっただろう。
だが、何者かと問われて彼が返す答えなど――――――唯一つしかあるまい。
「自由の使者――――さッ!」
ノレッセアにおける廣瀬悠理の行動を鑑みれば、これは誰でも予測できる。
自身が何者かを高らかに叫びながら右足を振り上げ、つま先を問答無用でバドレのわき腹にめり込ませる。あくまで軽く撫でる様に、だ。
「ごぶっ!?」
だが強化された彼の肉体ならば、それで十分な威力を発揮する。
たったの一撃でゆうに5mは吹き飛んで建物に激突。そのまま白目を剥いてバドレは無様に気絶した……。
「――ふー、これにて一件落着……だな!」
「ちょ、ちょっと!? 気絶させてどうすんのよ! まだ訊きたい事は山ほどあるのに!!」
一仕事終えて良い汗かいた! ――みたいな顔をしている悠理に突っ込むカーニャ。
この街を支配していた事も、ここで奴隷売買を行っていたのと取引相手の情報……。
そして彼をバックアップしていたのはコルヴェイ王で間違いはないのか?
それらの事を徹底的にしかも早急に聞き出したかったのに気絶させてしまったのは痛い。
「安心しろ、その手の専門家とここで合流する予定だから」
恐らく、バドレはそう簡単に口を割らないであろうと悠理は告げる。
だが、この王都解放への旅路ではそんな事もあるだろうと思い、相手から話を聞きだすプロを予め呼び込んでいたのだ。
既にこの街に到着しているハズだが、連絡は一行にない……。
『――なぁ、もしかしてそれってアレの事か?』
「えっ、どれ?」
唐突にレーレが遥か遠くを指差す。そこには教会と思わしき建物。指はその屋根の上を差し示している。
『アレ』
良く見ると屋根の取り付けられた十字架に何か――――いや、人が引っかかっている!
『ちょ、ちょっと何なのよ! 動けないんですけど~~~!?』
それは地球で言うゴスロリ衣装を纏った少女だったが、どうしてそんな所に引っ掛かっているのだろうか?
「――そ、そうかも知れない……」
とりあえず、詮索は後回しにして滅茶苦茶救助した。
うーん、これ第一章終わるまでに100ページ超えちゃうんじゃ……。
当初は80ページ位で終わるだろうと思ってたのに。
まぁ、人物紹介とかを統合しちゃえば多少はスッキリするか。