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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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野宿にハンモックがあったらきっと最高

「――で? 結局、寂しくなって追いかけて来たのか?」

 現在、悠理達は森の中で野宿していた。

 何だかんだ行って後を着いて来たのでレーレも一緒だ。

『ち、ちげーよ! お前らがくたばったら魂を回収してやろーと監視を――』

 そんなレーレは今悠理の膝にちょこんと乗っている。

 ペットはご主人様の膝の上!、と彼が譲らなかったからだ。

 最初は嫌がっていたが色々と話している内に落ち着いてきたらしい。

「そーかそーか、そんなに寂しかったか」

『話し聴けよ!』

「アンタら仲良いわね……」

 焚き火に木の枝をくべつつ、目の前のやり取りに呆然とするカーニャ。

 急速に仲良くなっていく二人を何となく羨ましそうに見ている。

 別に嫉妬とか特別な感情を抱いてる訳でもない。

 唯、一度は戦った者同士が今はこうして楽しそうに話せているのが不思議で……。

 ――ああ、世界中の人々も二人の様に分かり合えれば良いのに。

 そんなもどかしさを抱かせた。

「あの……今後の目標と行動についてですけど……」

 おずおずとノーレが提案する。

 その言葉にレーレを弄ることに全力を傾けていた悠理も佇まいを直す。


「先ずは同士を集めなきゃ」

 流石に自分達だけでは戦力が足りない。――いや、戦力と数える事すらおこがましい。

 奴隷解放を掲げるのなら、いずれは国家とも戦う事になる。

 目標を達成するにはもっともっと多くの仲間と支援者が必要だ。

「あー、その事なんだが……」

 悠理が挙手、カーニャが掌を向けて続きを促す。

「俺が召喚者ってのは伏せてくれねーか?」

「えっ、何でよ?」

 何の為に召喚したと思ってんの?、と言いたげな表情。

「成程、確かに伏せておいた方が良いですね」

『その方が今は都合良さそうだしな』

 不満そうな彼女とは裏腹に、発言の意図を察した二人。

 カーニャだけは疑問符がついたままだ。

「えっ、えっ、解ってないのってアタシだけ?」

「…………はぁ」

「姉さん……」

『…………フッ』

「――ダメな子を見る視線はやめて!」

 何ともいえない微妙な空気が流れた。

 本来、カーニャは頭脳労働などが苦手だ。

 悩むくらいなら身体を動かす、といったタイプ。

 頭脳担当は妹のノーレに譲って(押し付けたとも言う)きたツケが回ってきたのかも知れなかった。


「――コホン、本来なら人を集めるのに召喚者を祭り上げる方が手っ取り早いんだろうが……」

 咳払いをして微妙な空気を払拭し、カーニャの為に解説を始める一同。

「ユーリさんの能力は目に見える様な解りやすいものじゃないから」

 元来、人を惹きつけるカリスマ性と言うモノは一目見て、これは凄い!

 ――と、ハッキリと伝わるような解り易さが肝要だ。

 その点で言えば、悠理の能力ではインパクトに欠ける。

 体感すれば納得もいくだろうが、それが逆効果となってしまう場合が怖い。

 過ぎた力は身を滅ぼすとも言うが、危険すぎる力は不信を産む。

 廣瀬悠理が民間人達にとって危険な存在になるのでは?、と。

 彼と奴隷解放への道を歩むにあたって、そう思わせてしまうのだけは避けなければならない。

『それに祝福とも違う得体の知れねぇ能力だ。切り札は隠しておいた方が良い』

 得体の知れない力――これも恐怖を生む切欠となるかも知れない要素だ。

 その逆に特殊な力を持つ者は崇められてしまう可能性もある。

 悠理としてはそんな事態は避けたいところであった。

 宗教染みた思想を持つ人間が戦いをし始めるとロクな事にならない。

 しかも、自分がその思想の中心に据えられたら――――考えるだけでぞっとする。

 それにレーレの言う通り、手の内は出来るだけ知られない方が良いだろう。

 

「まぁ、そんな訳で――ちゃんと働くけど矢面に立つのは勘弁な」

 ――以上の内容を伝えるとカーニャは感心したように。

「皆そこまで考えたんだ……」

 ――と、うんうん頷いていた。

『おい、こんなんでよく奴隷解放を目指す気になったな?』

 最早、呆れを通り越して感心すら覚えたレーレがノーレに視線を送る。

「ね、姉さんは肉体労働担当ですから……」

 姉妹の間では実際にその様な決まり事があるのだが……。

 例え事実であってもこの状況ではフォローにならない。

 ――それは言った本人も痛感してるらしく、苦笑いするしかないノーレであった。

 

――――――――

――――――

――


「じゃあ、今後の方針も大体決まったし、見張りたてて寝るか?」

 腕時計を見ながら悠理が提案した。

 この世界と時計の時間があってるかは解らないが、話合いを始めてから随分時間が経っている。

「そうね……ふぁ……」

 欠伸をしながらカーニャが賛成する。

 苦手な頭脳労働をしたせいか妙に疲れた顔をしていた。

『お前と一緒に見張りすんのだけは嫌だからな!』

 先手を取ってレーレが叫んだ。

 しかし、だからと言って所で諦める男ではない。

「俺はお前と一緒に見張りしたい!」

 全力で思いの丈を叩きつけた。

 悠理はお世辞を言わない。いつも思った事を素直に表へ出す主義だ。

『ばっ!? そ、そんな事言われてもダメだからな!』

 レーレはレーレで、ストレートな言葉に弱い。

 案外純情な死神である。

 まぁ、500年以上も魂を刈って刈って刈り続ける生活をしていれば、平凡な日常で体験するような事とは無縁なのも必定か。


「――って訳で、組分けはどうするよ?」

 元より、戦闘手段を持つ自分とレーレは分かれるべきだと思っていたので未練も無く引き下がる。

 しかし、ほんのちょっぴり残念そうなレーレの表情はしっかりと心のファインダーに焼き付けておく。

「アタシはどっちでも大丈夫よ?」

「じゃあ、ノーレさんと俺、カーニャとレーレで良いか?」

「えっ、私、ですか?」

 いきなり白羽の矢が刺さり驚く。てっきり彼は姉と組むだろうと推測したからだ。

 見事に外れてしまった訳だが。

「ああ、何かレーレと組ませるのは不憫で……」

『どういう意味だゴラァッ!』

 二人にしたら恐らく会話が持たない。

 何とか話しかけようとして言いよどむノーレにレーレが切れる――と言う一連の流れまで容易く想像できる。

「カーニャだったら別になんとでもなりそうだけどさ」

「どういう意味よ!」

 本当ならば、彼女とレーレを組ませたくもなかった。

 もうレーレがカーニャに危害を加える事はないと言っても、自分の命を奪おうとした相手と二人きりは気まずいだろう。

 だが、カーニャなら案外打ち解けてしまうんじゃないか?

 根拠はないがきっと期待に応えてくれそうな気がした。

「えっと、私は大丈夫、です……」

 ちょっとだけ恥ずかしそうな顔をするノーレ。

 実は彼女とはもっと話をする機会が欲しいと思っていたのだ。

 他の二人とはいつでも話せるかも知れないが、大人しい性格の彼女はこちらから積極的に話かけて行った方が良いだろう。

 7年間の工場勤務で培った経験が地味に発揮された瞬間である。

「まぁ、アタシもそれで良いわよ」

『右に同じくー』

 言いながら二人は直ぐ横になった。

 ――案外、息ぴったりなんじゃないかこいつら……。

 そんなこんなで、この世界に来て初めての夜が過ぎていく。

色々書きたいことはあるけど眠いので割愛


次回、見張りしながら会話する二組のシーンです

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