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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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初めての二人きり、晒しあう素顔・中編

うおー、確り書きたくて分けたハズなのに雑ぅ……。


うん、いつか折を見て加筆修正するぞ……。

 ――背中へのキスは止んだが、未だにカーニャは悠理に背中から抱きしめられている格好だ。

「はぁ……はぁ……。もう、いきなり何なのよ」

 荒く息を吐いて気持ちを沈め、我が身に降りかかった災難を嘆く。

 油断すると口付けされた背中に意識が向いてしまい、落ち着かせたハズの動悸が再度激しさを増す。

 まるで自分の身体で無いかのように制御が効かず、せめてこの状況を作り出した張本人にはばれぬ様、必死に冷静さを取り繕う。

「いや、何か良く解らんがノーレが――――」

 自身の行動を正当化する訳ではないが、ここへ来たのはノーレからの頼まれ事。

 何を考えているのかは解らないが、少なくともその真実だけは伝えておく。

「――――あの子何考えてるのよ……。帰ってきたらお説教ね」

 どうやら姉でさえも欺いた行動らしい。となると、ますます持って彼女の行動に込められた真意を見抜くのは難しくなったようだ。

「まぁ、出発の前に二人でのんびり語り合えって事じゃないか?」

 解らなくても解らないなりに推測を立てろ。己の美学に従って出た答えはそれ位であった。

「確かに出会ってからちゃんと二人で話し合うのはこれが初めてかしら? ――――何か、ゴメン」

「ん? 何で謝るんだ?」

 抱き締めたカーニャの身体が縮る、それは多分申し訳なさからくるもの。


「アタシ達の――ううん、アタシの都合で呼んで、ユーリはこんなに頑張ってくれてるのに……。ロクに話すらしてないなんて酷いよね……」

 実際、彼女達を放って敵陣に奇襲を仕掛ける悠理も悠理で、話をする時間がなかったのは彼にも責任がある。

 ――しかし、カーニャは自分に非があると言う。

 恐らく、悠理はきっと気にしない。でも彼女は気にするし、このままで良いなんて思えるハズが無い。

 自分に都合良く頼るだけ頼って、こちらからは何も返さない……そんなのは――――。

「これじゃあ、アンタを奴隷扱いしてるのと変わらないじゃない……」

 世界に存在する理不尽なシステムに憤り、虐げられてる人を救いたいと行動を起こした。

 なのに――目的を果たす為に、同じことしようとしていた……と言う事実が彼女を自己嫌悪へと追い込む。

 お笑い種だと自嘲する。こんな自分が誰かを救うなどと……。

 善意からの行動だったはずが、知らぬ間に悪を孕んでいたと認めがたい現実。カーニャはどんどん嫌悪を坩堝に嵌っていく……。

 ――と落ち込む少女を余所に、悠理は至って平然。

「――――おっ、旨そうなうなじ発見。舐めて良い?」

「いいわけないでしょ! 人が深刻な話してんのにふざけないでよ!」

 どうやら彼女の話よりもうなじに夢中だったらしい。確かに白いうなじは非常に魅惑的なもの。

 もしも自分が吸血鬼だったら我慢出来ずに喰らいついていることだろう。

 ――と、そんな事を真面目に考えつつも、怒り心頭気味なカーニャに対応する。


「んー、俺は対して気にしてないんだがな……。お前に使われる分には別に構わんし」

「――どうして? アンタは自由を愛する漢なんでしょ。アタシの元で束縛されるなんて嫌なハズじゃない」

「お前は物事の表面だけを素直に見すぎてるな……いいか? 言葉には常に裏表があって、上手く使いこなせるヤツは得をする」

 これも彼が提唱する美学の一つ。巧い言い訳でその場を乗り切る卑怯者の姿勢――――そんな風に指摘されると頭が痛くもある。しかし、実践して得られる利益は大きい。その事を何とか伝えるべく悠理は話を続ける。

「つまり自由を楽しむためには、時に誰かの元で拘束されるものアリなのさ」

「でもそれって――――裏を返せばいつかアタシ達からも離れていくって事じゃないの?」

「まぁ、いつかはそうなるな」

 返ってきた鋭い切り替えしを否定する素振りも見せず肯定。

 いつか必ず別れは訪れるもの、一体どんな結末が来るのか今は知る術はない。

 けれども確実にその時はやって来る、でも彼は恐れない。

「そんな……ユーリは平気なの? 親しい人と離ればなれになるのに……」

 放たれた言葉にショック受けて、声には少しの震えと多大な寂しさが募る。

 たかが一週間と言う短い付き合い……でも、確かに共に築いた時間があった。

 それらを簡単に手放すと言うのか? 失っても平気だと思っているのか?

 カーニャはそう問いかけたかった。けれど、それさえも平然と肯定されそうな気がして声にする事は出来ない。


「人は元々孤独なものさ、一人で居るのに苦痛を感じていたら生きてなどいけないだろう?」

 どこか冷めた考え方をやはり平然と口にする悠理。本心からの言葉に熱はなく、されど些かの躊躇もない様は非情とも取れる。

「……寂しい考え方ね。アタシはずっと皆と一緒に笑って居たいけど。……その、ユーリとも」

 少し戸惑いがちに否定の言葉を投げる……一緒に居たいと口にするのはかなり照れたが。

「おっ、告白か?」

「ち、違うわよ! アンタなんて全然好みじゃないんだから! むしろ、嫌いな部類よバーカ!」

 否定しつつも『違わないのかも知れない』と自覚する。彼の事を憎からず思っている事は嘘ではないのだから。――つまりは条件反射の照れ隠しなのだろう。

「ハッハッハッ、その方が助かる。人は愛がなくても生きていけるが、愛を知っちまったらもうダメだ。ずっと囚われて求め続けちまう……」

 ちょっとだけ深刻な顔で、まるで実際にその事例を見てきたかの様に語る。

 表情に出たのは何とも言えない苦味。相当に嫌な経験をしたのだろうか?

「それは――いけない事なの?」

「少なくとも俺にとっては、な」

 訊かされた内容に抵抗を試みる少女。そんな考え方を知ったのは生まれて初めてで、何だか淋しいと思う。だから、心の赴くままに反逆する。

「人は愛を知って強くなるのが定番じゃない?」

「愛は人を狂わせるって言うぜ?」

 ここで悠理の美学が生きてくる。見事に裏を取って切り返す、内容が内容なだけに自分が悪役になっている気分に苦笑する。

 ――――ああ、何かこの台詞の時点で俺の負けだよな。

 いつだって清く正しく美しいものが勝つ。逆を求める人々はそう多くはあるまい。


「――――アンタって結構屈折してるのね……」

 ここまで話し込んだ事が無かったから当然か――――と考えてある事を思い出す。

 それはスルハに着いた当日、彼が街の住人を跪かせた時に放った言葉……。

 ――あの時既に、屈折した部分は見え隠れしていたのだと気付く。

「お前は純粋で何よりだよ。これからもカーニャらしく居てくれ、それがきっとお前の力になってくれるハズだから」

 自身が持たぬ物への憧れを込めた台詞……。

 ――最早、純粋な心など一片たりとも残ってなどいない。そう断言している様にカーニャには聴こえた。

「――アタシのこと知りもしないくせにそんなこと言わないでよ」

 どう答えれば良いのか解らずに悪態を吐く。

 ――――アタシだって、そんなに純粋なんかじゃないわよ……。

「訊いて教えてくれなさそうなら声援を送る位が関の山だろ?」

 僅かに込めた本心は男に届いたのかどうか……。

 表情を見れば解るかもと思い立つが、横を向けば直ぐ近くに彼の顔があると思うと緊張して行動には移せかった。

 故に会話の続行にてその真相を探ることとする。


「……そうかも知れないけど……知りたいとは思ってくれないの?」

「思わん」

「即答!?」

 予想外――とまでは言わない。悠理ならばそれ位の解答はするだろう……。唯、一瞬の間すらなく即答されたのには乙女心が激しく傷ついた気がして、内心でカーニャは凹む。

「自分の事を知って欲しいならそれなりにアピールするだろ? 逆にそうしないのは、関わってほしくないか、隠しておかなきゃならない秘密があるからだろうし」

「…………だとしても、踏み込みようとしないのはおかしいわよ」

 傷ついてもめげずに、捻くれた自論を論破しようと再度立ち上がり仕掛けていく――――が。

「踏み込んでも良いが……ボロを出さない自信があるのか?」

「えっ?」

 返答に暫し固まってしまう。何故って、彼女には隠すべき秘密も理由もあって……。

 深いところまで踏み込まれてボロを出さずに居られるかと言えば――――。

「お前ってあっさり自滅しそうなイメージがあるんだが」

「だ、大丈夫! さぁ、どんと来なさいよ!」

 ありもしない自信を嘘で固めて取り繕うカーニャ。

 ならと虚勢を見抜いた上で悠理は質問する。

「じゃあ、今まで付き合った人の数は?」

「居ないわよ! 悪かったわね!」

 隠している秘密に関したものではなくてほっとしたものの、何だが傷口を抉られた様な気分になるカーニャであった。

 何となく彼に自分の色恋事情を知られるのは予想以上に恥ずかしい。

 変に思われていないだろうか? 少しだけ不安になるが…………。


「悪くなんてないさ、とても魅力的だよ」

 ――耳元で囁かれた言葉にゾッとして、先程までの気持ちは何処かに吹き飛ばされた。

「な、何を根拠に言ってんのよ……」

 魅力的と言われたのには確りと照れてみせるが、内心はそれどころではなく、直感が危険信号を発している。

 何かがおかしい、何かと問われればそれは悠理の纏う空気。

 優しく抱き止める様な雰囲気から一変して、今は優しく締め上げられている気分……。

 じわじわと、罠に追い込まれた事に手遅れになるまで気付かせない……ねっとりとした策略。

 そしてカーニャはもう――――。

「だってそれは――――」

 ――――手遅れの位置にいた。 

「――――誰よりも真っ先にお前を穢せるって事だろう?」

 妖しさを秘めた甘ったるい囁きが悠理の口から発せられる。

 まるで獲物を刈る喜びに目覚めた狩人のよう。

「――――え? きゃあっ!?」

 豹変した彼の言葉に唖然となっている間にカーニャは床に突き飛ばされてしまう。

「――――ふ、ふふっ、くはははッ……!」

 狂った笑いを浮かべて嬉しそうに目を細めた悠理には――――。

「ユーリ、アンタ……!」

 ――はっきりと見て取れる狂気が色濃く浮かんでいたのであった……。

さぁ、超展開ですよ!


次回でカーニャの話は終わります。


その次からはやっとグレッセ王都への旅が始まる――――予定!

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