番外編・祈りを捧げ続ける乙女
ハッハッハッ――――――ごめんなさい!
とりあえず今日も番外編で許して!!
※今更ですが、番外編は時系列が滅茶苦茶だったりします。
今回のお話は悠理達がリスディア部隊に攻撃を仕掛けに街を抜け出した後の事です。
「ちょっとそこ! ぼやっとしてないで手が空いたら他の人を手伝ってあげて!」
悠理達がスルハ攻略隊へ強襲を仕掛けに抜け出した翌日……。
朝も早い段階からカーニャの怒り交じりの指示が飛ぶ。
ハッキリ言って、それは悠理が自分に何の相談も無しないで出て行った事への八つ当たり。
――――いや、それだけでもない。
「もしもユーリ達がしくじったら後が無いんだからね! 気合入れて作業しなさいよ!」
その言葉にスルハの職人連中が『応ッ!』と威勢の良い声で応える。
こちらも紛れもない本音、彼がこの場に居ない以上は自分達の力で何とかする外ない。
――絶対に大丈夫……、そう信じる事は簡単だ。でも、この世に絶対はない。カーニャは何度もその瞬間を体感したのだから。
『姐さん、少し飛ばしすぎてやしねぇか?』
「――――まだ温い位よ」
補佐についていた青銅戦士ブロンがやれやれと肩を竦める。
悠理ことミスターフリーダムが姿を消してからカーニャはずっとこの調子。
つまりは昨日の夕方から睡眠はおろかロクに食事も取っていない。
夜中は眠る必要が無い鎧三兄弟とモブアーマー達がトラップの製作及び設置作業を続けていたが、彼女はそれにずっと付き合っていたのだ。
それから、住民達が仮眠を終えて集まった所ですぐさま現場指揮に着き今に至る。
『姐さん、姐さんもミスターと同じで俺達にとっては大将なんだ。ここは一旦俺に任せて休んじゃくれないか?』
ブロンは頭を下げてまでカーニャに頼み込む。実際、彼女がリーダーシップを発揮したお陰で作業は順調に進んでいる。
――が、逆を言えば今ここで彼女にまで居なくなられたら指揮の低下は免れないだろう。
スルハ攻略隊本体への攻撃が失敗すればこの街は戦場になる。その際に纏め役が居なければ如何にこうして対策を練っていてもその真価を発揮できないのは考えるまでもない。
「――――解ったわよ……。三時間位で戻ってくるわ」
ブロンの言いたい事を汲み取り、ここはカーニャが引く形なる。
――――そうだ、アタシはユーリに後を託されたんだ。責任重大だし、失敗は許されないけど、だからこそしっかりと身体を休めなくちゃ……。
ふらふらとグレフ邸への道のりを歩き始める。
『――おい、姐さんを送ってやってくれ』
『了解であります!』
その後姿を見たブロンはモブアーマーに指示し、彼女を送らせる。
モブアーマーはカーニャを無造作に背負うとそのまま超特急で街の中心地から遠ざかっていく。
『ちゃんと休んでくれると良いんだが……』
不安を口にする青銅戦士。出会ってからまだ二日しか経っていないが彼女の真面目さは良く解っている。
きっと屋敷に戻ってもじっとはしていまい。そして――――その読みは当たっていたと知るのはおよそ4時間後であった。
――――――
――――
――
「――姉さん、ちゃんと休んでるかな?」
グレフ邸の廊下を一人歩くノーレ、その手には軽食を乗せたトレイ。
無論、これはカーニャに食べて貰う為のもの。簡単なサンドイッチと身体が温まる野菜スープ。
どちらもノーレが台所を借りて作ったもので姉の好物でもある。
「――あれ、扉開いてる?」
両手が塞がっていて、どうやって扉を開けようかと一瞬悩んだが、何故か既にほんの少しだけドアが開いている。気になってとりあえず部屋を覗いてみれば……。
「…………神様、どうかお願いします。ユーリの事を守ってあげてください……」
――そこには静かに祈りを捧げる乙女の姿があった。
ベットの上で膝をつき、両手を組んで一心に神への願いを紡ぎ続けるカーニャ。
その姿は敬虔な修道女を髣髴とさせる清らかで美しいもの。
「アタシが巻き込んだんです……。だから、アタシから何を奪ったって構いません。だから、だからユーリを……」
気付けば頬を熱い雫が伝い始め、言葉尻にも震えが混じる。
そこにはきっと罪悪感があった。悠理はカーニャ達の事情を理解してくれたし、快く協力も約束してくれた。
だから、彼を巻き込んだ――――その事実がやけに薄く感じられたのかも知れない。
「――――死なせないで下さい……」
必死に祈り続ける……そこに懺悔が宿っている事を気付けたものは多くない。
(――――姉さん……)
実の妹ですらも、こうして偶然目撃しなければ知らずに居ただろう。
カーニャは真面目で芯が強いようで実は脆い……そんな少女。
知っていたハズなのに、ノーレもまた普段の姉の姿を見慣れていたせいで忘れていた。
誰よりも心優しくて清らかな、大好きな自慢の姉ことを……。
「ユーリ……ユーリっ……お願い、どうか無事でいて……」
カーニャはひたすら祈り続ける。あの自由気ままな、悪い顔をした勇者の無事を唯ひたすら……。
「――――っ」
ノーレはその姿を直視できなくなり、そっと部屋から離れた。
きっと何を言っても彼女は祈りをやめて休もうとはしないだろう。
妹である自分にはそれが良く解る、だから……。
――――ユーリさん、どうか早く戻ってきてください……。
彼女もまた脳裏に浮かんだ男の無事を願う。
それが―――――姉を安心させる唯一の手段だと信じて……。
ごめんよぉ……。
積みエ○ゲの整理とかしてたらいつの間にか時間が……。
明日からは普通に本編再開できると思うんで待っててくれれば幸いです。