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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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新装備と紹介と誤解

時間が足りないんで一旦投稿しますが、24:30までには書き終わると思うのでそれ位を目安にもう一度来てくれると助かります。

「うーん、もうちょっと無骨な感じが良いなぁ……」

 ――ここは悠理が初めて鎧三兄弟と出会った場所。

 グレフ・ベントナーの工房にて、悠理は剣を取り出してはああでもない、こうでもないと言いながら吟味を重ねる。

「ふむ、ではこちらの棚に仕舞っている剣を出そう」

 自分の作品を次から次へとダメ出しされることに嫌な顔一つせず、グレフは付き合ってくれていた。

 木箱に仕舞われた剣を慎重に取り出す、一本一本丁寧に布が巻きつけてあり、そのどれもが比較的新しい。作品自体はかなり前の物である事から定期的に交換しているのだろう。

「ああ、悪いな。急に無理言って」

 今ここに来ているのは、もう一本剣が欲しくなったからだ。

 現在、悠理は“生命神秘の気”を精霊剣リバティーアの改竄した祝福によって、“攻撃”と“防御”に切り替えて使っている。

 二つを同時にこなすには精霊石の容量を大きく超えてしまう為、常にどちらか一方だけだ。

 だが、やはりと言うべきか、毎回状況に応じて切り替えるのでは効率が悪い。

 今までは特に身体を鍛えた事の無かったこともあって、小振りなリバティーアを振るうのが精精だった。

 しかし、エミリー戦で肉体が大幅に強化されたので戦力の補強としてもう一本。リバティーアを防御用に、新しい剣を攻撃用として固定して使うことにしたのだ。

 ――そして現在。手に馴染む一振りが中々見つからず今に至る……。


「構わんさ、それにしてもこんなにダメ出しをされたのは久しぶりだ、ハッハッハッ!」

 愉快そうにグレフは豪快に笑った。最後に散々な評価を貰ったのはもう数十年前のこと。

 研鑽に研鑽を重ねたお陰で、今やグレッセ王国一の名鍛冶職人。褒められるのが当たり前になったが、一抹の寂しさを禁じえない。

 本来、彼の作る品物は護身用のナイフでさえ、一週間遊んで暮らせるほどの値段。

 単価が高い代わりに性能は抜群で、リピーターも多く、彼の作品を購入することが一種のステータスとなり、憧れとなっている。。

 そんな愛用者や憧れを持つ人々が今の悠理を見たら絶対に怒るだろう。何せもう100本近い剣を漁ったが、それでもしっくり来る品が無いと言う。

 ――贅沢ここに極まれり。

「しかし、流石はスルハ一、いやグレッセ一の鍛治職人だな。見てて壮観だよ――槍が無かったのが残念でならないが……」

 床に並べた剣達の出来は素人目でも一目瞭然。鈍い輝きを放つ銀色の刀身は芸術品もかくやと言う美しさ。

 どれだけの労力を費やしてこれらが造られたのかと思うと、自分が物凄く怖いもの知らずな行動に走っているかが良く解る。

 ――それでも妥協はしたくないので吟味は続けるのだが……ここに槍があったのならまた違ったのかも知れない。

「ミスターは槍術に心得が?」

「本格的にじゃないがちょっとだけ、な」

 問われて大したことはないと返す。ほんのちょっぴり趣味で習っていたことがあっただけだ。

 ――師範代が気に食わかったからケンカして破門されたあとはそれっきり。

 偶に運動不足の解消に、習った所までを繰り返し練習して至りもしたが、ここ2、3年は全然だ。今更槍を握った所であの時の5分の1程のキレもあるまい。

 それでも槍を求めてしまうのは未練か、純粋にあの感覚が好きだからか……。

 多分、両方なのだと思う。何せ悠理は諦めが悪いのだから。


「ふむ、ではいつか槍造りにも挑戦してみよう。何か希望は――」

「ああ! そうだった。一つ造って欲しいものがあるんだ!」

 話が剣から槍に変わりかけた所で思い出すのはグレフへのお願い。

「私に造れるものなら喜んで――だが、出発は明日だろう?」

 いくら国一番の職人と言えど時間には逆らえない。恐らく、やれるだけやってはみるが物によっては当然出来ない確率が高いだろう。勿論、悠理も重々承知している。故に期限はもっと先。

「今すぐって訳じゃないさ。だけど将来的に必要だと思うんでな」

「成程、ならその話はまたあとにしよう。これならどうだ?」

 話の最中にも剣の整理を続けていたらしく、箱から数本取出して手渡す。

 受けとった悠理は剣を構える――――が、その表情は浮かない。

「ふーむ、どれどれ…………うーん、やっぱしっくり来ないなぁ……」

「――むぅ、それだともう他には……」

 流石にグレフの表情が曇りだした。怒った訳ではなく、在庫が他にないのだ。

 何しろ悠理の特異な力に合わせられる剣など造った事が無い。

 せめて時間があれば最高の剣を拵えてやるのに……と、職人としての本領が発揮できないことに歯がゆさが募る。

「――グレフ、あの明らかにヤバそうな箱は?」

 もうこの場は妥協してどれかに決めてしまおうか……。そう考えてた矢先に目に映ったのは鋼鉄の箱。

 何重にも南京錠を賭けて厳重に保管されている事からも余程危険なものであることは明白。

 しかし、だからこそ興味が惹かれると言うもの。

「それは――――いや、そうだな……。ミスターこそが相応しい使い手かも知れぬ」

 一瞬だけ逡巡するグレフだが、最早悠理に応えるのは自らの手で封印したあの剣しかない。

 記憶に奥底に眠る嫌な思い出を振り切って、意を決し南京錠を外していく。

「こ、これは――――」

 そうして中から現れた異形の剣に直感する。

 ――ああ、この剣しか有り得ない、と。

 これが後に悠理の切り札となる破砕剣――――“グランディアーレ”との邂逅であった。


――――――

――――

――


「ふぅ、良いもの貰ったぜ!」

 街でお得な商品を手に入れた主婦のような晴れ晴れとした表情で、一人グレフ邸へと戻る悠理。

 その背には戦利品とも言える長剣が背負われている。

 あまりの嬉しさにニヤニヤとしているとグレフ邸は直ぐ目の前。そして玄関先で彼を出迎える女性が一人。

『あら、お帰りなさいませミスター。……グレフ様はご一緒ではないのですか?』

 この館の管理をしているメイドが箒で掃き掃除をしていたらしい。

「ただいま、()()()()()さん。ちょっと仕事を頼んだら早速やるって工房に籠ったんだよ」

 リリネット――――そう、それが彼女の名。つまりはレーレが所持するあの首飾りと関連のあるこの女性は――――――淫魔だ。

 ピンク色のセミロングで横髪を三つ編み、可愛らしい顔。

 だが、首から下はそんな癒し系とは程遠い凶悪なボディ……!

 メイド服に身を包んでも、いやメイド服を着ているからこそくっきりと強調される二つの膨らみ。それは手で鷲掴んでも尚収まりきらないのではないか? そう想像させるに足る立派な物だ。

 巨乳に興味が無い悠理でもこの圧巻過ぎる光景は何度体験しても目に毒。

 世の男性の大半が巨乳好きなのも仕方ないのかも知れない。確かに強烈な魅力を秘めている。

 ――――だが、俺の心から貧乳に対する愛が消える訳がない!

 強く念じて巨乳からの誘惑を断ち切る悠理――――だが。

 たかが胸が大きい程度で、凶悪と称するハズがない。

 胸だけでは無く、身体全体がムッチリとしている。如何にも男の情欲を刺激する肉感的な身体つき……。

 流石は淫魔、今は抑えられているとは言え、種族/祝福の性質からは簡単には逃げられないのだ。

 もしも、これで淫魔としての全能力を取り戻したらどうなってしまうのか?

 しかし、考えるだけでも気が気じゃなくなりそうなので、その内悠理は考えるのを止めた……。


『そうですか、なら今晩はお帰りにならないかも知れませんね』

 そんな悠理の葛藤など露知らず、リリネットは会話を続ける。

 心なしか残念がった表情。主人に仕える従者として、役目を全うできないことほど歯がゆいものは無いのかも知れなかった。

「あー、何か悪いことしたみたいでごめんな?」

『いえいえ、グレフ様の創作バカっぷりは今に始まった事じゃありませんので』

 もう慣れたと苦笑いするリリネットは紛れも無く良い女だと悠理は思う。

 主人の事に理解を示して受け入れてくれる彼女は最高のメイドだ。

 そして、素直に羨ましいとも思う。だから心の中で『グレフ爆発しろ!』と念じたのはご愛嬌だ。

「悪いついでに一つ頼んでも良いかな?」

 ここでも悠理は頼みごとを持ち出す、これも今後に必要な案件である。

『私に出来ることなら何なりと――――あっ』

 優雅に一礼して了承してくれた――と思ったら急に顔を真っ赤にするリリネット。

 何故か身体をもじもじとくねらせ始め、その度に胸が揺れるのはやはり目に毒。

 男の理性を破壊するのには十分すぎる程の色気が漂い始めていた――――多分、本人は無意識だろうが……。

『い、イヤらしいことはダメ、ですよ?』

 自分の身体を両腕抱きしめながら恥ずかしそうに呟く。

 ――――ああ、俺は死ぬのかな?

 可愛らしさに凶悪なエロボディを足すとこれ程までの破壊力を生むのか。

 最早、理性の崩壊が一周して妙に冷静になった悠理。

 ――いや、無意識の内に“千変万化”で精神強化を行って逃れただけだが。能力の無駄遣いもいい所である。まぁ、迫り来る危機に無心の領域で対応したといえば聴こえも良くなるか。


「ハッハッハッ、大丈夫。好きな相手が居る人に迫ったりなんかしないから」

『う、あうぅぅ……』

 図星を突かれて更に真っ赤になるリリネットは大変可愛らしいのだが――――如何せん、エロさを差し引いても強力すぎる。

 今まで何人の男をたぶらかして来たのだろうか? ふとそんな事が気になったが、訊いても答えてはくれないだろう。何せ自分の能力を態々封印するほどだ。

 きっと彼女には彼女なりのドラマがある、そこを突っ込むのは野暮というものだ。

「――――でさ、淫魔の知り合いとかに連絡取れないかな?」

『? ええ、勿論出来ますが……。一体どうし――――はっ!?』

 気を取り直して本題を告げると、さっきまでの狼狽っぷりから一転してきょとんとする――――が、それも束の間。何かに思い至ったリリネットは再び頬を真っ赤に染めて――――。

『あ、あの気を付けて下さいね?』

「え?」

 唐突な忠告に今度は悠理がきょとんとする番。

『淫魔はとにかく快楽に貪欲ですから、油断するとからっからに干からびちゃいますよ?』

 一瞬、返答の意味を理解しかねる。

 ――が、理解したら今度は悠理が顔を真っ赤にする羽目になった。

「あ、ああっ!? 違う違う! 俺がどうこうするんじゃなくてさ!」

 どうやらリリネットは、彼が性欲の捌け口に淫魔を利用しようとしたと勘違いしたらしい。

 ――この後、珍しくしどろもどろになった悠理が誤解を解き、意図を説明するのに一時間かかったと言う……。

――よし、ちょっと過ぎたけど更新完了。


さっさと寝て仕事に備えなきゃ……。


タイトルもちょっと変更。

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