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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
54/3919

何故、私達姉妹はハブられるのか?

おー、何とか書き終わったぞ。

 ――グレフ・ベントナーを説得し独自行動の許可を得た悠理。

 これから彼等のグレッセ王都への長く険しい道のりが始ま――――。

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁッ!」

 カーニャから発せられた特大の待ったに、部屋中の面々はきょとんとするばかり。

 見れば彼女は怒りが顔で、息も荒い。つまりは今の流れに異議、不満が大有りということ。

 それもそのハズ、今回も、だ。今回も彼から指名が掛からず置いてけぼり……。納得できる訳が無い。

『んだよ、今良いところだったろ?』

「カーニャどのは空気が読めないのだな……」

「えっ、あっあれ? 何かアタシが悪い流れ!?」

 レーレとファルールは既に悠理から指名を受けているせいか、どこか態度に余裕がある。見せ付けると言った感じではないものの、やはり同行を求められる程に信頼されているのが解る。

 ――それがどこか悔しい。何故か自分達姉妹はどんどん彼から遠ざかっている気がしてならない。

 廣瀬悠理をこの世界に召喚し、スルハの街へきてまだ一週間弱……。

 出会いはついこの間だった。なのに――――悠理はどんどん前へ進んで行く。

 そのままこの手が届かない遥か彼方にまで向かって行きそうで少しだけ……怖い。

 自分達の都合で呼び出しておいて彼を一人っきりにはさせない。

 レーレやファルールが居るから大丈夫――――だとしても、それで言いハズがない。

 ――――ユーリの傍に居てあげるんだアタシが。戦うことは出来なくてもそれ位はしてあげられるハズよ。

 もう置いて行かれるのは嫌なのだと、自分の心がそう叫ぶのをカーニャは感じ取っていた。


「――で、どうしたんだカーニャ? もうグレフの許可は取ったんだから異論は受け付けないぞ?」

「異論あるに決まってるでしょ! アタシとノーレはどうすんのよ!!」

 カーニャの抗議に三人は顔を見合わせ――――。

「あっ」

『おー』

「ふむ」

 ――――リアクションから察するに揃って失念していたらしい。

「忘れてたっ!? 忘れてたのね! そうなのね!!」

「ね、姉さん、落ち着いて……。ほら深呼吸しましょう? ね?」 

 今にも悠理へと殴りかかって行きそうな姉を後ろから抱きしめて止めるノーレ。

 妹の助言に従い深呼吸を二度、三度……。繰り返すごとに冷静さが戻ってくるのを感じ――――。

「ワスレテタナンテ、トンデモナイ」

「何でカタコトなのよ! ――はぁ、そうやって煙に巻くつもりなのねユーリ?」

 ――――たところで、再び心を乱される。そうやってこちらの言い分を有耶無耶にしてやろうとの魂胆だ。

「まぁな、来たいなら別に止めはしないが」

「そう、それならこっちにも考えが――――って、は?」

 話を逸らそうとしていた悠理がその事実を認めた上で、信じ難い発言をした。唐突過ぎて幻聴の類かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

「付いて行っても良いんですか?」

 ノーレも同様の言葉を耳にしていたから、やはり聞き間違えではない。

 ――付いて行ってもいいのか自分達は?

 あれほど共に居たいと思っておきながら、いざ許可を得られるとどうしていいものか迷う。

 自由を与えられるのは何とも不便なことだ――と複雑な思いを抱きながらカーニャはそう思った。


「ああ、誰も来るな、なんて言ってないだろ? ――グレフは間違っても来るなよ?」

 カーニャ達の同行を歓迎するのと同じく、グレフに釘を刺すのも忘れない。

 彼には彼の役目があり、今は悠理達と行動を共にすべきではないのだ。

「解っているさ、ゆっくり後を追わせてもらうぞ」

 承知しているとグレフは頷いた。悠理が自分に何を求めているかは良く解る。

 それは即ち――――2000に及ぶリスディア隊の取り扱いだ。

 この人数をスルハに収容しておけるハズも無く、食料も蓄えこそあるもののとてもじゃないが長期間に渡って提供し続ける量はない。

 リスディア隊自体も余分に食料を持ってきているとは言え、どこかで補給をしなけば維持は出来ない。

 そこで部隊を幾つかに分ける。

 スルハから王都までは最短でも3つの街を経由する必要がある。

 先ずは悠理達が先行隊として街へ行き、後に兵士達が来ても大丈夫なように環境を整えてもらう。

 訊けばスルハと同じく、他の街も自警団レベルの組織はあってもちゃんとした戦力は特にあてがわれていないらしい。

 情報通りに王都が占拠されて居るのならば、他の街にも被害が及ぶかも知れない。そうなった場合の防衛手段として2000を分配するのだ。

 現在はマーリィが投降する際に機転を利かせ、スルハを無事占領したと誤情報を流していた。少なくともこれで数日の時間稼ぎにはなり、今すぐ敵が動くこともないだろう。

 このバレるまでの時間を有効に使う為、悠理は単独行動を申し出たのだった。 


「――本当に……良いの?」

 落ち着きを取り戻したら不安になったのか、カーニャが上目遣いで悠理を見つめる。

 それはまるで飼い主の言葉をじっとまつ子犬っぽさを感じさせた。  

「自分の身位は何とか守れるだろ? それに奴隷解放を目指すならこの戦いは経験した方が良い気もするしな」

 彼女の頭に手を乗せ、やや乱暴に撫で付ける。不安なんてこれで掻き消えてしまえと言わんばかりに。

 するとその想いが通じたのか彼女は嬉しそうにプルプルと震えだし――――。

「――――――――――――やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ――――盛大に喜びの声を上げた。近距離にいた悠理はモロに喰らった性で耳鳴りがして思わず耳を押さえてる。

「よ、良かったね姉さん……」

 喜びを精一杯アピールする姉に妹もどこか犬っぽさを感じて苦笑。

 ともあれ、これで自分達も共に行動出来る訳だ。

 ――やれることを精一杯やろう。自分の為に、そして彼の為に……。

 二度と置いてけぼりなど喰らうものかと姉妹は決意を新たにし、この戦いに身を投じる。

「とまぁそんな訳で、善は急げって言うし、今日中に支度を終えて明日には出発したいんだが。グレフ、誰か王都までの道案内を――――」

「ちょっと待つのじゃ! 何か大事な事を忘れてないかえ?」

 作戦内容を纏める為に話を進めようとした矢先に再びかかる待ったの声。

 今度は見た目も幼ければ、言動すらも幼い正真正銘のわがまま美幼女からだ。

 ――はて? 大事なことなど他に何かあっただろうか? しかも彼女に関連する様なことは何も――――。

「――――ああ! 良い子にお留守番してるんだぞリスディア。そしたらちゃんとお土産買ってきてやるからな!」

「わーい! やったのじゃー!――――って違うのじゃ!! 妾達も連れて行かぬか!」

 見事なノリ突っ込みに悠理は思わず感嘆し、リスディア弄りの面白さに目覚めそうになるのを堪えつつ話を続ける。

「子供を連れて行くのはちょっと…………ああ、保護者が居るから良いのか」

「子供扱いするでない! 妾にはお前を、ろう、らく? すると言う野望が――――ムグッ!?」

「――道案内なら私達が出来ると思いますが、如何でしょうか? それにエミリーも居ますから戦力の足しもなりますよ?」

 危うく本音と目的をバラしそうになった主の口を慌てて塞ぐ侍女。

 時既に遅しな気もするが、全く隠さず堂々とするよりはマシだろう。


「マーリィさんの提案に免じてさっき発言は聞かなかったことにしよう。マーリィさんの道案内とエミリーの戦力は正直魅力的だから、付いてきてくれるなら助かります」

 正直、内心では幼女に篭絡されるってのも悪くないかもなー、何て邪な考えがよぎったのは口が裂けても言えないことだ。

「では、その様に致します。それと親衛隊から10人ほど引っ張ってきてもよろしいでしょうか? それ以外はグレフ様の指揮下に入らせますが、連絡係やその他雑務に必要なのです」

 淡々と必要なことをハキハキと語る彼女の姿は仕事が出来る女そのもの。

 無論、その提案に悠理やグレフが異論を唱えるハズも無い。

 それから一時間ほど作戦内容を煮詰め、他に議論することがなくなりお開きとなった。

「さぁて、これから大変な事になりそうだから、しっかり準備してしっかり休んで明日に備えるぞ皆ー!」

 悠理の号令に各々が声を上げ、それに応える。皆、戦意は十分なようでどこか活気に満ち溢れていた。

 そしてこの日の夜、悠理はとてつもなく長い夜を過ごすことになるのだが、この時はそんな予感は微塵も感じられなかった。

 だが、それは表面上だけの話で、水面下では既に動いていたのだ……。

 ――――彼を狙う乙女達が一斉に動きを見せるのはこれから8時間後の事である。 


次回は――――どうしようかなぁ……。


番外編をそろそろ入れようかと思うんですけどね。


まぁ、気分次第って事で。

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