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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
50/3916

秘策と寝返りと誘惑?

ふぅ、とりあえず1ページ目は更新完了。


2ページ目までは行けそうな気がする!

――時は少々遡り、悠理とエミリーの想を絶する戦いから約5時間後……。

 グリガラッソ大平原にて、野営を始める集団あり。その正体は言うまでも無く、リスディア・ベルパルク率いるスルハ攻略隊本隊である。

 悠理が気絶した時点で、彼等は奪われた自由を取り戻していた。そうでなくとも最早彼の者は遥か彼方。既に能力が及ぶ範囲外だ。

 一行が去ってから程なくして、目が覚めた兵士達の大多数は何が起こったか理解出来ていなかった。

 それもそうだろう、認識する暇すら与えられずに気絶させられたのだから。

 しかし、先行していた1200の中でたった一人気絶せずに居た若いディーノス乗り――――最終的にレーレに倒された彼が必死に証言した。

 自分達を襲った存在が如何に化物染みていたか、どれ程の実力差があったが。

 最初は誰もが混乱しているものだと思った。悪い夢でも見ていていたのだろう、と。

 だがそれも、残りの600とリスディア親衛隊である侍女集団からの報告で一変する。

 ――悪夢とは現実でも起こり得ること。

 気付かぬ内に自分達が体感した事件に、ある者は恐怖を、ある者は生きていることに心から安堵した。

 こうして現在、本陣を襲われ指揮官であるリスディアが疲労していることもあり、一先ず今日の所はここで野営と相成った訳である。

 ――これから我々はどうなるのだろうか?

 誰かがそう不安を漏らした。不安はざわめきとなって加速度的に伝染を始める。

 任務に失敗してむざむざと帰れる訳も無く、かと言ってスルハに進行したとしても勝てる算段などない。

 この絶望的状況を打破する方法が彼等に思いつくハズはなく……。

 今回ばっかりはお飾りの指揮官の采配を待つより他はない。

 胸中の不安は増していくばかり――――だが、この数時間後に彼等は自らの運が尽きていない事を知る。

 そしてそれは、後にリスディア・ベルパルクが放つ唯一の名采配となり、自分達の運命を大きく、良い方向へ変えて行くことになるとは誰も予想は出来なかった。


――――――

――――

――


「ぐぬぬ……あの男許せぬのじゃ!」

 兵士達が野営の準備を進めている頃……。

 リスディアは自身の受けた屈辱を思い出し憤慨していた。侍女達によって既に失禁で汚れた下着は取替えられた――――と言うより焼却処分されている。

 そう、彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 本人が覚えていなかったのは尚更に都合が良く、レーレによる怪しい術で卑怯にも意識を奪われた――と言うことにしてある。

 それでも怒りの矛先が悠理に向くのは愛しペットであるエミリーを傷付けられたから。

 数年間かけて大きく成長した彼女の岩肌はボロボロで、自然治癒には時間がかかる。

 今は強度の弱くなった部分を切り捨てて、活動に必要な分だけを残す縮小化作業中……。

 この分であれば明日の朝までに復活できるだろうとのこと。

「ぐぬぬ、どうしてくれようか……」

 怒りに燃え、復讐を誓うリスディアの頭にはレーレから受けた忠告がもうすっぽりと頭から抜け落ちてしまっている。

 ――このままでは不味い。

 親衛隊隊長=侍女筆頭は仮面の下で皺を寄せ苦悩を続ける。

 状況は目に見える程に最悪、退く事も進む事もままならず、かと言ってこのまま悠理に何も仕掛けないのでは主の気が納まるまい。

 そこの所を上手く何とかする――それが幼い主を支える者としての勤め。

 兵士達はともかく、親衛隊の面々はリスディアを慕っている者ばかり。この傲慢極まる我侭娘の何処にそんな人望があるのかは解らないが……。

 それでも、こうして理解者が居るのには相応の訳がある、のだろう。

(さて、どうしたものかしらね……)

 あらゆる手を思考し煮詰めていくがどれも決定打足りえない。

 何か、何かないか? 問題解決の糸口を探し、我知れず焦りが募っていく。

「た、隊長!」

「何です? 今、考え事を――」

 思考を中断された苛立ちから部下に対して声を荒げそうになるも、手に持った一通の密書と肩に乗った一羽の鳥に目を丸くする。

 重要な連絡をする際に使う黒い紙。この紙には特殊な液体を使って文字を書かれており、とある方法でしか文字を読むことが出来ない。

 しかも、液体の配合率によって解読条件を変えられるなど機密性には持って来いの代物だ。

 そして部下の肩で羽を休める鳥は、言うなれば伝書鳩のようなもの。

 勿論、祝福を受けて変質した“ホルフィー”と言うノレッセア独自の種族で、伝書鳩とは比べ物にならないスピードで的確に文書を運ぶ事で知られている。


「貸して下さい……。お湯の準備をお願い、あとアミールの葉を五枚ほど入れてちょうだい」

「――ハッ」

 彼女の言葉に迅速に対応する侍女達もさる事ながら、紙から漂う匂いによって解読条件を看破した侍女筆頭も凄い。

 ちなみにはアミールの葉とは薬草の一種で、主に薬湯して使われ、高山病などにも有効とされるもの。

 つまり、今回はアミールの薬湯に浸すことで文書を読むことが出来る。

「準備、整いましてございます」

「ありがとう、それと――」

「――了解しました」

 目線のみの短いやり取りを交わした部下の侍女は、肩にホルフィーを乗せたままその場を去っていく。

 ホルフィーは頭が良い。言葉を発する事は出来ないが、何らかの方法で自分達の失敗が知られるかもしれない。

 今はまだ知られるのは訳には行かない、今後の身の振り方が決まるまでは絶対に……。

「――――まさか、これは……!」

 薬湯に浸した紙はふやける事無く、ピンとして秘められた文字を映し出す。

 書かれた内容に愕然とする、予想外の事態が起きたとでも言う様に。

「――いや、でももしかしたらこれは――好機なのでは?」

 ――閃いた。これだ、今回の危機を乗り越える為の秘策は。

 頓挫しかけていた作戦が一つのピースを埋め込む事によって機能し始める。

 欠陥品と思われたそれは勢い良く稼動し、ついには音を立てて存在を主張する。

 ――これだ、最早これに賭けるしかあるまい。

 静かな決意、分は決して良くは無いが、敗北も勝利も許されない現状であれば賭ける他ないのだ。

 侍女筆頭はそうして主の元へ向かっていく。

 この案が無事通る様に上手く丸め込む言い分を考えながら……。


――――――

――――

――


「――マーリィよ、今のは妾の聞き間違いかの?」

 眉をピクピクと痙攣させながら、再度侍女筆頭マーリィ・エルカトラに問う。

 この光景に侍女達も気が気でない。よりにもよって何故その案を出したのか?

 全く持って理解に苦しむ、筆頭はご乱心なされたのか、よりによって我等が主の最も嫌いそうな手を進めてくるとは。

「はい、聞き間違いではございません。我等スルハ攻略隊本隊は――」

 主の前で跪きながら、一切の動揺、恐れも無く淡々と述べる。

「――スルハに居るであろうあの男に降伏することを提案します」

 その場に居た親衛隊の面々が息を呑んだ。まるで自分の事の様に緊張感が走り、動くことすらままならない。

「どう言う了見じゃ?」

 ここで以外にもリスディアが冷静に対応、直ぐにでも癇癪を起こしそうな張り詰めた空気が幾分か和らいだ事に侍女一同はホッと息を吐く。

 マーリィはリスディアとの付き合いこそ短いが、彼女からの信頼を最も勝ち得て居る人物だ。

 如何に子供のままの無邪気さと残酷さを持つ彼女でさえ、マーリィを容易く切り捨てることなど有り得ない。

 ――――返答次第ではそれもどうなるか解ったものではないが。


「簡単に言いますと――()|返っ()()()()()()()()()

「フリじゃと?」

 首を傾げる主に肯定の頷きを返してマーリィ説明が始まる。

「現状、帰ることも出来ず、スルハに攻め入るにしては分が悪すぎます。ですから、我々はコルヴェイ王の元から離れ、あの男の下につきます――――が、先程も言ったようにフリです。もし、彼がコルヴェイ王にに太刀打ち出来る存在となるならそれも良し、ダメならば首を手土産に堂々と凱旋すれば良いのです」

「むぅ、確かに……しかし、あのおっかないちんちくりんやファルールが信用するかのぉ?」

 リスディアにしては良い指摘、確かにそれが問題点。現にこの計画はその問題点にぶつかって一度破棄したもの。

 だが心配は無用、解決策があるからこその意見具申。秘策は我が手に有り、だ。

「その点においては私に二つの策があります。お任せください」

「ほう? 何じゃそれは?」

 自信に満ち溢れたマーリィの声に些か興奮気味のリスディア。

 まるで歳相応の女の子が新しい物や煌びやかな宝石に目を輝かせている様だ。

 ――いや、実際にそうなのだろう。高慢で高圧的な態度から忘れがちだが、リスディアは年端もいかぬ幼女。

 こんな争いの世に生まれなければ、もっともっと平和的な事柄でその姿が見れたのかも知れない。

 ふと、マーリィはそんな風に思ってしまう――が、そんな仮定は考えても無駄と姿勢を正す。


「――一つはこの作戦を敢行するまで明かせませんが……。もう一つは簡単です。あの男を篭絡するのですよ」

「ろ、ろう、らく? 何じゃそれは?」

 どうやら聴いたことのない単語だったらしく、目を点にして頭上にはハテナマークを浮かべていた。

 団扇を仰いでいた侍女の一人が、彼女の耳元で解りやすく説明を始め、その甲斐あってかリスディアも納得してくれたようだ。

「ほうほう、つまりは妾の魅力であやつをメロメロにして奴隷にしてしまえ、と。そういう事じゃな!」

「え? えぇ、そうです、ね?」

 笑顔を浮かべる主と対称的に仮面の下でマーリィはしまったと言う表情。

 ――誰もリスディアにそんな身体を張った行動をさせようとは思っていない。身体を使っての誘惑と篭絡は自分や、もしくは親衛隊一同で何とかする予定だったのだが……。

 どうやら、もう少し段取りを確りと組まねばならなかったようだ。

「良し、許可するマーリィ! 今すぐ準備に取り掛かるのじゃ!」

「あ、いや、ちょっとお待ちを――――!」

 誤りを訂正するまもなく、リスディアの号令がかかる。

 こうなってしまってはもう止める術は無い。親衛隊の面々もそれは重々承知している。

(少し焦り過ぎましたか……しかしまぁ、リスディア様をそれとなく妨害しつつ、我々だけで篭絡作戦を行えばいいだけですね)

 失敗をしても直ぐ様思考を切り替えて、準備に取り掛かる。

 目指すはスルハに居る廣瀬悠理の元。

 グレッセ王国に圧力をかけていた部隊からの連絡。そこに記された驚愕の情報を、彼等が知るはずもない。

 この情報を手土産にこの場を乗り切る。これがマーリィ・エルカトラの秘策。

 果たしてこの策は見事に実を結び、数日後には悠理一行と肩を並べて戦うこととなる。

 ――が、この決断が後に世界を救う為の第一歩になろうとは、浮かれたリスディアもそれを見守るマーリィも知る由もない。

 今は唯、流れに身を任せるのみである。

うーむ、どうも土日は時間がある分、長々と書いてしまうな……。


まぁ、それはそれで良いんだけどさ。

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