表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
49/3917

嫉妬か不満か

よし、久々に本編更新じゃー!


悠理が目覚めるまであと2、3話位はヒロイン達がメインの話になると思います。

『――とまぁ、総てはユーリを思ってした事だろ。だから決してふしだらな行為って訳じゃ……』

 ファルールが気絶して一時間が経過。

 事情を察したレーレが彼女の行為を説明するまでにかかった時間だ。

 当の問題となった本人は、悠理に裸のままで抱きつき小さく寝息を立てている。

「――ほっ……」

 淫らなことが行われていなかった事実に安心を見せるノーレ。

 何故、安心しているかは本人も良く解っていなかったが……。

「むー、納得いかない……」

 言葉通りに不服そうにしているのはカーニャだ。頬を膨らませて不機嫌さを隠そうともしない。

 まるで、子供が要求を断られてむくれている、と言った感じ。

『あん?』

 何が彼女をそうさせるのか解らない。

 そう言いたげに眉を釣り上げるが、その態度にやはりカーニャは不満げ。

「アンタは良いのレーレ? ファルールに先を越されたのよ?」

『越された、って……何を?』

「キスよ、キ・ス! ユーリの唇を先に奪われたのよ? 恋する乙女としては悔しがるとこでしょうが!」

 どうやら、“レーレ()悠理が好き!”と言う方程式は彼女の中で揺るがないらしい。

 ――しかし、カーニャは知らない。この面子の中で誰よりも早く彼の唇を奪ったのはレーレであると……。

『――何で俺はダメ出しされてんだ?』

 無論、そんな事は露にも感じさせないポーカーフェイスを保つ。知られては面倒だ、色々と。

 唯、悠理とのキスを思い出して少し体温は上がったかも知れない。けれど、それを心地良いと感じるのは、カーニャの方程式があながち間違ったものではないと言う証明か。

 ――まぁ、そろそろ俺自身否定しきれなくなってるのは確かか……。

 頭をぼりぼりと掻いて溜息、何だか自分が扱い安い奴に思えて複雑な心境だ。


「ごめんなさい、姉さんって自分は経験ない癖に恋愛話に煩くて……」

『お前もお前で容赦ねぇな……』

 姉に対して酷な評価に少し意外、ノーレは彼女のフォローに回るかと思ったが……。

 どうやら出来る事と出来ない事がある様だ。

 再びカーニャに視線を戻すと、何やらキラキラした瞳で上を見上げていた。

「はぁ、良いなぁ……キス。私もしたいなぁ――ユーリは嫌だけど……」

 両手を組んで恋に恋するお年頃全開と言った様子。

 かと思えば、相手は選びたいと文句を述べる始末……。

 その言葉にレーレは少しむっとした。悪口とまでは行かないが、悠理の事に否定的なのは納得がいかない。

 ――確かに、髭がチクチクと当たって不快な感じはあったが……。

 しかし、それを差し引いても彼とのキスは非常に素敵なものだった。隙あらば何度でも奪ってしまいたくなるほどに。

 そう声高に主張したい気持ちをぐっと堪える。

『お前モテなさそうだもんな』

 結果出たのはそんな悪態、多分に棘が含まれていたのは否めない。恋する乙女の怒りはこんなものでは無いが、今はこれが精一杯。

 言葉が多ければ多いほど、込める想いが強ければ強いほどに、彼への思いの丈が明かになってしまう。

 今はまだレーレはそれを望まない、この気持ちをハッキリと口に出して伝えるのは悠理の前であるべきだ。そう、思うから……。


「はぁっ!? 何よそれ、500年以上も処女のお婆さんに言われたくないんだけどっ!」

 自分に魅力が無いと言われた気がして、ここはカーニャも引けない。レーレを煽るようにして言葉をぶつける。

 ついつい事実とは言え、女性に向けるにしては酷い言い草に彼女も黙っては居ない。

『テメェ……よりもよってババア扱いとは良い度胸じゃねぇか!』

 我ながら安い挑発に乗ってしまったと考える冷静さの一方で、こんな風に言われて引き下がる訳に行かない乙女の誇り(プライド)

 その二つが合わさってレーレを突き動かしていた。

「ふんっ、こう見えても故郷じゃ引く手あまただったんだから!」

『はっ、そんな絶壁ボディを好む奴がいるかよ!』

 胸を張って言うカーニャだが――――張るほどの胸など無かった。それも待ったくと言っていいほどに。

 レーレはそこを見逃さない。――いや、見ようによっては五十歩百歩。

 彼女もそこまでの大きさはない、でもカーニャに比べれば確実に、ある。少なくとも手で揉める位の大きさは。

 そこへ行くとカーニャは劣勢、この場で一番大きいノーレと比べれば二人は小さい部類。

 だが、同じ小さい仲間であっても、揉める揉めないの差は大きく、簡単に覆せる差でもない。


「なっ、胸は関係ないでしょ!?」

 顔を真っ赤にして両腕で身体を抱きし、徹底抗議。

 しかし、返ってその行動が自分を惨めにする。腕を組んだときに当たるであろう柔らかな感触は全く無く、むしろ肋骨が手に当たって痛いくらいだ。

 自身の身体そのものが事実を否定してくれなかった悲しみからカーニャは涙目。しかし、ここで折れては余計に惨めだ。だから彼女は徹底抗戦の構えを解かず言葉を紡ぐ。

「それに嘘じゃないわよ! 毎日毎日お見合いの話が――――」

「――姉さんッ!!」

 突如、場に響いた声にカーニャもレーレも動きを止める。二人とも驚きに目を剥く、何故ならノーレが。

 普段大人しい彼女が――――怒りの表情を浮かべて居たのだから。

 眉間に皺がより、歯を剥き出しにしている様は彼女らしくない。

 これには流石のレーレもたじろいで黙らざるを得なかった。同時に悠理がスルハの住人を黙らせた時のことが頭を過ぎる。

 あの時は何も読み取れなかったが、逆にここまで彼女から強い感情を感じ取ったのは初めてのこと。

 ――こいつはやっぱり何かあるな。

 無意識に警戒の推移を上げる、死神(じぶん)にここまで意識させる相手はそういない。

 出来れば取り越し苦労であって欲しいものだが……。


「わっ!? な、何よ急に……」

 ――と、レーレが考えに耽っている間にノーレはカーニャの腕をとって強引に引っ張って行く。

「良いからこっちへ来て……!」

 力任せにぐいぐいと、やはり普段の彼女からは及びもしない行動。

 姉であるカーニャですらたじろぎ、されるがままにズルズルと引きずられて部屋を退出していく。

 バタンッと、扉が乱暴に閉められ部屋に静寂が訪れる。

『――――ユーリよぉ、やっぱりアイツ等には何か秘密があるみたいだぜ?』

 息を吐きつつ未だ眠りに沈む愛しき人の頭を撫でる。

 返ってくるのは言葉では無く寝息のみ。

 ――ノーレの隠し事がお前を悲しませなきゃ良いが……。

 嫌な予感を抑え切れず、悠理の頭を撫で続ける。

 そんなレーレの気持ちとは裏腹に、彼は気持ち良さそうな寝顔を浮かべていた。


――――――――

――――――

――――


「私達の事は迂闊に喋らないでって言ってるでしょう?」

「わ、解ってるわよ……」

 悠理の部屋から遠く離れた廊下でノーレの説教が始まっていた。

 上から見下ろされ説教されているカーニャと、叱る側のノーレ。

 傍から見ればどちらが姉で妹か解らない。

 身長が高く身体つきも大人なノーレ、小柄で幼児体型なカーニャ……。

 外見だけで判断するなら間違いなく二人の立場は逆だろう。

「…………」

 今回は珍しくノーレも怒っている、彼女が誰かを無言で睨みすえるなど、姉ですら数回見た程度。

 怖い、恐ろしいと言うのもあるが、それよりもひたすら息が詰まる。ましてや相手は血を分けた妹。

 ――そんな目で見ないでよノーレ……。

 自分にとっての絶対的理解者が敵に回ると言う絶望的状況。

 そんな未体験の恐怖はひたすら彼女の心を締め上げ蝕む。

「――――ご、ごめんなさい……」

 普段あれだけ強気なカーニャもこれには根を上げた。ボロボロと大粒の涙を零しながら謝罪する。

 その姿はまるで両親とはぐれて迷子になった幼子のよう。

「もう……、本当に気を付けて下さいね……」

 そんな幼子をまるで母親の様にノーレが抱きしめる。

 少し言い過ぎた――そう後悔しながら。

 普段は自分を気遣い守ってくれて居る姉にこんな事を言うのは本位ではない。

 ――だとしても、そうしなきゃならない程に隠し通したい秘密もある。


「うん、気を付ける……」

 妹の胸の中でぐすぐすと鼻を鳴らしながら自分からも抱きつく。

 カーニャもカーニャで普段甘えられる相手が居ないのだ。

 こうして気持ちが弱っている時には誰かに身を委ねていたい。

 それが守るべき最愛の妹であっても――今だけは……。

「はぁ……、ユーリさんは特に問題ないみたいだし、お風呂にでも行きましょうか?」

 ぽんぽんと優しく背中を叩いて姉をあやす。

 昔は自分よりも背の高かったカーニャがよくそうしてくれた様に。

 クスリ、と思い出して笑う。いつの間にか自分はここまで大きくなってしまって、姉に甘える事は減った。それどころかこうして叱って、挙句には甘えさせる側になるとは……。

 不思議な感覚に戸惑いつつ、姉をあやす手は止めない。 

「……うん。怒ってる?」

 提案に賛成しつつ顔色を伺う。涙はもう流していないが目は真っ赤。

 本当に幼子の様だ、と柔らかな笑みを浮かべて。

「もう怒ってないよ」

「――――ホント?」

 そんなやり取りをして手を繋ぐ、かつて両親と共に四人でそうした事を思い出してノーレの胸がチクリと痛んだ。

 ――気付けば二人っきりになってしまった。どうしてこうなったのか? 考えようとして止める。

 今この手を握っていることは夢でもなければ幻でもないのだから。

 ――――今はこの手の温もりを守らなきゃ……。そうだよねお母さん?

 手を繋いだ姉妹はゆっくりと浴場へと歩いていく。

 入浴を済ませたら、きっと自分達の関係は元通りになっているだろう。

 少しだけをそれを名残惜しいと感じながら、どちらかが手に力を込めた。

 もうちょっとだけ、今はこの関係に浸っていたいと。

 そう、願うかの様に……。

とりあえず、今日はこれだけかな……。


執筆は続けますけど投稿は無理でしょうね。


番外編も幾つか書き始めてるんで、その内どこかで差し込むことになるかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ