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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
46/3916

復活に促進効果がある乙女のキス?

久々に文章書いたー!、って感じですね。


まぁ、相変わらずの技量ですが(苦笑)

『おー、待ってたぜファルール』

 ――――悠理達が帰還してから三時間後。

 未だ寝続けている彼の看病を交代する為にやってきたファルールは、何故か部屋の外でレーレの姿を見つけた。ドアにもたれかかって待ちくたびれたとでも言う様にあくびをかみ殺して、だ。

「レーレ? ミスターの看病についてたんじゃないのか?」

 自分と違って口には出さないものの、彼女は彼女なりに悠理を心配している。昨日の野宿でガールズトークに花を咲かせたから良く解る。

 そんなレーレが、彼の元を離れて自分を出迎えることなんて無いと思うのだが……。

『ん、今は眷属姉妹が看てるよ』

「何でまたそんな事に……」

 流石にたった一人残してこの場に居る訳ではない。そもそも、看病と言うのは建前で、本当の目的は護衛にある。

 可能性は限りなく低いが、今敵に攻め込まれでもしたらひとたまりも無い。万が一――いや、億が一にでも彼の身を危険に晒すなんてことは絶対に避けなければならない。 


『いや、ほら――――』

 何故か急にレーレがもじもじし始める。頬に赤みが差し、両手の人差し指をくるくると回転させながら恥ずかしそうに――。

『――アイツの寝顔見てたら、()()()()()()()()()、な……』

 ――そう呟いて唇を舌先でぺろり、と舐めあげる。危険なほどの妖しさを秘めた仕草。

 一瞬、彼女は死神ではなくて小悪魔系淫魔なのではないか?

 そう錯覚させるのに十分な妖艶さをチラリと、だが確かに覗かせた。

「…………良く我慢した――とでも言えばいいか?」

 何のことかは言葉にするまでもないので、ジト目で睨んでおく。

 実は昨日の野宿でも、悠理との口付けで感じた充足感を忘れられなかったレーレは、隙を見ては彼の唇を奪おうとしていた。その時はファルールと眷属姉妹で何とか止めたのだが……。

『う、うるせー! あんな中毒性があるものとは思わなかったんだよ! ――って、ん?』

 真っ赤になりながら逆上する彼女だが、ふとファルールの外見上に違和感を覚えて冷静さを取り戻す。

『何だ風呂上がりか?』

 髪がしっとりと濡れていたのだ。そこは別にいい、気になったのは風呂上り特有の()()()()()()()()()()()()()()()()()


「あ、ああ、先に浴びさせてもらった」

 ――しまった、と内心焦る。別に疚しいことなど何も有りはしないのだが……。

 ただ、やはり彼女に知られてはマズイ。自分が疚しさを抱いておらずとも、これからやろうとしていることは結果的に彼女を裏切ることになるかも知れないのだから。

「そ、それより、交代だ交代!」

『応、俺は外を警戒してくるからユーリの事は頼んだぜ?』

 無理矢理話を変えて注意を逸らしたが、返ってきた言葉にぎょっとするハメとなった。

「休まないのか?」

 眷属姉妹に看病を代行させていたとは言え、彼女はこの場から気を張り巡らせ、ずっと周囲を警戒していたはずだ。如何に彼女が高位の死神であろうとも、疲労を感じない訳は無い。

 ――いや、スルハ攻略隊本隊と戦った後もぴんぴんしていたのだから、この程度は疲れた内に入らないのかも知れないけれど。だが返ってきたのは……。

『色々と我慢した性でちょっと眠れそうもな――』

「解った、早く行け!」

 ――想像していたのと全く違った上に大分酷い理由だった!

 どうもリリネットの首飾りが原因で、普通の女の子として――――いや、確実にそれ以上の過激な思いをレーレは悠理に抱いてしまったようだ……。


『よーし、お前ら行くぞー』

『……ハーイ』

『アーイ!』

 ファルールが彼女の返事に重い溜息を吐いている間に、眷属達を引連れてレーレが場を去っていく。

「…………ミスター、入るぞ?」

 ノックはせずに、けれど一応は声を掛けてから部屋の中へ。

 ベッドの上には相変わらず眠り続けたままで居る主の姿。

 顔色は――――悪くはない。むしろ、血色は良い位だ。その事に安堵しつつ、ベッド脇にある椅子へ越しかけ溜息を一つ。

「ふぅ、レーレ達には何とかバレずに済んだか」

 服の上から右腕を押さえる。長袖の中から精霊石をあしらった腕輪がキラリとその存在を主張した。

「案外、聴いてみたらあるものだな……」

 リリネットの首飾りが相手から生命力を吸って力に変えるのであれば、逆もあるのではないだろうか?

 そう考えた彼女は屋敷についてからグレフを訪ねてみた所、その推測は的を得ていたと知る。

 ――リミエリアルの腕輪。

 それがファルールが右腕に着けた宝具の名。

 レーレが持つリリネットの首飾りは淫魔の力、対してこのリミエリアルの腕輪は()使()()()()宿()()()()()

 この腕輪に封じ込められた能力は首飾りとは正反対――――“自分の生命力を相手に分け与える”こと。


「――レーレと違って私はもう戦闘では役に立てそうもないからな……」

 あくまで本人がそう思っているだけだが、自分とレーレでは次元が違うのは明白。

 戦うこと以外で悠理の役に立つ方法が今の所は思いつかない――――これ以外は。

(どんな方法でも良い……傍に居ると決めた以上は私も貴方を支えてみせる)

 決死の覚悟、或いは献身を胸に宿してファルールは行動を起こす。

 腕輪の能力を使用する際の条件は――――。

 一つ、粘膜と肌同士の密着。

 二つ、使用者は出来る限り身を清めておくこと。

 三つ、これは天使の力を借りた神聖な儀式。であるからして、儀式中に快楽に流されたりしてはならない。

「で、では失礼する……」

 これらに従い、まずは悠理の上半身を裸にし、次にファルール自身は一糸纏わぬ生まれたままの姿になってベッドに潜り込む。

 すらっとしたその美しい肢体を忠誠を誓った主に覆い被せていく……。

「んっ、ふっ……んんっ」

 柔らかな乳房が男の逞しい胸板に触れ、そのまま強く押し付ける。彼女の鼓動が早鐘を打つのと同時、触れ合った胸から彼の鼓動も伝わって来た。

 トクン、トクンと、ゆるやかなリズムで、けれども確りと力強さを感じさせる音。

(ああ、何だろうこの愛おしさは……)

 聴いているだけで胸の中が暖かい何かで満たされていく。

 不純な気持ちなど一切無いと言い切れる。それ程に透き通った裏表のない感情。

 ――これが愛、なのだろうか?

 自分自身にもまだ解らないが、今感じているこれが愛情でないのなら、もう永遠に答えは謎のままな気がする。


「ミスター……私の命を受け取ってくれ」

 既に身体は()()()()()()()

 だから、最後の仕上げとして唇をそっと重ねた。――少しでも彼の力になれますようにと願いをありったけ込めて……。

「んっ、ちゅ……うむ……ちゅ……」

 祝福を奪われる以前の様に、力を使う感覚を呼び覚ましつつ、控えめに唇をあてがう。

 ついばむように何度も何度も繰り返して。

 その一回一回に、彼の身を案じる気持ちを込め続ける。

(確かにこれは中毒性が……)

 快楽に押し流される――と言う感じはしなかった。ただ、愛おしさからいつまでもこうして居たい気持ちがキスの度に膨れあがっていく。

(頭がクラクラしてきた、でももう少し……)

 全身から力が抜けていくのと、その力が唇を通して悠理の身体に流れ込むのがハッキリと伝わってくる。

「ふっ、むぅっ……ちゅっ」

 これが最後の一押し、名残惜しいがこれ以上は……。

「――ぷはっ! はぁ、はぁ、はぁ……」

 気絶する手前ギリギリで唇を離し、彼の胸に顔を埋める。

「これで、す、少しは足しになっただろう……」

 顔全体、耳まで真っ赤に染め上げて荒い息を吐く、このまま彼の胸でゆっくりとまどろんで居たい所……。

 彼を護衛する役目を忘れてはならない。

 ――まぁ、その割には限界まで生命力を与えてしまうと言う、後先を考えていたか疑わしい行動をした訳であるが……。

「い、いかん、こんな状態を誰かに見られ――――」

 急いでベッドから降りて着替えよう――――と頭の中では思うものの、身体が言うことを聴いてくれず、名残惜しさを引きずるように悠理の胸から離れることが出来ない。

 そして、やはりこれが致命的なミスを生む。


「ファルール~? ユーリの調子ど――――」

「姉さん、ノック位はしなきゃだ――――」

「あっ……」

 ――なんとも間が悪い……。

 外へ警備に行くレーレから、今はファルールが付いているから安心だと言われたが、やはり様子が気になって覗きに来たのがこの姉妹である。

「――う?」

「――――め、だ……よ?」

 時間が凍りついたような感覚。

 姉妹の目には裸の男女がお楽しみに興じている様にしか見えないわけで……。

 顔を赤らめつつ驚きに口を全開にするカーニャとノーレの思考は確実に止まっていた。

「ま、待て! これには色々と訳が……」

 慌てて状況を説明しようと、立ち上がろうとした――――()()()()()()()()()

(――しまっ)

 まだ身体に力の入りきらない状況で無理に立とうとしたものだから、態勢を崩してしまったのは当然とでも言うべきだろうか?

 しかし、もっと不味かったのが……。

「んっ、むぅっ」

 ――態勢を崩した拍子に再び悠理の唇を奪ってしまったことだ。

 しかも、この時ファルールはうっかり能力を発動。

 かろうじて残っていた体力は全て悠理のな中へと送られ、唇を重ねたまま目を回して気絶した。

「な、ななな――――」

「――――あぁ……」

 そんな事とは知る由もない二人。

 カーニャは案の定の怒り顔、ノーレは刺激が強すぎてその場に倒れ込む。

 妹が完全に床に突っ伏したところで姉の怒りが頂点に達し……。

「――――何してんのよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 怒号となって、いつぞやと同じようにグレフ邸を揺るがしたのであった……。

 ――この後、嫌な予感がして戻ってきたレーレが大体の事情を察して滅茶苦茶説明した。

うおー、疲れたー。


手直しは後回しにして寝るぞー!

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