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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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番外編・自由の使者と束縛の暴君

やっぱり体調が悪いらしく、本編ではなくて番外編を書く事にしました。


 ――これはエミリー戦の後、廣瀬悠理が永い眠りについていた時のお話。

「……あれ? ここは何処だ?」

 気が付くと彼はSMチックな怪しい部屋にいた。壁には縄、鎖、首輪、鞭がいくつも飾られていて、蝋燭やギロチン台、三角木馬なんかも揃っていた。

「何で鋼鉄(アイアン)処女(メイデン)は無いんだよ!」

 怪しい部屋に悠理の突込みが虚しく響く、ここまで拷問に使えそうな物があらかた揃っていると言うのに何故か鋼鉄の処女は無かったのだ。あまりにも有名な拷問器具が欠けていた事に些か残念な気持ちになる。

 いや、あったからと言ってテンションが上がる代物でもないが。

『何でってそりゃあ、エロい事に使えねーじゃんアレ』

「――――ッ!?」

 SM部屋に突如悠理以外の声が響く、さっきまでは誰も居なかった。それなのにまるで始めから存在していたかの様に青年と玉座が部屋の中央に現れている。

「――その意見には激しく同意だ……が、テメェは誰だ?」

 警戒しつつ距離を取り、能力を発動――――出来ない。その事にさしたる驚きはなく、そもそもここは夢の中で、目の前に居る男の領域だと考えれば自然なこと。

 とりあえず、能力に頼ることは一旦諦め別の手段を探る。その時間を稼ぐ為に会話(トーク)


『あー、俺? そういや、まだ考えてねーわ。お前が自由の使者ってんだから――』

 玉座に座りぶつぶつと考え事をし始める男。黒の短髪にほっそりとしているが逞しい顔付き、髭はちゃんと剃っている。イケメンとは程遠いナリ……。

 そこでハタと気付く、()()()()()()()()()()()()()()?、と。

『おし、決まった! 俺は“束縛の暴君”。初めましてだな、()()()()

「なっ!? まさかお前は――――」

 髪型が違うのと髭が無いこと以外は彼はまさしく廣瀬悠理の顔をしていた。

 強いて言えば肌が褐色である事が最大の相違点か。

『そうさ、俺はお前の裏側。自由を司るお前とは反対に、俺は束縛を司ってる』

「ふーん、それで俺に何の様だよ?」

 最初こそ驚いたものの、悠理は既に彼の存在を受け入れていた。物事には必ず裏表がある。なら、自分の裏側があってもおかしくない。何より、自身の能力は破格過ぎる。それを考えれば、何が代償であっても驚くことはないだろう。

『チッ、それだよそれ。あー、もうやんなるわー』

 裏側が不機嫌そうに舌打ちと思ったら、今度は玉座に座りながら脱力。ぐでーっと、両手両足をだらしなく伸ばす。表情からもやる気の無さが伝わってくるかの様だ。


『定番だとさ、俺がお前を乗っ取ってやるー!、って感じになるじゃん?』

「まぁ、そうなるわな」

 実際に定番かどうかは良く解らないが。何せ悠理にとっても初めての経験な訳であるし。

 ――が、話が進まないのでこのまま解ったフリを続行。

『でもさ、お前はもう既に自分の反対側――――醜さとか欲望とか傲慢とか負の感情ってヤツ? それも全部受け入れちゃってんのよ』

 言われて悠理は首を傾げる。理想としてはそう、清濁併せ呑むことが出来て初めて人生とは光り輝くもの。嫌なものを避けて通りたい気持ちも無くはないが、そんなものは先延ばししているに過ぎない。

 いつかやらねばならないなら、いつか受け入れなきゃいけないのであれば早い方が良い。自論としてはそうなのだが、実践できているかと聴かれるとイエスとは言い難い現状だ。

『そういう考え方に達して意識してる時点で、大体実行してるようもんよ』

「ふーん、で?」

『だからさ、お前がそう言う気持ちで居ると俺って表に出て行き辛いのよ』

「あー」

 ぽんと手を叩き納得。成程、既に自分は無意識下で彼を抑え付ける事に成功している訳だ。


『まぁ、お前の場合は力を使いすぎても危ないんだがな……』

「えっ、そこんとこkwsk!」

 初耳の情報に思わず飛びつく、何せ悠理は能力のことは理解していても由来を知らない。

 それはだけは推測、推論では答えを導き出せない事柄だった。

『ヤダネー! ま、お前が俺を受け入れてる時点で、裏も表もあってないようなモンだから、乗っ取りたくても出来ないんだがな』

 そう言って豪快に笑う束縛の暴君。何やら爆弾発言を聞いてしまった気もするが……。

『今回は警告も兼ねて挨拶しとこうと思ってな』

「警告?」

『あんま力使い過ぎんなよ!、ってな。お前がどうにかなっちまったら俺もやべーんだからよ』

 あくまで自分の心配を優先している様だが、相手が自分の裏側なだけに結局は悠理を心配している様にも取れる。それがどこか可笑しくて悠理が笑う。

 ――自分自身に心配されるのっては妙な気分だ。

「ん? つーか、力使い過ぎたらどうにかなっちまうのか?」

『背中のヒビ、確認したんだろ? アレは俺にも訳が解らん代物なんだ。お前の能力をKwsk知ってる俺ですらな』

 この発言の重要さに悠理も表情を強張らせた。自身の知らない部分まで知り尽くしているであろう影の存在――――彼が知らないと言うのであれば、それほどに危険なことはあるまい。

 ――だが。


『まぁ、自由人のお前には言っても聞かねーだろうがな』

 苦笑する己の裏側――――束縛の暴君。

 どうやら自分は今後とも彼の悩みの種となるらしい。それは自分自身を困らせる事にもなりえるので遠慮したい所ではあるが。

『とりあえず、今回はお開きだ。さっさと戻ってやりな』

 パチンと指を鳴らす。すると見る見る内にSM部屋がその輪郭を崩し消えて行く。

 それは彼も同じで、ボロボロと光の粒になって空間に溶け始める。玉座に座ったままで暴君は笑う。

 次に会う時は逆の立場で会いたいものだ、と。

 彼の姿が完全に消えて行くと同時に悠理にも覚醒の気配。

 夢から覚める時のあの感覚――浮遊感に身を任せ上へと昇っていく。

 果たして、自分は彼に肉体の主導権を渡す日は来るのだろうか? 背中のヒビは一体何を意味しているのか?

 考えておかねばならない事が増えてしまったが、知らないよりは良い。

 そう思いながら苦笑すると、いつも通りに眠りから覚める感覚が訪れて……。

 ――――そうして悠理は夢の世界から帰還を果たすのだが……。

 起きた時にとんでもない事態になっていて、珍しく狼狽したのはもう少し後の話。

さぁ、もう一人の悠理が登場した訳ですが彼の出番は今後ありません。


番外編ならともかく、本編にはあまり関わらないんじゃないかな……。


まぁ、表舞台に殆ど出ないって理由でこの話は番外編になった訳なので。


後はひとえに俺の気分次第かナァ……。

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