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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
42/3916

帰還と説教の先延ばし

一先ず書き終えたので投稿!


手直しは、また今度ね!

 ――スルハ攻略隊本隊との戦闘から一日と数時間後。

 未だ気絶したままの悠理を背負ってレーレ達がスルハに帰還したのは日が暮れ始めた頃……。

『あっ、ファルールどのー! レーレどのー!』

 夕闇に浮かぶ無骨なシルエットが手を振る。正門の警備にあたっていたモブアーマーだ。

 ガシャガシャと身体中から金属音を響かせ一行を出迎える。

『おお、モブアーマーじゃねぇか。出迎えか?』

『出迎えか?――じゃないでありますよ! 皆さんが居なくなってからカーニャどのがカンカンで!』

 身振り手振りで彼女の恐ろしさを伝えるがレーレは笑ったまま。それを見てファルールも苦笑。

 いきなり皆を置いて自分達は戦闘へと出向いたのだから、そこには当然、怒りや寂しさと心配が入り混じっていることだろう。

 申し訳ないとは思うが、あのままスルハで篭城戦を行うよりは被害は最小限で済み、尚且つ悠理とレーレは能力を最大限に生かす戦いが出来た。

 彼等の実力を考えれば街の中で戦っていても勝利は確実。だが、どうしても建物が邪魔で自由には動けなかっただろう。それに万が一エミリーを街の中で暴れさせでもしたら取り返しのつかない事態になっていたハズ。

 それらを考えればこの本隊強襲作戦は最も安全な策であったのだ。


「――だが、作戦は果たした。これでスルハも暫くは安全だろう」

『本当でありますか!? では早速報告に行って来るであります!』

 彼女等が帰還した時点で既に察しはついていたが、実際に報告を聞けば胸が高鳴ると言うもの。

 ――――いや、モブアーマー達には心臓は無い訳であるが。

 兎に角、喜びを顔に出せない分は身体全体で表現してモブアーマーが街へ走って行こうとする――――が。

「その必要は無いわよ!」

 今まさにモブアーマーが向かおうとした方角から小柄な影が近づいてくる。

 二つに分けた髪が尻尾の様に揺れる少女……カーニャだ。

 その表情は怒りに震えているようで、今にも叫びだしそうな雰囲気すらある。

『おー、元気だったかカーニャ?』

 足音荒く向かってくる彼女にレーレはあえて普段と変わらぬ調子で帰還を告げるが、カーニャの怒り顔は変わらない。

「お陰様でね! さぁ、さっさと屋敷に来なさい! 説教して上げるわ!」

 憤懣やるかたない様子で叫ぶ。そのおっかなさに怯えたモブアーマーがアズマの影に隠れ小さく震えていた。

 悠理達が本隊強襲を敢行してからずっとこの調子……。彼等がいなくなって僅か一日半の間に、何度この声を聞いた事か……。

 既に黒光りするその鉄の身体には本能レベルでカーニャに対する恐怖が染み付いているようだった。


『まぁ、終わりよければ良いじゃねぇか』

 だがレーレにその剣幕は通じない。肩を竦めて怒声も怒気も受け流す。元からこうなる事は彼女もファルールも予測済み。堂々と構えていれば良いのだ。例えこちらに非があると解っていても。

「良い訳ないでしょ! それにユーリ、アンタはもう少し勇者らしい行動を――」

 言いかけてやっと気付く、自分が一番説教してやりたかった男がレーレの背中でぐったりとして動かないことに……。

 死んだ様に眠るとはまさにこの事で、エミリー戦後はビクともせずこうして眠り続けている。

 頬を抓ったり鼻をつまんだり、ファルールと一緒に耳に息を吹きかけても……様々な方法を試したが彼が目を覚ますには至らず……。

「――ユーリ? ねぇどうしたの大丈夫!? ユーリってば!」

 身体をゆすって必死に語りかけるが悠理は反応しない。カーニャから先程の剣幕は当に消え、不安一杯になりながら彼の無事をひたすら願った。

 ――いや、モブアーマー達や街の住民の手前、ずっと気丈に振舞っていたが本音は心配で心配で堪らなかったのだ。それこそ、度々一人になっては彼等の無事を必死に祈り続けるほどに……。


『お、おい、揺らすな! 落ちる落ちるー!!』

 ディーノスの背はあまり広くは無い。群れの長たる角付きのアズマは通常種より体格がでかいが、それでも二人乗りしていられるのはレーレが小柄だからだ。そんな狭いスペースでこうも激しく揺らされれば如何に手綱を強く握っていようとバランスを保つのは難しい。

「カーニャどの落ち着いて、ミスターは少し疲れて寝ているだけだ。心配は要らない」

 実際にどれ程寝続けているかは口に出さない。話してしまえばより混乱は増すだろうから……。

「そ、そう……。はぁ、脅かさないでよ、もう……」

 彼女の配慮はどうやら成功したらしく、カーニャは安心してそっと安堵の息を吐く。

『そんなに心配だったのか?』

 彼女にだって解っているハズだ。お互いに付き合いは短くとも廣瀬悠理は自由人……。

 自分で決めた道をひた走って行く。そこに恐れも迷いも無い。障害があれば超えて行く……。

 そう言う人間なのだから、最早“信じる”以外に自分達が出来ることは無く、心配するだけ無駄なのだ。

 ――とは言っても、それはレーレとファルールの()()()()だけの話。

 戦う術もあり、彼の行動を理解し傍に居れる自分達とカーニャは違う。

 解っていても質問するより他にない。何故なら――――。

「当・然・で・しょ! 気が気じゃなかったわよ……。兵を率いて援軍に行くわけにもいかないし、アンタ達が失敗した時の事も考えなきゃならないんだから……」

『そうだ、お前はそれで良い』

 ――――彼女には彼女の役割があり、それを果たせるかどうかを見極めなくてはならないのだから。

 

「――どういう意味よ?」

『言葉通りだよ。ユーリを止めるのがお前の仕事だが、コイツが居なくなった時はお前が確りしなくちゃならねぇ』

 彼がこの世界から居なくなった時、恐らく自分はカーニャ達の元には居るまい。

 この一行に協力している目的はあくまで悠理にのみある。ファルールがどうするかは解らないが、彼が居ないのならばレーレが力を貸す理由は無い。

 であれば、今の内にカーニャを鍛えておく必要がる。

『ユーリは――カーニャ、お前に期待してるんだよ』

「――コイツがそう言ってたの?」

『ハッキリ言葉にしなくったって解るさ。俺にはな……』

 それは一昨日の()()が原因。あの時、レーレは悠理の“生命神秘の気”を吸収して力を回復させた訳だが……。生命エネルギーと共に彼の思いの一部も流れ込んでいたのだ。

 カーニャにはこれから先、皆のリーダーになって欲しいとの期待。

 ノーレにはいつか夢を見つけ、叶えられるようにとの願い。

 レーレには長い間一人で居た分、出来る限り一緒に居て、甘えさせてやりたいと言う恋愛感情ともまた違う愛情に近いなにか。

 ファルールにはどんな困難にも二度と屈することのなく、故郷復興をやり遂げる勇気を持って欲しい。

 悠理が出会った人達へ抱いたそんな熱い思いが断片的にではあるが、レーレの中に確かにある。

 最初は戸惑って次に酷く照れた。自分の事を深く思ってくれていると言うのはとても嬉しいことなのだと……。

 気付けば頬は緩んでいて、慈愛をその目に宿しながら背中に感じる重みを噛み締める。

 ――ああ、誰かの重みとはこんなにも心地良いものだったのか……。


「む、アンタ達なんかあったの? 何処と無く良い雰囲気なんだけど……」

 純情乙女のカーニャが二人の変化を目ざとく察知する。正しくは彼に対するレーレの気持ちが飛躍的に高まっただけで、彼女達の関係が進歩した訳ではないのだが……。

 それでも変化は変化、しかも良い方向への。

『い、いや、何もなかったって! なぁ、ファルール?』

「あ、ああ、何も疚しいことはないぞ?」

 問われて彼女達が思い浮かべたの言うまでも無く()()

 寝ている間に悠理の唇を奪ったあの件……。それも艶かしくも濃厚な暑く激しいキス。

 思い出したらもう大変だった。顔は真っ赤になり、挙動も完全に怪しく、目は泳ぎっぱなし。

 当の本人だけでなく何故かファルールまでその有様なのだから、当然カーニャにもバレてしまっている訳で……。

「――ふーん、まぁ良いわ。その辺りの事も屋敷で詳しく聴くから」

 二人の言い分は全く信用していない――がそれは落ち着ける場所でゆっくり聞けばいい。

 何しろ彼等が無茶をしたお陰で時間はたっぷりと出来たのだから……。

『……やれやれだな』

 墓穴を掘った、それも盛大に。だが何だかんだで彼女は追及してこない気がした。

 それよりも先にありがたい説教が待っているのだろう。

 そう思うと、助かったのかそうでないのか複雑な気分ではあるが……。

「まぁ、ミスターの分も我々が説教を拝聴しようではないか」

 肩を叩いて苦笑するファルールに、『うへぇ』と嫌そうな顔をして二人はカーニャの後に続いて街へと入って行く。

 家に帰るまでが強襲作戦、だから今ここにようやく戦いの幕は閉じたのだろう。

 一先ずの休息である。だが皆解っている、休んでいる時間はあまりないのだと。

 その予想が現実となって押し寄せてくるのはこれから二日後の事であった……。

今日中にもう1ページ行け――るか?


が、頑張ってみるか……。

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