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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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形の無い未知数のチカラ

 不安が無いと言えば嘘になる。

 危機的状況を前にして、胸の奥へ厳重にしまい込んだ恐怖(かんじょう)を肯定。

 されど、決して表には出さぬ。

 自分は勇者だ。自分はそんなガラじゃないと断言するが。

 ――けれども。

 ――背後で泣く少女達の前では。

(――――なってみせるさ)

 彼女達の望む存在(ゆうしゃ)に。

 だから一歩を踏み出した。

 眼前には宙を漂う異形。

 名を――死神。

 人の魂を刈り取る存在。

 人の絶望を好物とする悪趣味な奴。

 手には巨大な処刑鎌。

 ギラリ、と光る刃に思わず身震い。

 ――いや、これは武者震いだね。

 自分をそうやって鼓舞(だま)して宣戦布告。

 さぁ、俺の自由を摘み取ってみろ、と。


――――――

――――

――


 死神は困惑した。

 コイツは馬鹿か?、とすら思った。

 いや、間違いなくそうだ。

 何の根拠もない癖に自信満々。

 見え見えの虚勢。

 ――だと言うのに。

(コイツの身体から出始めてるアレは――何だ?)

 命を刈り取る存在である死神には、生物が放出するエネルギーを可視化する力がある。

 カーニャ達を祝福喪失者(ギフトルーザー)と見破ったのはこれによるものだ。

 祝福が放つエネルギーの色は白銀。

 これが喪失者になると白色に変化する。

 一定以上の強力な祝福を持てば黄金に。

(何だーーありゃあ)

 最初、悠理の身体から出ていたのは白色。

 勇者として召喚されたにしては前代未聞。

 だが、『そう言う事もあるんだろう』と位にしか死神は考えなかった。

 ――それは大きな間違いだった。

 今、悠理の身体から立ち昇っているのは虹色の光。

(見たことも聞いたこともねぇ……。俺の目が狂っちまったのか?)

 一歩、また一歩。あの男が近づいて来る。

 その度に虹色の光が溢れ出し、周囲を漂う。

『――――――ッ!!』

 無意識に死神が空中で一歩後ずさった。

 あの光が身体に触れそうだったからだ。


「おいどうした? 腰が引けてるぞ死神?」

 そうさせたのは自分だと自覚があるのか無いのか、悠理の表情からは何も読み取れない。

 ――光が一段と激しさを増した。

 だと言うのに、攻撃をしてくる気配はない。

 まだ能力を把握していないのか? やはりただのハッタリか?

 いずれにしてもこれは好機(チャンス)だ。

(第一によぉ……)

 何で俺がこんなビクビクしなきゃならねぇんだ?

 見たことも無いエネルギーの色に気圧され気味だった気分が落ち着きを取り戻す。

 次いで怒りと苛立ちがマグマの様にグツグツと煮えたぎる。

 ――怯えるのはお前のハズだ。

 ――死神である俺じゃねぇ!

『例え虹色の光(ソレ)が何であろうと――』

 ここで初めて戦闘態勢を取る死神。処刑鎌を掲げ、両手で確りと握り締める。

 そして――祝福発動(ギフトアクション)

 刃に視認出来るくらい解り易く強力なエネルギーが収束する。

 直撃すれば死あるのみ。掠っただけでも生命力を吸い取り肉体を蝕む呪い付きの一撃。

『テメェの首ごとブった切ればいいんだろうがぁッ!』

 人の絶望する瞬間を楽しんで愉しんで堪能してから殺す。

 本来の死神の姿はそれだ。

 ましてや、相手は祝福を持っていない出来損ない自称勇者。

 じわじわと嬲って殺せば良い。自分になら造作も無いこと。

 なのにどうして勝負を急いだのか?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その事実を認識することさえ出来ないまま。

 いや、認識する事から拒絶(にげだ)して。

『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』

 鎌を振りぬいた。

 圧縮された死のエネルギーが黒い刃となって悠理の首を刎ねるべく飛ぶ。

「逃げてユーリーーーーーーッ!」

 カーニャの絶叫も空しく、刃は狙い違わず直撃――――――する瞬間。

(――――え)

 ノーレは確かに見た。

 悠理が右拳を刃へ叩きつけたのを。

『なっ』

「ひ、光が――」

 直後、眩い虹色の光が爆発して―――――――――――。


――――――――――

――――

――


「……うっ、一体何が……?」

 数秒後、光が収まりカーニャ達の視界が回復した頃。

 目に見えて異変があった。

『……テメェ、何……しやがった……?』

 死神が地面に倒れ伏していたのである。

 その表情は怒り半分、驚きが半分だ。

 あらん限りの力を込めても身動き出来ない。声を絞り出すのさえやっとの有様だ。

「――ああ、なるほどね」

 正拳突きの構えのまま悠理は頷き、パッと拳を開く。

 まるで今まで握っていた手綱を離す様な仕草。

「もう動けるだろ?」

 確信を持った言い草だった。そんな風に言えるという事は。

 動きを封じていたのは他ならぬ悠理であり、その()()()()()()()()()証拠だ。

『……!』

 認めがたい事実に気付いた瞬間、死神は姿を消した。

 逃げたのではない。確実に仕留めなければならないと感じたからだ。

 ――指一本動かせなかった。割りと長い間生きてそれなりに強敵とも戦ってきたが……。

 今まで体感した事のない部類のチカラだ。

 自身の知識を総動員しても見当すらつけられないとは……。

 姿を消し、相手の出方を伺う。

 悠理はじっとその場から身動きしていない。

 見えていないのか、それとも見えていない()()をしているのか。

 ――――仕方ねぇ、全力だ。

 ちょっと古い契約に従って力を貸し、その駄賃を貰いに来ただけだったハズ。

 なのに全力で戦うなんて割に合わない。

 だが、死神はこう思い始めていた。微かな不安が原因か、単に未知の存在に警戒し慎重さを表したのか……。

 ――負けて何にも得られないのはもっと割に合わねぇ……!、と。

 透明状態のまま鎌を構えて祝福発動(ギフトアクション)

 自身の眷属を11体召喚。勿論、感知されない様に姿は自身と同じく透明で。

 眷属達を悠理の周囲に配置。死神自身は真正面へ。包囲陣が完成する。

 鎌を構えた――眷属達もその動きに感応する。踏み出そうとした瞬間、視線を感じた。

 方角は――真正面。

(コイツ……やっぱ見えてるのか?)

 見られている感覚があった。真っ直ぐにこちらの目を覗き込んでいる、と。

 錯覚か?、と考えたがそうでもなかった。

「…………」

 ()()()をされた。

 属に言うかかって来いのポーズ。

『――――へっ』

 笑う。何の邪念もなく。

 久々に面白い出来事に遭遇出来た。

 どこか晴れやかな気持ちを覚えながら――。

 ――死神と眷属達が突撃した……!


――――――――

――――

――


 姿を消した相手に対し悠理は思う。

(――――困った事になった……)

 視認出来なくなったからではない。()()()()()()がつかないからだ。

 死神の予想通り、悠理は自らの持つ能力を理解し始めていた。

 いや、()()()()()()()()()()()()と言うべきか。

 この世界に呼ばれカーニャ達と出会い、死神と遭遇するまでの短時間を振り返る。

 カーニャとノーレと直ぐに打ち解けた自分。

 こうは思わなかったか?

 彼女達を安心させられる存在になりたい、と。

 死神から二人を守る為に一歩踏み出した時、こう願わなかったか?

 彼女達の望む存在(ゆうしゃ)になりたい、と。

 そして、今の自分を照らし合わせてみる。

 表には出さなかったものの、当初は確かにあった死神への畏怖。戦う事への恐怖。

 ――それが今はどうだ?

 恐れは微塵も無く、率先して戦おうとすらしている。

 廣瀬悠理は断言する。

 自分は―――――――()()している。

 最早、自分は唯の平凡な成人男性などではなくなっている。

 かと言って、超人になったとは思わないが。

 

 ――話を戻そう。

 彼が自身の能力で困ったこと、それは――――。

(攻撃手段がないな……)

 死神の攻撃を無効化し、動きを封じたのも攻撃ではない。

 より正確に言えば、殺傷力がない。

 自分の力が推測通りであるならば、殺傷力のある攻撃を行うことは不可能だ。

 あるいは間接的にダメージを与える事は可能かもしれないが……。

(流石に命を奪う覚悟までは出来てないぜ……)

 相手が明確な敵であると言っても一つの生命だ。

 それを奪う――殺す。考えるだけでゾッとする。

 反対に『ああ、良かった』と、安心する自分もいた。

 息をする様に自然に相手を殺そうと思考するまで変質しちゃいないらしい。

 ――今は、だが。

(とりあえず、褒められた攻撃方法じゃないがやるしかなさそうだ)

 頭に浮かんだ戦法が相手を無効化する唯一の手段と断定。

 実行に移すべく両の眼に力を込める。

 一瞬の内に視界が虹色に切り替わる。死神の姿は見えない。

 だが、それでいい。自分が視認すべきものは死神じゃなくて別のものだ。

(なんか、数が増えてるな……)

 同じく姿は見えないが11体の存在を感知。死神本体は――真正面。

 大体そこに居るんだろうと見当をつけて手招き。

 いつか映画で見た俳優の動きを真似て。

 ――さぁ、かかってきやがれ!

 廣瀬悠理は傍から見れば絶望的な戦いの火蓋を切った。

あれ?


予定では死神と決着つくまで書くハズだったのに……。


なんか書いておきたいこと一杯で長くなってしまいました(苦笑)


次回で死神戦は終わる!――ハズ……。

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