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世界を眺める彼方の虹《深夜勤務マン・暫定》
『何をするにしても準備が要りますね。暫くお寛ぎください』
ゼ・ハが指を一つ打ち鳴らすと暗闇からぼんやりと浮かび上がる様にしてソファがせり出してきた。特に警戒心を抱くこともなくソファに座ると、彼女は例のコーヒーを出してきたが、首を振ってそれは固辞した。
『そうですか』と、無感情に応えてゼ・ハは部屋の暗がりに消えていく。姿が完全に見えなくなったあたりで扉を開く音がした。どうやらこの暗黒空間にしか思えない場所は一応部屋としての体裁を保っていたらしい。