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たったひとつだけ、かなうなら2《深夜勤務マン・暫定》
ユーリは情けないと思いながらも、未練を抱かずにはいられなかった。
――この手を離さなくてはいけないのだろうか?
普段の彼なら、どれだけの痛みを伴おうとも決断し、決別したのかも知れない。過去は過去だ、と。
だがこうして実際に未練が形となって目の前に現れるとどうだろう? 人と言うのは感情に左右される生き物で、過去の思い入れが強ければ強いほど心揺らいでしまうものなのかも知れない。
例え……今の全てと引き換えにしても?
『――ッ』
ハッとして、彼女と繋いでいる手とは反対側を握りこむユーリ。