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たったひとつだけ、かなうなら《お出掛けマン・暫定》
――たったひとつだけ、かなうなら……。
誰しもが何かの瞬間、望みを込めてそう願う。
それは最期の瞬間かも知れないし、決着をつけようとする瞬間なのかも知れない。
胸に秘めた思いを解き放つ――誰もがそうできるわけではないし、多くの人が伏せたままにする事も多い。
ユーリもそうだったし、彼女もそうだった。
解っている別れが直ぐ遠くない未来に待っていたから、二人は思っていてもお互いに願いを告げる事もなく、望みを託したりできなかった。
“死”と言う別れは余りにも大きい隔たりであったのだ。