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わらってまたあしたって《深夜勤務マン4・暫定》
『……』
『……』
夏の黄昏時。二人は無言で歩いた。どちらともなく、手だけはしっかりと繋いで。
何処からか聞こえて来る虫の声は妙にリアルで。けれどもこのシチュエーションは経験のしたものではないのだから、強烈な違和感を誘う。
ただ、繋いだ手の温もりは偽りだと切って捨てるには手放しがたいものだった。
例え、それが瞬きするほどの一瞬の夢だと解っていても。
――嗚呼、未練だな。
ユーリは表へ出さない様に心の中で血を吐く様に呟く。