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きせきは《深夜勤務マン3・暫定》
――奇跡は起こらない。
ユーリが抱えている特大の失望を言葉にすればそうなる。
起因としては間違いなく彼女との出来事に端を発する。彼女を救うことなどできなかった。術もなく、力もなく。ただの一般人――いや、あの並行世界おいて“象徴”の、それもその“死”と直接関わって無事で居た時点で彼の特異性は明らかなのだが――少なくともあの時は何の力もなかったのだ。手を出す権利すらなかったのかも知れない。
だからこそ、何も出来なかった、する事が出来なかったという失望は大きい。自分自身にも、世界に対しても。