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止まらない人の背中を追うという事4《早出深夜勤務マン2・暫定》
「――――ッ⁉」
――サキ・サトミは悪夢に魘される様にして飛び起きた。乱れる呼吸、激しい動悸、身体中に感じる汗……。嫌な状態の三拍子が出揃った彼女は徐に枕を掴んで眼前へと運び、無言でそれを叩き始めた。
ぼすっ、ぼすっ、と。軽い音。彼女はろくに喧嘩らしい喧嘩をしたことはない。加えて彼女が戦えているのは腕力によってではないのだ。素の力はそれこそ見た目通りでしかない。
しかし、執拗に繰り返される枕への暴行は、相手によっては彼女は躊躇いなくそうするであろう危険性を示していた。




