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目覚めて君は走り出す2《早出深夜勤務マン2・暫定》
「――――」
無心で槍――今は棒だが――を振るう。
ユーリはその瞬間が好きだ。何かに夢中になって、目の前にあるモノしか見えない極限の集中状態……。
その領域……なんて大げさかも知れないが、そこに至った時、彼はこの上ない喜びを感じる。生きている、と。
人は生きる事にがむしゃらに、真剣になっていい。そう、思わせてくれるからだ。
ユーリにも色々あった。誹謗、中傷……他者への失望、失意。そうした経験の中で何かを掴めば何かを失った。
棒を振るう。
今、この瞬間は修練の事しか考えない。それが心地よい。




