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修練の記憶5《早出深夜勤務マン・暫定》
ろくでなし師匠にも人の心はある。言いぐさとしては大分酷いが。
彼は『どうしたもんか』と珍しく唸った。気紛れで取ったバカ弟子のことだ。
あの妙に“死返し”だけは上手いユーリは悩みの種である。
今の世には……少なくとも武術が必須ではない現代において彼の技はまさしく意味がない。
そりゃあ、暴漢に襲われたら反撃位はしても許されると思うが、相手と共倒れなんてのは現代の価値観にそぐわないだろう。
つまり、師匠が危惧しているのはそういう所だ。
価値観が今と合っていない。今の時代は弟子にとって生きづらいのではないか、と。




