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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第二章・運命の少女、虹の男とトコヨ地方編
295/3922

召喚されし少女・いつか再びその温もりを

頑張って書いたけど、久々に書いたし、スゲェ眠いしで、グチャゴチャ感が半端ないな(汗)


ちょっと、間に合いそうに無かったんで先に投稿したけど、ホントにちょっとだけだったから許してプリーズ。

『本当にごめんなさいサキ様!』


 ――――レディがイーシャを担ぎ部屋を後にした数分後。

 そこには部屋に入ってくるなり土下座をしたクーネットの姿があった。

 どうやら、真琴の半死半生状態は自分が招いた事だと責任を感じているらしい。


 仮にもこの家の主であるにも関わらず、クーネットはキッチリと額を畳に擦りつけ、凄く良い姿勢で土下座をしていた。少なくとも、責任逃れの為にする誠意無き謝罪でない事は解る。

 しかし、それならそれで咲生はどうしたものかと思案しつつ、繋いでいた真琴の手を布団の中へと戻し、クーネットに向き直った。


「…………顔を上げてクーネットさん。真琴を巻き込んだのは私に責任があるの……義姉さんが忠告してくれたのに私はそれを無視してしまった。守っていたら、少なくとも真琴は助かったと思う」


 口から出たのは本心か、それとも己の後悔を吐露しただけか。いずれにしても、真琴がこうなってしまったのをクーネットに押し付けるほど、咲生は愚かではなかった。――――最も、レディに道を示してもらえなかったら彼女を責めていた可能性は十分にあったのだけれども。


「だから、貴女が悪いなんて事は絶対にないわ」


 土下座を続けるクーネットの肩へ、ぽんと優しく手を置く。

 それでようやく、彼女は顔を上げたのだが…………。


『そんな! 元はと言えば身内問題だったのに…………、安易に勇者召喚を行ったウチが悪いんです!』


 表情からは『サキ様は悪くない』と言う思いが、強く表に出ていて…………。

 悪意を向けられるのは怖い筈なのに、この遠い世界の血縁者は自ら罪を背を負うとしている――――咲生はそんな風に感じた。


 そうする事で咲生の負の感情を彼女は受け止めようと言うのだ。

 恋人が半死半生などと言う状態になり、その憤りをぶつける相手をクーネットは自分へ向けようとした。


 同情なんかではなくて、本当に自分が悪い事をして、それに対する罪と罰が必要だと思っての発言。

 ある意味で彼女は真っ直ぐなのだろう。


 身内を助ける為に召喚儀式を行ったこと、咲生の悲しみも怒りも全て自分へ吐き出せようとしたこと。

 そのどちらも相手を慮ったからこそ出た行動。咲生はどうしてか、クーネットが考えている事が透けて見えていた。


 ――――それもきっと祝福の影響なのかも知れない。咲生はずっと無意識にあらゆることを望んでいる。

 だから、クーネットの心の内も自然と解る様になっていく。だから――――申し訳ないと思う。


「――――いや、やっぱり私も謝らなきゃ…………。召喚してくれたのに貴女の願いを叶えてあげる余裕なんてなさそうだもの……」


 そう、こうなってしまった以上は咲生は真琴の命を最優先にしなければならない。

 つまりはクーネットが助けたかった身内を――――見殺しにすると言うことになる。

 それが心苦しい。世界の壁すら超えさせて叶えたかった望み、それは叶わない。咲生が踏みにじってしまうのだから。


 ――――そう思ったのだが。


『そ、その事なんですけど――――ごめんなさい!』


 凄く申し訳なさそうにクーネットが再び土下座。その際にごつんと言う音が、勢い良く振り下ろした額から鳴って『うわぁ、痛そう』とぼんやりと考えてしまった。


「えっ、ちょ、ちょっと! 顔を上げてよクーネットさん!」


 訳も解らず、とにかく彼女に顔を上げるように促す。

 先程、咲生は彼女の心を見透かす事が出来たが、今度はそれが出来ない。何故だかは解らないが、解らないと言う事実だけ頭の片隅に置いておく事にする。


 やがて、クーネットはそろそろと顔をあげて如何にもバツが悪そうに、真っ赤になったおでこを晒して苦笑した。


『じ、実はその――――あの子達から連絡があって…………』

「――――え?」

『ほ、本当にごめんなさい! 既に別の方が彼女達を助けてくれたみたいで、暫くしたら帰るって手紙が来たんです! ここ田舎だから、どうしても連絡が届くのが遅れてしまって…………!』

「そ、そうなんだ…………」


 思わず咲生の顔も引き攣ってしまう。少し脱力してしまった。

 クーネットの望みを蹴って後味が悪くなるのは回避できたが、自分が呼ばれた意味が早速なくなってしまったのは何と言う皮肉なのだろうか? ――――いや、これで真琴の事に専念できるのだから、ありがたいことなのだが。


『本当に、本当にごめんなさい! 呼ぶだけ呼んで、真琴さんをあんな目に合わせて…………もう、ウチの命で償うしかっ!』

「ま、待って待って! そんなに気負わなくいいから…………ね? 顔を上げてクーネットさん」

『サ、サキ様ぁ…………』


 申し訳なさ一杯で混乱極まるクーネットを宥め、咲生は軽く深呼吸して心を落ち着かせてから、心中を打ち明けた。


「――――確かに大変な事に巻き込まれたって、真琴がどうしてこんな目にって、沢山思ったよ? でもね、やっぱり、真琴を巻き込んだのは私なんだ。私が忠告を無視しなければ、少なくとも真琴がこんな事になるのは防げたかも知れない…………」


 ――――誰かを恨むよりも先に咲生は己を責める。姉に対する反感と意地を張った所為で、結果的に真琴を巻き込んでしまった…………その事実かた目を逸らす為にクーネットを利用してはならない。


「…………だから、真琴を助ける為に私はマガツって所へ行く。必ず真琴を生き返らせて見せる…………!」

『サキ様…………』


 受け止めて進もう。自分の愚かさも、自らが招いてしまった悲劇も。そう決意した咲生の目にはありありと強い意志が浮かび上がっていて、クーネットは思わず見惚れてしまった。

 キリッとしたその顔は凛とした勇ましささえ覗かせて、思わず顔が赤くなるほどだ。


(はっ!? ウチったら、何でこんな顔が熱く!)


 咄嗟に俯いて紅潮した顔を隠す、そしてそれがバレない様に真面目な話で場を繋ぐ。


『――――できればウチもそのお手伝いが出来ればいいんですけど…………すみません。今回の一件において全ての罪はウチにあり、ウチはそれに対する罰として森で三ヶ月以上儀式をしなきゃならなくて…………』

「――――え? ど、どうしてそんな事に!」

『実はですね…………』


 ――――これはキサラ村で決まったこと。

 村では巫女として住人を統括する存在、その一人として活動する彼女が不用意にも独断で召喚儀式を行ってしまった。それが原因で長らく平穏だったキサラ村は襲撃を受けてボロボロ。怪我人が居なかったのは本当に幸いと言えただろう。


 今回の件は、巫女なりに行方不明になった身内を助けるべく必死だったと言うのは村人達も良く理解している――――――――が、巫女の所為で村に争いや穢れを呼び込んでしまったと言うのは些か体が悪い。


 村の象徴、その一人である彼女を強く罰する訳にはいかないが、それでも何にもしない訳にもいかない――――なので、『巫女クーネットは穢れを祓う為に森で儀式を行いながら修行する』と言う策を、キサラ村を統括する“キサラ御三家、その内の二つ“ツルギ”と“守人”が打ち立てた。


 これにより、今回の件で少なからず起こるであろうイメージダウンを軽減すると共に、召喚された勇者には何の非も無いことをアピールする事も目的としている。

 儀式で祓う穢れは己のみならず、村人、勇者にも及ぶ。そして旅立つ勇者への応援として、巫女が三ヶ月に渡り祈祷する――――と言う内容だ。

 

「成程……、大変そうね……」


 全てを聞き終えた咲生は何とも言えない複雑な顔だった。それは突き詰めて言えば、やはり自分を召喚したが為に被害を被った…………そう取れる内容だったのだから。

 だが顔に出しても態度や声には出さぬ様に心がけ、フォローした――――つもりだったのだが……。


『い、いえ! サキ様に比べたら――――ぐしゅ、全然、辛くないでしゅ……!』


 唐突にクーネットが顔をぐしゃぐしゃにして泣き出したことで、咲生はフォローに失敗したことを悟った。タイムラグが殆ど無しでいきなりマックスの泣き顔。


「ちょ、ちょっと!? いきなりどうしたの! どこか痛くなったの?」


 これには咲生もかなり面食らったようで、中腰になりながらクーネット背中を擦って精一杯あやす。

 ――――ちなみに、彼女がここまで人に優しくするシーンは滅多に見られないらしい。それはプラチナブロンドと言う外見が目立つ為に、好奇心の目に晒され、つい敵意を振り撒いてしまうからなのだが…………今は置いておく。


『い、いえ、違いましゅ……。サキ様のこれからを思うと、申し訳なくて……』

「――だから、気にしなくて良いって言ってるのに」


 どうやらフォローが失敗してしまったのではなく、自分がこれから森で過ごす三ヶ月間と、咲生が始める旅路を比べて思わず泣き出してしまったらしい。

 心臓の代わりを探しに行く――――――――と言う話しは、どうやら立ち聞きで聞いて居た様だった。


 確かにそれはとんでもなくハードな道程になるハズ。恋人が大変な目に合った上に、更に自分までもその命を危険に晒す可能性が高い旅…………。

 ――――気にしないと言うのは無理な話だった。特に人一倍優しい心を持つクーネット・キサラならば尚更のこと。


『で、でもぉ……ぐじゅ……』

「……もう、しょうがないわね」

『あ……サ、サキ様?』


 気にしなくても良いといってもきかない彼女に咲生は溜息を吐きつつも、ぎゅっとその身体を抱きしめてやった。驚いたクーネットが腕の中でビクッと震えるが、それも一瞬だけだ。


「こうしてると落ち着くでしょ?」

『は、はい……暖かいです……』

「私が不安な時、真琴がよくしてくれたの。『大丈夫だよ咲生。きっと何とかなるさ!』なんて、能天気に笑って、ね……」

『……サキ様』


 咲生の頭に思い浮かぶ恋人の優しい励まし。見よう見真似で、自分が貰った安心感をクーネットにも与えようとする。上手くいったかどうかは別として。


「――――真琴は私をそうやっていつも助けてくれてた……。だから、今度は私の番なのよ」


 そうして真琴の事を考えれば、心が奮い立つのを感じる。助けたい、助けなきゃ、と。


「……絶対に助けるわ。どれだけの困難が待っていても」


 クーネットを抱く腕にほぼ無意識で力が篭る。痛い位のそれをクーネットは黙って受け入れていた。

 それが咲生にとって必要な事ならば――――受け入れたい。いつだって誰かの為に身を投げ出そうとする巫女は、やはり献身的に人へ尽くすのが性分らしかった。 


『――――ウチには祈る事しか出来ませんけど……』


 自分からもそっと咲生を抱きしめ返す。真琴の代わりとは言わないけれど、触れた身体から広がる体温が少しでも彼女に力を与えてくれますようにと、ひたすらに願って。


『サキ様が何処にいようと、その無事と、望みが叶う事を祈っています。全身全霊、心を込めて……』

「ありがとう、クーネットさん……」


 そうして二人は暫しの間抱き締めあう。

 二つの世界に離れた遠い血縁者…………。

 その不思議な縁と、体温に酔いしれる様に、咲生は嵐へ挑む直前一時の安らぎを得るのだった。

次、旅の門出の衣装。

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