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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第二章・運命の少女、虹の男とトコヨ地方編
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召喚されし少女・今は遠い場所へ手を伸ばそう

大分良くなったけど、まだ病み上がり感は拭えないね…………。


明日からは仕事だし、ついでに健康診断もあるので、今日は早めに休みますよっと。

 ――引き続きキサラ村、“巫女クーネット”の家にて。

 召喚されし少女咲生、死神イーシャ、そして謎の女ことレディ。正座で話を聴く姿勢を整えた咲生に倣うように二人も正座で応え、真琴が置かれている状況についての話が纏まっていた。


『良いですか? マコトさんは何とか生きてはいます――――けれど、心臓を失っているので目を覚ます事はありません。ならどうして生きているのかと言うと――――』

「私が浅野さんにありったけの生命力と、とある祝福を埋め込んだからです。貴女達二人で倒した――――死神の祝福をね」


「それって――――大丈夫なんですか?」

『大丈夫な訳がありません。ワタクシはもう五百年以上生きてますけれど、少なくともそんな事例は聞いた事ないですわ』

「――一応、前例はありますけどね……」


 ネタばらし、種は予想外な方法。祝福を埋め込む事で死んだ人間を蘇生――――まではいかなくとも、こうして生かす事に成功している。咲生には良く解っていないが、イーシャにとっては有り得ないらしい。

 ――――最後にぼそりと何かを呟いたレディの声は、二人には聴こえていない様だ。


 そう、前例はある。とある男が死神の少女を助ける為に使った方法である。

 ――――唯、あの時とは状況が違い過ぎた。死にかけを助けるのと、死んだ人間を蘇らせるのでは、そこにはどうしたって大きな差が出るのだから。


「……それで、どうしてそれが真琴を救う事に?」

「ノレッセアに居る亜人種は、全て祝福によって変質した元人間……と言うのは聞いていますか?」

「クーネットさんがそうですよね?」

『死神であるワタクシもそうですよ』

「――さっき、五百年以上生きてるって言ってたけど……そんなに長命になるものなの? 元人間なんでしょ?」


 咲生の意見は最もだ。いくら祝福が非科学的でファンタジーの塊みたいな能力でも、人間をベースに新たな種へ改造するなど進化の過程を跳躍し過ぎている。

 それに如何に強靭な身体構造をしていても、元々は人間だったものがそこまでのレベルに達するだろうか? ――――まぁ、死神と言う種がこうして目の前に居るのだから、達するのだろうが…………。


 納得できない…………。そんな風に頭を悩ませていると……。


「そこですよ咲生。浅野さんを生かしているのは」

「えっ?」


 レディからのヒント。真琴が心臓を失いつつも生きている要素。

 それは――――――――。


『死んだハズのマコトさんに生命力を注ぎ込んで蘇生させ、肉体が生きていると誤認させたのです。祝福は生命に宿るものですから』

「っ、真琴の肉体を死神に変化させる事で、生命維持を行っている…………?


「その通り。肉体が変化すれば、或いは変化し続けている限り、ギリギリではあるけれどその命は保障される。何しろ、普通の人間じゃ耐えられない様な状況でも、死神と言う種族は生き延びられる――――それだけ強靭な身体を持った種族ですから」


 ――――肉体の死神化、それが真琴を生かしている。心臓は失ったが細胞そのものはまだ生きていた。

 ならば心臓の変わりに身体を生かすだけのエネルギーを与えてやればいい。更にそこへ祝福を埋め込めば、新たな肉体造りを補助してくれる。


 結果として最良かどうかは解らないが、こうして彼女が生きているのは、人間を遥かに超える寿命を持った存在へ変化しようとしているからだ。

 そのお陰で、心臓はなくとも変質する身体が命を繋ぎ止めてくれている。

 しかし、それが限界でもあった。


『――――ですが、いくら死神の力が強力でも、潰された心臓を再生させる様な超回復は見込めません』

「…………生きてはいるけど、二度と目覚めない…………そう言う意味ですか」


 言葉通りだと、咲生は思った。変質によって命は見事に繋いだ。でもその先が、ない。

 いつまでも祝福に頼るのは論外。他に何かが必要なのだ。新たな心臓、或いはその代わりになる器官でもなければ…………。


「――――真琴を助ける方法は?」

『残念ながら、ワタクシに心辺りはありません。…………ですが』


 咲生に視線を向けられて、イーシャは目を逸らす。けれどそれは逃げたのではない。

 単純にその話題において一番詳しい相手にバトンを受け渡しただけ。死神が横目で見た相手は――――。


『…………アナタなら何か知っているのではないですか、レディ?』


 ――――この場に居る第三者、謎の女レディ・ミステリア。

 そもそも、真琴を助けた張本人ならばその先を知っていてもおかしくは無い。

 助けられると言う確信がなければ、とてもじゃないがあんな行動は取れないハズだ。


 過大評価でもなんでもなく、イーシャは間違いなくレディに潜む力の強大さを見抜いていた。


「…………」

『沈黙は肯定ですわよ? それに――――アナタだったらマコトさんを蘇生させる事も簡単に出来たのでは?』

「――――さぁて、どうでしょうね? 出来たとしても、私には助ける理由がありませんので…………」


 問えば予想通りにレディは答えをはぐらかす。助ける理由が無い?

 ならばどうしてここまで力を貸したのか? ――――きっと、それは咲生に対しての援助なのだろう。

 咲生が困るから、彼女が悲しむから…………だから、ある程度は力を貸す。


 そんなルールがレディ・ミステリアにはあるのだろう、とイーシャは思う。

 だから、咲生が心の底から願うならば、彼女はきっと最大限の助力をしてくれるはずだ。

 そう思った矢先のことだった。


「…………お願いします! 真琴を――――――――真琴を助ける方法があるなら教えてください!」


 咲生が布団の上で土下座をしていた。思いっきり頭を下げた為に、布団越しで畳へと頭突きをした形だ。

 控え目なごっと言う音がして、どれだけの勢いで頭を振ったのかありありと解る。まさに全身全霊の土下座。


「大切な…………大切な恋人なんです! 私に出来る事ならなんでもやります! だから、だから――――!」


 声を精一杯張り上げれば、悲痛とも取れる叫びとなる。助けたい――――あまりに真摯な願い。

 心の底から望んだことであれば、それは心打つものとなる。人の心は人情によって揺れ動くもの。

 一人の少女がこれ程までに願い、訴えるのだから、それで動かないのは――――。 


『…………サキさん。…………さぁ、どうするんですのレディ?』

「――――別にそこまでされなくても方法位なら教えますよ」


 ――――人としては欠陥品だろう。レディは自分を欠陥品だと肯定するかも知れないが、それと力を貸す貸さないは別物だ。元々、言葉通りにそこまでされなくても教えるつもりでいた。

 ――唯、『真琴を助けて欲しい!』と縋るようなら一喝するつもりだったので、少々毒を抜かれた気分だったが。


「ほ、本当ですか!」

「ただし、私はこれ以上手を貸しません。ここから先は貴女自身の力で立ち向かいなさい」


 ガバッと顔を上げながら喜びについ頬が緩む。だから、予めハッキリと言う必要があった。

 ――――貴女自身で道を切り開きなさい、と……。


「その覚悟が――――ありますか?」


 仮面越しにレディが咲生を瞳を覗く、その問いに咲生は顔を引き締めて――――。


「――――――――はい!」


 ――――力強い返事で頷いた。これより始まるは、召喚されし少女が異世界で活躍する冒険譚……。

 右も左も解らぬ地で、彼女が望みを叶えられるかは――――――――。


 ――――――――――――偏に彼女が宿すチカラ次第だ。


次回、旅立つ為に。

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