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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第二章・運命の少女、虹の男とトコヨ地方編
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召喚されし少女・少女を守る少女な王子サマ

えー、何かどうも元々駄目だったのが更に悪化したのか思う様に執筆できず、分割商法で……。


しかも聞いてくださいよ!


さっき間違って分割した後半部分を削除しちゃったんですよ!


うわーん! 俺はもうお終いだぁぁぁぁぁぁぁぁっッ!!

『グウェイ! 何てしぶとい……!』


 ――――怨念の篭った声に一同が釣られて振り向けば、そこにはゆらりと立ち上がる死神の姿。

 呼吸は荒く、目は血走ってぎらついている。狂犬、いや飢狼と見紛う程の視線が真琴達を射抜く。

 紛れも無い殺気。自身をボロボロにした相手への隠し切れない殺意が溢れに溢れていた。


『コケにされたまま黙ってられっかよぉッ!』


 胸から大量の血を零しながら、重傷である事を感じさせない動きでグウェイは鎌を構えて突進した。

 咄嗟にイーシャが動いて助けようとするも……………………身体が動かない。真琴の視線を受けた所為で身体がまだ思う様に動かないのだ。


「ッ!? クーネットさん! 咲生をお願い!」

『マ、マコト? きゃあっ』


 咲生のクーネットに押し付けてそのまま突き飛ばし、真琴はグウェイを正面に捉える。バッと右手を上げて掌打の構え、左手は腰元に移動させた。

 その立ち姿たるや実に堂々としたもの。それもそのハズ、何故なら彼女の実家は武術道場を営んでいる。


 古い文献から派生した独自の流派らしく、拳ではなく掌を主に使い、打撃よりも衝撃、そして敵の攻撃を弾く事を重視した防御及びカウンター特化の異形武術。

 名を――――――――椿光陰流(つばきこういんりゅう)

 

『どけやぁぁぁぁぁっ!』

「退かない――――よ!」


 鎌を振りかぶって突撃を仕掛けるグウェイの前で真琴がぐっとを腰を低くしたかと思えば、彼女もまた死神目掛けて吶喊した。

 懐に入り、鎌のが振り下ろし切るよりも先に掌打を打ち込む!


『そんなも――――ガフッ!?』


 ――――たかが一発くらい貰ってやる! そう思ったのがいけなった。特に何の強化もされていない、祝福を纏った一撃でもない。だから大丈夫、耐えられる――――普通はそう思うのも無理もない事だ。

 しかし、真琴の一撃はモロに入った。咲生によって貫かれた胸を鈍器で殴られた様な衝撃。グウェイはしっかり防御していたにも関わらず、それを突き抜けた掌打は彼に血を吐かせた。


「――ボクの恋人を……これ以上傷付けさせない!」


 痛みにたたらを踏んで二、三歩後退した死神を少女が睨んでいた。再び右掌を正面に突き出して構えを取る。油断も容赦もしない、必ず倒す。瞳はそんな決意がメラメラと炎の如く揺れ動く、激情によって炎は何処までも燃え上がっていくのだろう。


 恋人を傷付けた死神を――――完全に葬り去るまで…………。


『ば、バカな……、唯殴られただけだってのに――――痛ぇ……痛ぇぞクソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁっ』


 グウェイは喚き散らしながら、今度は鎌を横に振りぬいた。目指すは真琴の首一つ。

 彼女は――――動かない。それどころか目を瞑ってさえいる。でもそれは彼女がある種の確信を抱いたから取った行動。


 自身に宿った祝福の力を真琴はようやく掴み取っていた。


「……段々解ってきた様な気がする。これがボクの力――――“押し通しの理”」


 首を狩ろうとした鎌の切っ先を、真琴は左掌で受け止めてた――――唯の素手を鋼鉄の刃は切り裂けない。

 完全にピタリと止まっていて、押し込めなかった。グウェイが唖然とした表情をした瞬間、ようやく真琴の目が見開かれて――――。


『う、ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!?』


 身動きをする事を忘れた様に棒立ちしていた死神にもう一度掌底を叩き込む。今度は全力、視界からぶっ飛べと言わんばかりの一撃でグウェイは思いっきり吹っ飛ばされていく。

 ――――その一連の流れを見て、再びイーシャの目は驚愕で点になっていた。


『な、何がどうなっていますの? 死にかけとは言え、あんな普通の攻撃が死神に通用するハズが――――っ、も、もしや……』


 ――気付く、気付いてしまった。

 自分自身、彼女に睨まれて未だに行動不可能な事と、グウェイのあのダメージから真琴の祝福がおぼろげながら輪郭を現す。彼女の能力は突き詰めて言えば――――――――無力化。


 しかも唯の無力化じゃない。人種や能力、性質や体質、その他ありとあらゆる要素を全て一切合切が真琴の前では無力となってしまうのではないか?


 そんなイーシャの推測は――――見事に当たっている。


 ――――“押し通しの理”…………。真琴は自身の能力をそう名付けた。

 クーネットとの事を思い出す。咲生は彼女の言葉を理解できていなかったのに、何故自分だけ……。


 その疑問はこの能力を理解し把握すれば簡単なこと。


 端的に例えを交えて説明するなら、これはレディ・ミステリアの能力に似ている。

 レディの能力は“あらゆる壁を乗り越えて空間に干渉する力”。


 あの力を前にすればどんな結界も、強固な最新鋭のセキュリティシステムも、物理的な壁でさえ侵入を阻む事は不可能………………。真琴の能力はそれに良く似ている。


 言うなれば、“あらゆる障害を乗り越えて肉体への攻撃、意思疎通を可能にする能力”とでも称するべきだろう。先ほど放った掌打は紛れも無く普通の一般人レベル――――いや、恋人を守る為に特訓したから、大の大人でも悶絶してしまうほどの威力はあったのだけれど…………。


 それでも特殊能力や亜人種、変質動物やドラゴン等が住まうこの世界においては赤子程度の力でしかない。相手が死神と言う亜人種の中でも最強クラスの種族ならば尚更だ。

 ――――だが真琴の能力はそんな壁を簡単に崩壊させる。


 掌打が当たる瞬間、鎌の切っ先を受け止められた瞬間……………………あの時、真琴の能力によってグウェイは極度に弱体化させられてた。もうそれは無力化と称するしかないほどに。


 何しろ、真琴が力が通用する状態までに身体能力は低下してしまうのだから。

 どれだけ肉体を鍛え上げようが、どれ程能力を上手く扱えようが関係ない。彼女にとって都合の悪いモノ全てが拒否される能力――――それこそが“押し通しの理”の正体だ。


「咲生はボクが――――ボクが守るんだ!」


 吹っ飛びながらも何とか姿勢を整えて立ち直ったグウェイを追撃する真琴。

 死神はと言うと、掌打のダメージが抜けないのか今度こそ本当に棒立ちだった。

 またもや懐に潜り込まれて掌打の嵐を見舞われる。避け様と身体を動かそうと思っても咲生との戦いで受けた負傷がそれを許さない。


『ぐっ、ガッ、ギ、グゥッ……』


 サンドバックの様に胸へと打ち込まれていく掌打は視界を真っ白に染め上げる程に強烈。胸と口から激しく血を噴出しながらも、グウェイは倒れない。むしろ、不敵な笑みをたたえてさえ居る。

 その不気味さに嫌な予感を感じつつも真琴は留めの一撃を放つ。いや、正確には二撃だ。


「これで終わりだぁぁぁぁぁ!」


 上半身を右に捻る、そうして捻った反動を利用して最初に左肘を、そしてやや遅れて右の掌打が胸に打ち込まれる。

 これぞ椿光陰流奥義――――“叩き咲き”。


『――――ガハッ……!』


 真琴が有する最大威力の攻撃に、グウェイはとうとう身体を九の字に折れ曲がらせ、不敵にニヤついた表情を苦悶で歪めた。

 口からは大量の吐血。人間ならそれだけで十分に致死量へ達する程に量を吐いて血溜りを造り、グウェイの身体はそこへ沈んでいく。

 どちゃっと言う、不快な音を鳴らして死神はその動きを止めたのだった。

次回、喪失。

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