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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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遠い地で蠢く野望その二

よっし、眠いが何とか書けたぞ!


明日はエピローグと後書きの予定で、早くて明後日から第二章に入ります。


準備が出来なかったら、明後日からは番外編で繋ぐ予定です。

 ――――天空幻想城にてアルフレドが生死の境を迷っている間、大陸北方アムアレア城では…………。


「コルヴェイ王様……ご無事ですか?」


 誰も居なかった玉座の間に淡い紫の光が満ちれば、瞬く間にそこには二つの影。

 城の主であるコルヴェイ王と、彼の側近である“四姫”の一人“神出鬼没のルシアン”だ。


 時刻は悠理がコルヴェイ王に一撃を喰らわせた直後。ルシアンの判断によって二人はその場を離脱。

 こうして城へと帰還――――いや、退却したと素直に認めるべきかもしれない。


 悔しさを飲み込んでルシアンは王の無事を確認する。

 外見上は全くの無傷だが一応聞いておかねば彼女が安心できない。自分が付いていながら主に重傷を負わせたとなっては、他の四姫メンバーに申し訳が立たないと言うのもあるが…………それはそれだ。


「問題ない……お前はどうだルシア?」

「はっ、五体満足。祝福にも弊害は出ておりません」


 軽く悠理の拳――――そこから放たれた光がぶつかった胸を触診するコルヴェイ王。どうやらルシアンの行動が迅速だったお陰で大事には至らなかった様だ。


 彼女は自分が無事である事を告げながら心の底から安堵していた。

 あの一撃は不味い。王が負けるなどとは思っていなかったが、それでも一瞬だけ、主の敗北する姿が脳に過ぎった。もう十年はコルヴェイ王に仕えているルシアンをそう思わせたのだ。


 それが悠理の放った光の一撃に秘められた危険さを物語るというもの。

 ――しかし、側近の一人がそう危険視する目の前で主であるコルヴェイ王はそこに興味を抱いたらしい。


「しかし……成程。神が肩入れするだけはあるかも知れんな」

「あ、あの男に興味をお持ちで?」


 コルヴェイ王が考え事をする様に顎鬚をジョリっと弄くる。その仕草にルシアンは思わずビクッと、背筋を正す。――――これは危険な兆候だ。


 長年仕えた経験から言えば、先程の仕草はとんでもない行動をしでかす前兆。

 ――その仕草をして大変な事になった事件といえば…………二年程前、突如大陸西方ラスベリア帝国女帝ジェミカの居城にコルヴェイ王が襲撃をかけると言い出した事がある。


 勿論、そんな遠く離れた場所に一瞬で辿り着く方法などルシアンが手助けするしかない。


 先に言っておくに、彼女は散々諫言した。己の首が落ちる覚悟で。

 しかし、結局は王の圧力に耐え切れず実行するハメになったのだ。

 ――――結果は…………失敗した。ジェミカの警戒心を侮っていたと言っていい。


 ラスベリア帝国は反帝国組織と戦いながらも、コルヴェイ軍とやりあえる位には国力、軍事力が高い。

 それは国民に圧政を敷く恐怖政治が背景に成り立つものであるが、今は置いておく。


 元より、女帝ジェミカは幼き頃から裏切りと暗殺で命を狙われ続けた女。

 そんな彼女はいつ何が起きようとも、例え熟睡していようと、それが一糸纏わぬ生まれたままの姿を晒す状況でも、敵の襲撃、殺気に対応できる。


 だからこそ、普通ならば反応する事すら難しい長距離空間跳躍による奇襲であろうと、ジェミカには通じない。コルヴェイ王襲来を悟った彼女は先手を打って彼に一撃を与えて追い返した。


 それ以来、流石にジェミカを直接奇襲する事は無くなったが、顎髭を弄くった後には必ずと言っていい程に厄介事が舞い込む。――――と言うのは、四姫の間では困ったジンクスとして認定されている。流石にコルヴェイ王本人にそう言ったことないが、目下彼女達の悩みの種である事は間違いない。


 嫌な予感に不安が膨らむ胸中を察して欲しいと思いつつも、ルシアンは王の言葉を待った。


「そうとってもらっても構わん。これは――――選択肢が増えたかも知れんぞルシア?」

「選択肢……ですか?」

「ああ、ヤツならば世界再生――――成し遂げるやも知れぬ」

「っ!? あの男に肩入れするおつもりですか!?」


 ――――やっぱりこうなりますのね!? と言う本心をギリギリ飲み込むルシアン。

 どうやらコルヴェイ王は悠理が放ったあの光――――いや、その直前に見せた“小宇宙の創成”や“生命神秘の気”…………それらも含めて彼を認めたらしい。

 世界を救うに値する英雄へ成りうる――――――――と。


「いや、我は直接には動かん。優秀な部下に情報操作させ、秘密裏にヤツの手助けを行ってもらう」

「そ、それってもしや私の事では? で、ですが、アルフレド様の祝福でバレてしまう可能性が……」


 コルヴェイ王の言う作戦。自分がそこに組み込まれている事にルシアンは愕然とした。

 自らを優秀だと驕っている訳でも、自意識過剰な訳でもない。唯単に事実として、大陸規模の情報操作が可能なのは彼女をおいて他に居ないだけだ。


 “鉄仮面のグリキルナ”が使役する“人形”を使えば容易ではあるが、王の命令とは言え彼女が敵を手助けするとは思えない。私情を挟まず、コルヴェイ王が求める結果を引き出すのはやはりルシアンが適任だろう。


 ――――が、彼女が指摘した様にアルフレドの祝福が厄介だ。如何にルシアンが“神出鬼没”だからと言っても、あの力を持って四六時中監視されてはまずばれる。

 そこをクリアする事は不可能に等しい。――――勿論、王が望むのであれば彼女は全力を駆使して打開策を講じるつもりだが…………。


 バレれば協力関係にヒビが入るプレッシャーを考えれば、可能な限り回避したいのが本音。


 しかし予想外な一言がコルヴェイ王の口から飛び出して、彼女は退路を絶たれる事になった。


「安心しろ。既に手は打ってある。ヤツはもう大陸を監視出来ぬからな」

「えっ?」


 ――――今何と仰いました? 明らかに確信のある言い方。しかし何故、王がそんな事を知っているのか?

 それを問質す権利も、隙も、彼女には与えられず、王が言葉を続ける。


「――――正直な所、アルフレドとヤツのどちらが世界再生を成そうと構わぬのだ。我としては成功率を上げたい」


 北方の覇王が望む報酬は世界再生の果てにのみある。

 彼としてはそれを与えてくれるなら、それが神の側近だろうが、神が召喚した勇者でも構わない。

 ――――それ以外の、例えば悪魔と呼ばれる存在であったとしても。


「それであの男に肩入れをすると言うのですか?」

「ああ、我は我の目的を果たす為ならばどんなものでも利用する――――解っておろう?」

「ハッ、忘れ去られし我等の名を再び大地へ刻む為に……!」


 王が決断したとなれば、四姫であるルシアンは逆らう理由を持たない。

 ましてや覇王の目的――――夢と言い換えてもいいそれを叶える為なら彼女は命すら簡単に賭けられる。

 そうする事で自分が背負った者達――――その無念が晴れるというのなら…………。


 覇王の問いかけに跪き宣言する。我、コルヴェイ王に仕える四姫、主の願いは我が願い。必ずやそれに応えましょう。すべては己の為に、その全てが主が行く覇道の糧となります様に…………。


「うむ、では万全の態勢を整えた後、行動を開始せよ!」

「ハッ! コルヴェイ王様がお命じになるままに……」


 下った命令に深く頭を垂れて、その姿を消すルシアン。

 人間の形をした紫色の光が彼女の居た場所に溢れ、瞬く間に散っていく。

 その瞬間を最後まで眺めた後、王に異変が起こった。


「――――――――――――――――――――ガフッ……!!」


 ルシアンの気配が完全に消えたことを確認して――――血を吐き出す。

 どうしてか等と問うのは愚。言うまでもなく、それはあの一撃。


 悠理が全身全霊を乗せて放った、彼が持つ力の全てを統合、凝縮した逆転の一撃。

 それは覇王の予想を上回る強烈な威力を秘めており、祝福の防御と雷龍王から奪った雷撃を尽く無効化してコルヴェイ王に突き刺さったのだ。


 鍛え上げた肉体で何とか防ぎはしたものの、ダメージは確実に通っていた。

 部下が傍に居た手前、情けない姿を晒すのは矜持が許さなかったのだろう。


 そうした強がりもルシアンが居なくなった事で限界を迎える。


「ミスター・フリーダム……か。――覚えておこう……」


 口元に嬉しそうな笑みをたたえて、王は瞳を閉じる。

 女帝ジェミカとの一騎打ち以外で久々に感じた事実上の敗北。

 それに対する悔しさと、清々しさを抱きながら深い眠りに落ちていく。


 ――――遥か先の未来、己の願いはどちらかが必ず成就させてくれるだろうと予感めいたものを覚えながら。

次回、残された女達は。

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