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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
262/3922

終戦、グレッセ王都!・式典、宣伝、結婚宣言!?その四

あががががっ!

重要なシーンなのに今日に限って頭が最高に仕事しないとは…………!


――――ってな訳で、いつもよりグダってると思うんで申し訳ねぇっす!

「――――さて、皆さんにアルゥソ殿達を紹介した所で私から重要な話がございます」


 悠理ことアルゥソ・ツイターとカーニャを認める喝采が止んだ頃、セレイナの凛々しい声が中央広場に響き渡る。その横顔には並々ならぬ決意が宿っている様な気がして、悠理やその場に居る誰もが姿勢を正す。

 すると、彼女から飛び出た言葉は聴く姿勢を正しても尚衝撃的すぎる内容であった……!


「実は私セレイナは――――第一王位継承者ではありません……!」

「――――! そうか……、遂に()()()が動くと決めたのだな…………」


 あまりにも唐突な発言に住民達は勿論、悠理達だってサッパリだ。王家に仕える忠臣達ですらその発言に驚き、ざわついている。――――最も、グレフや一部の忠臣はその一言が何を示しているか知っていそうではあったが…………。


「どういう事でしょうかセレイナ姫? 王家には貴女しか跡継ぎは居らっしゃらないと聞いたのですが…………」


 場を代表してアルゥソが一歩踏み出してセレイナへ問う。事前に聞いていた話では跡継ぎは彼女のだけのはず。亡きグレッセ王は愛妻家で、王妃以外のの女には目もくれなかったと言う話も聴いた。

 ――主に、彼がこの一週間で仲良くなった街のお爺ちゃん談だ。


「アルゥソ殿や、ここに居る殆どの皆様が知らないのも無理はありません……。これは父であるガールヴ・ラード・グレッセと王妃様、そして私の産みの母親で交わされた約束ですから」

「――――その言い方だと、貴女はグレッセ王の血を引いているが、王妃様との間の子ではない、と聞こえますが?」

「はい、グレッセ王と王妃様の幼馴染であったとある貴族の娘――――その人が私の本当の母です」

「…………何か理由があるとお見受けしましたが?」


 アルゥソに向き直ったセレイナが、自分の出生を語る。それは遠い日の――――約束。

 それが交わされるまでのお話。当然、この事を知らない住民や騎士達からは絶えず戸惑いの声が漏れていた。喧騒の中、セレイナは頷いて肯定を示し、続きを語ろうとして――――――――。


「それには私が答えようミスター」


 それを前に進み出てきたグレフが受け継ぐ。やはり、亡きグレッセ王と肩を並べて戦った親友と言う立場なら知っている秘密だったらしい。

 彼が悠理とセレイナの間に立ち、当時を懐かしむような渋い顔になった所で物語りは始まりを迎える。


「ガールヴは王妃である“セリーシァ”様と合意の上で、セレイナ様の母親“ヨハリア・ベッフィーネ”様とも非公式ではあるが結婚していてな。幸運なのか今となっては不運なのか、同時にお世継ぎを身篭ったのだ…………」


 王と幼馴染である二人の貴族の娘。交流の果てにグレッセ王はセリーシァと結婚。

 ヨハリアは二人を祝福し、自身も後に結婚し身篭るが、夫に先立たれる――――と言うのが、世間に流れた情報。しかし、どうやら偽装だったらしい。


 どちらの娘の事も深く愛していたガールヴは、ヨハリアを愛人にはせず、正妻であるセリーシァと同じ様に接する為に非公式での結婚を行ったとのこと。そうして順調に二人と愛を重ねあった結果、二人は同時期に身篭る事になる。

 ――――が、そこで大きな問題があった。それは…………時期だ。


「お二人の子が産まれ様としていた時、我が国は隣国ヒャルアイとの戦争真っ只中でな。敵の間諜や、暗殺に敏感な時期だった。そして、それに対する対策としてお世継ぎを失わない為に――――」


 ――――二人の子を入れ替える事にしたのだ。グレフが苦々しく、搾り出す様にそう言った。

 大人が生まれてくる子供を利用したことに対する罪悪感。そんな印象を彼から感じ取った悠理は大体の事を察し、溜息を一つ。

 

「成程、非公式に婚姻していた事が裏目に出たのか……」


 公式に発表しているセリーシァとの子が死んだ場合、非公式になっているヨハリアとの子供が王位を継ぐ――――と言うのは何かしらの問題があったのだろう。

 だったら、二人の立場が逆であればいい。幸い、二人はまだ生まれていないのだから問題は軽い。


 どちらが王妃の子か世間に認知される前ならば、手の打ち様がある。それがすり替えだ。

 これはヨハリアが提案したこと。誓って言うが、彼女が自らの子を王にしたいが為に練った策略ではない。我が子に呪われ様とも、時期を考えれば国の為に出来る唯一の手。


 泣きながらに国の未来を訴える彼女についには王と王妃も折れ、この提案を受け入れる。

 そうして、同じ日の数秒違いで産まれた二人の子供は入れ替わることになったのだが…………。

 

「結局の所、今日まで暗殺の類はなかった。しかし、ヒャルアイとも決着が着いた訳ではない以上、この真実を明かす事も出来なくてな……」


 つまりセレイナは、二十数年に渡り第一継承者の影武者として過ごしてしまった訳だ。

 王家の血は間違いなく引いているし、住民や仕える騎士と臣下の反応を見るに、もうこのまま時効もので良い気がするが…………。

 例え王位継承権が二位だったとしても、彼女が今まで国にしてきた貢献は確かなものなのだから。

 

 しかし、それでもこの秘密を打ち明けたのには大きな理由があるハズ。何しろセレイナは今が絶好の好機だと思って告白したのだろうし。


 ちなみにセリーシァ王妃は出産後に病に臥せって数年後に他界、ヨハリアも元々丈夫な身体つきではなかった為、数年前に亡くなっているらしい。

 セレイナの姉である第一王女は、ヨハリアの病弱な身体を受け継いでしまい、ずっと屋敷の中で暮らしている。その為、多くの人々は彼女の存在を実しやかな噂で聞くだけで姿を見た事はないと言う。


 ――――実はその情報もフェイクで、実際は身分を隠して安全な場所で働いているらしかった。

 それらの真実を中央広場に集まった面々は各々真面目な面持ちで聞いていた。当然の事ながら、セレイナの人徳がな成せる技なのか、批判的な声は殆ど上がらない。


 かすかに上がった不満も『もっと早くに相談して下されば……』と言う、この件を知らなかった一部の臣下が拗ねた程度。これでセレイナへの信頼が揺らいだという事は無さそうだった。

 それに悠理は何処となく安堵した。どんな意図があるのか聴かされていなかったのだから、内心はハラハラしまくりだったのだ。


 ――――が、まだ終わりではない。むしろ本題は此処から…………。 

 彼がそう睨んだ通り、セレイナが大きく息を吸ってグレフの話を継いだ。

 これから語られる内容こそが、長き渡る秘密を明かした理由なのである。


「私と、王位第一継承者である姉さまは、幼い頃にその事を聞かされておりました。それを受け入れた上で私は第一王女として今日まで生きてきました。ですが――――」


 一度言葉が区切られ、セレイナが目を閉じる。思い浮かべるのは死に際の母――――ヨハリアのこと。


『ごめんなさいセレイナ…………。母親として何もしてあげられなくて…………ごめんなさい…………』


 荒い呼吸の中、彼女は唯後悔と懺悔の言葉を繰り返した。自分の提案によって実の娘に重い役目を押し付けてしまったこと。親としての愛情を、抱きしめることの温もりを教えて上げられなかったこと…………。

 泣きながら、息苦しさに耐えながら、何度も何度も謝罪する姿は唯ひたすらに痛ましくて。


 そんな母を見ていられなくて、実の子であるセレイナと彼女に育てられた王の娘は震えるその手を握り、こう告げた。


『大丈夫ですお母様。私達は幸せです。だからどうか、ご自分をお責めにならないで…………』

『そう…………良か…………った…………』


 その言葉を聴き、ヨハリアは泣きながら微笑むと、そのまま静かに息を引き取った。

 彼女達はその時に誓ったのだ。王家の人間として、母に恥じない立派な人間になるのだ、と。


 そうして、今日と言う日が来た。誓いを果たせているかどうかは解らないが、少なくともこれからする事は母親に対して、その誓いを守ると言う新たな宣誓の儀式だ。


 ――――お母様、セレイナは今日まで立派に役目を果たしました。これより、貴女が育てた姉さまにお役目を返します。どうか、応援してあげて下さいね?


 心の中でそう祈りを捧げ、彼女は二人の姫が決めた秘策を明かした。


「――――それも今日で終わりです! 此度の件を通じて、姉さまは表舞台に立つことをお決めになられました! 私は継承権を本来の主に返し、彼女の補佐に回りたいと思っています!」


 おお、と場からどよめきが漏れる。国が襲われ、王が亡くなったと思えば、次は今まで見た事も聴いたことも無い真の第一王女が新たな王となると言う。


 中央広場は不安半分、好奇心半分と言った感じ。ともかく、その人物を見ないことには話しならない。

 ――――セレイナは一瞬だけいつもの調子でニヤリと笑うと、次の瞬間にはキリッとした表情に戻って両手を広げた。それが合図だったのだろう。


「先ずは皆様に我が姉を紹介したいと思います。どうか快く迎え入れて下さると嬉しいです……。――――では、グレッセ王国第一王位継承者であるヨーナリア・アード・グレッセ、此処へ!」


 再び金管楽器の音が響いて、セレイナが現れた広場の左側ではなく、今度は右から絨毯が伸びていく。

 そして、そこから純白のドレスを纏った一人の女性が姿を現す――――――――が、悠理はそれを見てぎょっとせざるを得なかった。


「――――嘘、だろ?」


 信じられない。だって、そこに居た女性には見覚えがあったから。

 オレンジ色の髪を後頭部で結い、大きな胸を控え目に揺らす優雅な歩き方。


 悠理が知っている彼女なら、印象がほど遠いにも程がある。

 しかし、近付いてくれば来るほどそれは見知った顔で…………。


「参ったな…………お前がお姫様だったとは…………」


 ゆっくりと目の前に立った女性に苦笑が漏れる。共に過ごした数週間で随分失礼な態度を取ってしまったが、後で臣下一同に怒られないだろうか?

 ――――なんて思っていると、第一王女はいたずらが成功したとでも言うように微笑んでいる。

 それを見た悠理は降参したと言わんばかりに溜息を吐いてその事実を認めた。


「…………似合ってるぜ()()()?」

「ありがとうございます()()()()♪」

次回、ヨーハのターン!

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