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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
261/3922

終戦、グレッセ王都!・式典、宣伝、結婚宣言!?その三

ハッハッハッ、俺は俺で好きな様にやる!

――――と宣言した所為かどうかは解らんが…………ブクマが減った…………orz


まぁ、この間一気に増えたから、どうせ何人かは勢いで登録して暫くしたら外すパティーンだろうな、とは予測してたけどね…………。

 悠理の放った黒い粒と“生命神秘の気”。それらは中央広場の上空で交じり合い、七色の光を放ちながら、何かへと姿を変えて人々の頭上に降り注いだ。

 しかしてその正体は――――。


「これは――――花?」


 掌に落ちてきたものを見てノーレが呟いた。そう、それは紛れも無い花。

 空から次々と絶える事無く降り注ぐ。その光景に誰も目を疑いつつも酔いしれる。まるで自分たちが祝福されている様な錯覚さえ感じて。


「花の雨か……。派手な事をしよる」

『花の種が欲しいと言われたので適当に渡したのですが……成程、この為でしたか』


 グレフとリリネットは花の雨をその身に浴びながら感心した様に頷いていた。

 視覚的効果としてはインパクト十分な事この上ない。


 悠理はリリネットから貰った花の種を“生命神秘の気”によって急成長させたのだ。元々、“生命神秘の気”は生命進化の可能性を肥大化させるエネルギー。だから水や成長に必要な栄養素はそれで十分に補える。


 しかも、花は空中で増え続けている。“生命神秘の気”のお陰で有性、無性問わずの生殖が可能だ。あっと言う間に実り、種になって弾け、その種が再び花となって…………。

 そうやってグレッセ王都、中央広場の空は花で彩られていく。――――暫くして、もう増やすのは十分だろうと見て“生命神秘の気”を引っ込める。花の増殖は止まり、後はゆっくりと落ちていくだけだ。


 虹の光が収まった事で、幻想的な光景に魅入っていた人々もゆっくりと視線を悠理へ戻していく。


「これはレイフォミア様が私に与えてくださった力! この国を、大陸を、世界を救う七つの光!」


 ここぞとばかりに自己アピール。この力が神に与えられた偉大な力だと喧伝する。

 ――――単純に花咲か爺さん程度の事しかやっていないが、少なくとも悠理の力――――“生命神秘の気”の放つ七色の輝きはその幻想さも相まって特異な力である、と言う印象はつけられたみたいだった。


 既に住民の中には悠理を拝んでいるご老体も数多く居る程だ。

 ここまでは計画通り、問題はこの後だ――――カーニャを如何にして聖女としてアピールするかは彼の範疇外である。


「そして刮目せよ! この方こそ、守護神レイフォミア様を宿す聖女――――カーニャ様であるッ!」


 だが、ここまで舞台は整えたのだ。きっと上手くやってくれるはずとバトンタッチ! 

 ――――したのだが…………。


「――――え、えーと、カーニャです! こ、この度はお集まり頂きありがとうございます。アタシ……じゃなかった……。アタクシ? で、でもなくて――――」


 大勢の人々の前で緊張したのか、はたまた派手なパフォーマンスの後でハードルが上がったのか。カーニャは誰がどう見てもテンパっていて、明らかに聖女からは程遠いポンコツであった。

 その姿に住民達や、騎士達もポカーンとしている。セレイナはあちゃー、と言う感じで顔に手を当てていた。悠理があまりにも上手くやりすぎたのが、良くなかったらしい。


 ――彼女がしどろもどろになっている間に場のムードが変わりそうになりかけた頃。


「ああっもう面倒くさい! レイフォミア様ッ、後はよろしくね!」


 やけっぱちな叫び声と共にカーニャが瞳を閉じてレイフォミアにバトンを渡す。


(えー、俺バッチリ御膳立てしたのに……)


 兜の下で悠理は不満に唇を尖らせた。ここでバッチリ決めてもらわないと、前座としても、互いのお披露目としても意味を成さないのだ。不満の一つも言いたくなるだろう。

 しかし、彼女のあまりにも酷いポンコツっぷりを嘆くのは彼だけではない。


(ノーレ殿、カーニャ殿は、その――――)

(おい、あれでよく反コルヴェイ軍を集めようと思ったな?)

(す、すみません……。場が場ですから緊張しているのかと……)


 グレフ達の横で、ひそひそと話す三人。ファルールが言葉を探している内にレーレが実妹であるノーレに呆れ顔を向けていた。そう、当初の予定ではスルハで人集めをする際にはカーニャが立つ、と言う約束だった。


 だからこの場でも大丈夫だろうとの判断だったのだが…………どうやら想定が甘かったらしい。

 その所為でノーレの顔は気の毒なくらい真っ赤に染まっていた。

 ――――と、三人が短いやり取りを交わしている間に入れ替わりが終了したようだ。


 うっすらとカーニャが瞳を開けば、目の色が銀色へと変わっている、と同時に、住民達は違和感を覚えた。

 息苦しい。酸素を求めるように口が勝手にパクパクと動く。それが聖女と紹介された少女を見ている所為だと気付くのに、それほどの時間はかからない。

 言うまでもなく、レイフォミアがその力をほんの少しだけ解放したのだ。


 唯そこに存在しているだけでこの圧力…………。先程とは何かが違うと察し、人々は彼女から目を離せないでいる。そんな絶好のタイミングをレイフォミアは狙っていたのかも知れない。

 そう思わせるくらいに実に見計らったように彼女は喋り出す。


『――――皆さん、初めまして。大陸を守護させて頂いてますレイフォミア・エルルンシャードです。この度は私の部下が暴走し、皆さんに酷い仕打ちをした事、真に申し訳ありません…………』


 まず始めにレイフォミアが取った行動は謝罪。セレイナ以上に深々と頭を下げて住民にした仕打ちを詫びる。今度は人々からは何の声も上がらない。それはそうだ、彼女がどんな相手かも解らないのであれば擁護すら出来ないのだから。


 ――――まぁ、身体に圧し掛かるような感覚で声を上げる事が出来なかったと言うのが正しいのだが。

 だからこそ、レイフォミアは誰の許しも得られないまま自分から顔を上げた。その瞳は静かに使命へと燃えていた事に気付くものは居ない。


 ――――その横に居た甲冑の英雄以外には。


『ですから、どうか受け取ってください。これがワタシの気持ちです! アルゥソッ!』

「ハッ、授けられし英雄の力よ! 今こそ民を救う為、その力を見せよ!」


 名を呼べばまるで打ち合わせていた様に動く二人。セレイナ達は何も聴かされていない。

 下手に指定するよりも、各々にパフォーマンスをさせた方が効率が良いと思ったからだ。


 悠理の身体が眩しい程に輝く、それに呼応する様にレイフォミアの身体から黄金の光が立ち昇っていた。


『“祝福の創成”!』

「輝けぇッ! 英雄の力よ!!」


 そして二つの輝きは視界を封じる程に高まって、各々が一つに解け合うように絡み付いていき、それは天へと昇っていく――――。

 そして、光が激しく輝いて花火の様に弾ける。


「こ、これは? …………何ででしょう、とても温かい…………」


 ノーレが見上げた空から降って来たものに手を伸ばす。掌に落ちてきたのは――――ふわふわとした光の粒。

 それは自分の身体にすぅーっと溶け込んでいくと、胸の中がぽっかりと温かくなった様な気がした。


 周囲を見るとあちこちでも光が人々の身体に吸い込まれていくのが見える。皆一様に光を受け取ると穏やかな表情をしていたのもバッチリ確認した。


「今度は光の雨――――いや、雪と言った方が正しいのか」

「ふわー、綺麗なのじゃ!」

「ですがこの力は…………」


 ファルールはそれを雪と表現し、リスディアはその美しさにはしゃぐ。しかし、マーリィはやはり冷静。

 この光の雪が自分の想像通りならと、空から悠理とレイフォミアへ視線を戻した――――が、彼女の瞳にはぐったりしたレイフォミアが悠理に抱きかかえられている所が映っていた。


(大丈夫かレイ?)

(す、すみません…………。少し力を放出しすぎた様です。後はお願いしま――――)


 小声でやり取りを交わす。悠理は自身の祝福――――“悠久に輝く英雄”を使った事によって消耗していたが、それはレイフォミアがやった事に比べれば大した事は無い。


「おっと…………お疲れ様」


 言葉の途中でガクッと力の抜けた彼女を抱きかかえる。その表情はとても安らかなものだ。

 それはきっと、ここに至って自分が撒いた種の過ちを少しでも償えたからだろう。


「アルゥソ殿、この光は…………」

「ああ――――皆の者、聞けッ! この光は諸君が失った祝福を取り戻すためにレイフォミア様が魂を削って産み出したものである!」


 セレイナの疑問に対して悠理が簡潔に答えると、レイフォミアの重圧が消え去った住民と騎士からどよめきが起こった。レイフォミアはその力と魂を削って“祝福の元”を生成。

 これはカーニャ、ファルール、ノーレにした祝福の復元とほぼ同じ事だ。


 ――――と言っても、彼女達にした様な大きな効果は見込めない。何しろ広場に集まった人数は一万人近く。

 “悠久に輝く英雄”の力を使って限りなく強化を施したが、それが全ての人々に行き渡っても、復元できる可能性を高めただけに過ぎない。


 しかし、人々もそれは解っている。失ったハズの“祝福”の感覚が身体へ戻ってきた事に戸惑いはあれ、喜びの声の方が勝っていた。


「直ぐに効果が表れるわけではないが、諸君らが望む限り、祝福は必ず応え、その身に戻ってきてくれるだろう」


 これはレイフォミアの償い。自分の魂と命を削ってでも、部下が行った事への責任を果たす。

 大陸の守護神を名乗るのであればそれは当然の事。けれどそれを自然とこなすのは難しい。

 悠理は腕の中で眠る神様と少女を心の中で精一杯労って、人々に問いかけた。


「――――どうだろうか? 我等を英雄と神を宿した聖女と認めてくれるだろうか?」


 果たして、自分達がやった事が誠意として皆に届くのか? 不安があって、それと同時に期待もあった。

 下心と言われては元も子もないが、己はともかくレイフォミアがここまでやったのだ。どうか届いて欲しいと願う。


 もしも駄目だったら“生命神秘の気”による精神への“書き込み”と、“悠久に輝く英雄”を駆使して無理矢理認めさせてやる――――等という物騒な考えを、させまいとするかのように――――。


『ワァァァァァァァァァァァァァッ!』


 人々の歓声が邪な思考を遮った。どうやら認めてくれたらしい。信用させる為に前金を払った様でズルい気もしなくはないが…………。まぁ、認めさせてしまったもの勝ちだろう、と納得する悠理の後ろで…………。


「――――やれやれ。なんつーか、俺様も色々考えてたんだが…………出る幕なかったな…………」


 ――――素に戻ったセレイナの呟きが漏れていた。

次回、セレイナと秘密。

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