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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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内緒話と頼み事と伝説の予感

『いやぁ、良い湯だったな~♪』

 悠理とレーレがお風呂に入り始めて、気が付けば1時間ほど。

 思った以上に二人ともまったりしていたらしい。

 ――まぁ、背中の流し合いっこや、どちらが長く熱湯に浸かっていられるか我慢勝負をして遊んでいたのだが……。

「また一緒に入ろうな!」

『たっ、偶にならな……』

 そっぽ向くレーレの横顔は耳まで真っ赤で、満更でもなさそうな感じ。

 しかし、そこを突っ込むのは野暮というもの。

 彼女からその返事が聞けただけで悠理は嬉しかった。だから、それ以上は求めるべきでな無いだろう――今は。

「あっ、そうだレーレ。ちょっと頼み事があるんだが」

 ちょっと耳を貸してと手招き。素直に従って耳を寄せる彼女。

 そして、ヒソヒソと何かを呟く。

『――おいおい……正気か? いやまぁ、楽しそうだけどよ』

 耳元で囁かれた提案に驚き、呆れ、口の端を綻ばせる。

 成程、実に面白い提案だ、とレーレが愉しむ。

「――でやるのか? それとも無理なのか?」

『ハッ、誰に向かって言ってんだ? やるに決まってらぁ』

 鼻で笑い飛ばして手を掲げる、悠理にもそれに習って手を掲げ、打ち合わせる。

 パァン、と小気味良い音が鳴る。ハイタッチだ。

 今から二人は共犯者、これより迫り来るであろう脅威への先手にして、奇策。

 それを実行し、成功に誘う為の相棒。

 後に“最凶の双子修羅”、“無敵の双璧”と謳われたタッグの誕生の瞬間である。


「そうと決まれば色々と必要になるよな。モブアーマーとかグレフのおっさんに聞いてくるから、お前は部屋に戻っててくれ」

 言い終わる頃には既に駆け出していた。何処かワクワクした表情で。

 その後姿からも彼の楽しげな雰囲気が伝わってくるようだ。

『――ホント、お前は面白いヤツだよ』

 良かった、彼に付いて行こうと決意して。どうやら()()()()()()()、廣瀬悠理は。

 百年に一度、いや正体不明で破格の力を持っている時点で、それ以上の逸材。

 ましてや、死神であるレーレが()()()()とまで称するチカラ。

 ――彼ならば、確かに世界を変えることが出来るだろう。

 彼がもたらした変化が世界をどう動かすのか……。

『――今から楽しみだ。その時がな……』

 ――一番近くで俺は見守っててやるからな。

 部屋に向かって歩き始める。やがて来る未来に思いを馳せながら。その足取りは心なしか弾んでいる様に思えた……。

 そして……。

「…………」

 二人のやり取りを聞いていた影が――――一つ……。


――――――

――――

――


 ――次の日。

 客間に集まり、グレフを中心として作戦会議が開かれていた。

「ファルール殿の話によれば、本隊がこの街に到着するまであと二日……。グレッセ王に援軍要請を出す暇等なく、()()()()()()()()()()()()()()()()

 これも彼女からもたらされた情報の一つ。

 先遣隊が易々とこのグレッセ王国の領地内に侵入出来たのは二つの理由がある。

 一つは、内通者による手引き。旅の行商人や移住者など、様々な偽装を施して軍のチェックを通過した。

 二つ、現在別働隊がグレッセ王国に直接圧力をかけており、グレッセ王は奴等から目を離せない状態にある。

 これらの要因からスルハの襲撃が可能となった訳だが、まさか失敗したとは夢にも思うまい。

 この状況を逆手に取り、別働隊が情報を掴んで動くよりも先に、街へ来る本隊を叩く。

「問題はどうやって本隊を叩くか、だが……」

 降りかかった難題にグレフが頭を抱え、低く唸る。

 相手は2000、スルハからは出せても300、そこに鎧達を足して420、更に白風騎士団が加わってくれると仮定しても720。半分にも満たない。


「俺は戦いのド素人だが、基本的には篭城戦。足りない戦力は――知恵と勇気とスルハの技術力で何とするしかないな」

 壁に寄りかかりながら悠理が意見具申。続けて作戦内容を語る。

「使えるものは全て使う。この街全体に罠を仕掛けて敵を無力化、ないしは分断し、各個撃破。本隊に居るであろう()()()()()の相手は俺とレーレがする」

『しかしミスター、それは……』

 戦略としては真っ当な意見、だがそこにはやはりスルハの人々に対する配慮が欠けている。

 自分達の住む場所を守る為に、街に罠を張って()()()()()()。抵抗がない訳がない。

「割り切れよゴルド。そうでもしなきゃ一方的に蹂躙されるだけだぜ?」

 冷静に正論を突きつける。街を自分達の手で汚す事に嫌悪感はあるだろう。

 だが、後味悪い思いをしたくないが為に、最悪の結果を招く訳にはいかない。ここの住人全員に等しく、罪を背負ってもらう。廣瀬悠理はそう宣言する。

「――ゴルド、ミスターの言う通りだ」

『マスターグレフまで何を仰るのですか! ここは貴方にとって大切な――』

 ――大切な場所ではないか。命を懸けても惜しくないと思うほどに。

 そう叫ぶ愛しき我が作品(むすこ)に、製作者ちちおやは首をゆるゆると振って答える。


「ゴルドよ、お前の気持ちは嬉しい。だがな、ミスターの言う事にも一理ある。我々は傷つく事も、傷付ける事からも逃げてはいけない。何故なら――」

 ――何故ならそれがこの街にしてやれる唯一のことであり、スルハと言う街から学ぶべきことだから。

 スルハを胸を張って愛してると叫ぶ為に――――――今は自らの手で街を汚し、戦わねばならない。

「ミスター、我々は何をすればいい?」

 決意に満ちた瞳でグレフが問いかける。戦う決断をした人の顔はやはり違う。気迫が漲っている。

「悪いが、俺はその質問には答えてやれねぇ」

「ちょ、ちょっとユーリ!」

 言うだけ言った癖に、あまりにも無責任な悠理の発言にカーニャが詰め寄る。

「そう言うのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「はっ?」

「私達……ですか?」

 悠理が『ああ』と頷き、詰め寄ってきたカーニャの背を押して前へ突き出す。自然と部屋に居るメンバーの視線が彼女に集まる。

「ちょ、ちょっと待ってよ! アタシがリーダーって何よ!!」

「ん? 当然だろ」

「――何が…………っ!?」

 その時、頭に思い浮かんだのはあの言葉……。

 ――自分じゃ何もしないのに要求だけは一人前って事はないよな?

 まさかと言う思いを浮かべて悠理を見返す。そして――確信する。

 ――アタシ達にも出来る事をしろってことね?

 召喚された以上、カーニャ達の望みを叶えようとは思う。だが、全てにおいて頼りっぱなしというのはいただけない。

 彼女達と自分は対等である、少なくとも廣瀬悠理はそう認識しており、対等であるならばそうである事を示して欲しいと願う。

 自分は一方的に縋りつく為の神様ではないのだから……。


「勿論、()()()()()()()()()?」

「――上等じゃない……!」

 挑発的な視線に触発され、対抗心が湧き、己の心を突き動かす。そうだ、アタシも戦うんだ。戦って、戦って、戦って、戦って――――この手に掴まなきゃならない。失ってしまったものを取り戻し、望んだ未来へと行く為に……。

「――と言う訳だ。良いかグレフ?」

「ミスターが言うのであれば間違いはないだろう。カーニャどの、ノーレどの、我々に力をお貸しください……」

 立ち上がって頭を下げるグレフに名を呼ばれた本人達が慌てふためく。

「か、顔を上げて下さい……!」

「そ、そうですよ! アタシ達の方こそ、一緒に戦わせて下さいって言わなきゃならないのに……」

「――ふむ、では早速で悪いのですが――」

 そこから先は話の進みが速かった。

 場の勢いで、いや――――()()()()()()()()指導者が決まった事によって纏まりが出来た。

 後は皆に任せておけば自然と良い結果を引き寄せるだろう。そう確信して――。

(俺は俺の準備を進めますかね……)

 廣瀬悠理は密かに客間を退出する。そんな彼を廊下でレーレが待っていた。

 さっきまで、同じ室内に居た筈だがいつの間にか透明になって抜け出していたらしい。

「じゃあ、やりますか相棒!」

『あいよ!』

 短いやり取りを交わして肩を並べ歩いてゆく。二人は何処へ向かうのか? 果たして彼等は何をしようとしているのか?

 そして――――。

「…………」

 相変わらず、二人の動向を盗み見るこの影は一体誰なのか?

 全ての謎はこの日の晩に明かされる事となるのだった……。



眠い……。


土日で一気にイベント進めるのは精神的に疲れる……。


明日から仕事なので今日は早めに切り上げ。


修正などはまた今度。

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