終戦、グレッセ王都!・式典にはドレスアップして出ようその二
ごめんなさい…………、疲れが抜けず凄い眠い状態で書きました。
とりあえず投稿しますが、所メチャメチャなのでその内直しませう!
着付けも終わり部屋を後にした女性陣は宿屋のエントランスへ。
そこで手持ち無沙汰で待っていたリスディアが、カーニャ達に気付いて近寄ってくる。
「おー、綺麗ではないかカーニャ!」
「そ、そう? ありがとね、リスディア」
良く見ると彼女も簡素であるがおめかししていた。一応、元コルヴェイ軍所属と言う履歴と、大陸を救う英雄、そしてその召喚者である巫女――――あるいは聖女を同格の格好では不味いだろうとの判断だ。
この一週間でリスディアやルンバ達を住人達はキチンと理解してくれた――――とは思うが、やはり敵として攻めて来た相手。どんな些細なことで不満が爆発するか解らないし、それが原因となって争いが起きるのは避けたいところ。
故に悠理達に協力したと言っても、彼等よりも扱いは少し低い。最もそれはこうした式典などの公の場――――それも一般市民に見える範囲。セレイナや国としては、戦力増強、しかも実戦経験がある兵士が増える事には文句のつけようが無い。
――グレッセはこれから再建していかなければならない時期なのだ。例え何処の国の者で、過去に何があろうと、志を同じくするのならば手を取り合わねばならない。
戻ってきた家臣達の前でセレイナはそう宣言してくれた。今思えば彼女が率先して発言してくれたお陰で、こうして式典に漕ぎ付けられたのは間違いない。
式典は中央広場でやる事になるが、その為の準備は住民と解放軍の面々が共同作業で行った。
先述の通り、このアピールによってルンバ達の印象はある程度良くなっているだろう。
「ノーレ様も大変お似合いですよ」
「ありがとうございます。マーリィさんも侍女服を新調したんですね?」
「――――流石ですね。この微妙な違いに気付くなんて」
――――そうして、カーニャがリスディアの相手をしている間、従者であるマーリィは同じくドレスアップしていたノーレと会話中。どうやらこの二人は二人で盛り上がっている様だ。見るからにいつもとは違うテンションで、しかも楽しそうに談笑している。
『……お前解るか?』
「サッパリだ…………」
レーレとファルールは新調した――――と言うマーリィの侍女服を見つめる。けれどいくら見つめても違いなど解らず、そもそも二人にはいつものと同じ服にしか見えなかった。
――――などと口走ったら、ノーレの長ったらしい説明が始まりそうなのでやめておく。
「この姿を見たらあの獣面も鼻の下を伸ばす事間違いなしじゃな! さっきまでそこに居たのじゃが…………」
ドレス姿のカーニャをリスディアはさっきから絶賛しっぱなしだった。興奮気味で悠理も気に入ると太鼓判を押す。――――と、彼を探してきょろきょろと辺りを見回した。
「えっ、ユーリはもう着替え終わってるの?」
「ええ、一足先に。とても立派な姿でしたよ?」
慌ててカーニャも視線を巡らす。悠理は悠理で別の場所にて準備中のハズだ。
何やら、こう言うイベントの為に頼んでいた代物があるとかで別行動中である。
――――居るなら居るで、見られても大丈夫な様に心構えをしておきたカーニャだが…………。
幸か不幸か、今はこの場に居ないらしい。最も、リスディアとマーリィの話が確かなら近くに居るのかも知れないが…………。
『へぇ……、良し。じゃあ、冷やかしにでも――――』
「おー、着替え終わったのかお前等?」
レーレがその姿を探しに行こう――――と提案する前に、背後から聞き慣れた声。
それが彼であるのは疑うまでも無い。唯、ここで着替えたカーニャとノーレに緊張が走り、振り向くのが他の皆よりもワンテンポ遅れた。
「ああ、ミスター。これから丁度皆で行こうと――――」
僅かに速く振り返ったファルールが固まる。何だろうと気になってカーニャ達も振り返れば――――。
「……ん? どうした?」
「だ、誰よアンタッ!」
そこには白い甲冑に身を包んだ男が立っていた! 全体的に丸みを帯びた鎧、兜には男の美学たる角が生えており、それはさながら白いカブトムシを連想させる。
――――最も、ノレッセア出身の彼女達にはカブトムシを知らないのだけれど。
「誰ってアルゥソ・ツイターだよ」
「だから誰だってのよ!」
自らをアルゥソと名乗った男は親しげに話しかけてくる。カーニャはと言えば、警戒心剥き出しで突然現れた甲冑男へ吠え立てる――――が。周りの反応はと言うと――――。
『おぉ、随分様変わりしたじゃねぇかアルゥソ!』
「うむ、見違えたぞアルゥソ殿」
「何度みても御立派な姿です。アルゥソ様」
「うむ、カッコいいのじゃアルゥソ!」
――満場一致でアルゥソを受け入れていたのだった!
「わぁ~、職人の腕が冴えた素晴らしい甲冑! こ、この頭の意匠は何ですかアルゥソさん!」
「ああ、こいつはカブトムシって言う、俺の世界では名の知れた昆虫で――――」
「えっ、いや、ちょ――――だ、誰なのよぉぉぉっ!」
実の妹さえも――――いや、彼女の場合は見たこと無いデザインに惹かれて興奮気味ってだけかも知れないが。しかしアルゥソの存在を認めているのは間違いない現実。
自分だけが置き去りにされている感覚に、煌びやかな格好をしているのも忘れて叫ぶはカーニャは何と言うか――――平常運転だった。
「さっきからどうしたんだカーニャは?」
『立派な甲冑に見惚れてるんじゃねぇのか?』
「いやいや、ないからッ! ノーレならともかくアタシはないから!」
「もう、姉さんったら――――ポッ……」
――――否定しない所と、最後に口で言って恥ずかしがる様子を見るにノーレは本当にアルゥソの甲冑に見惚れている様だ。流石は情報と技術マニアである。
「つーか、折角綺麗な格好してんだから喚き散らすなよ。台無しだぜ?」
「うっ……、だ、誰だか解らない奴に褒められても嬉しくないんだから!」
ストレートな褒め言葉に思わず赤くなってしまうカーニャだが、自分の知らない相手にそんな事言われる筋合いはないと突っぱねる。
――――と、その言葉を聞いてアルゥソが思いっきり首を傾げた。現代日本で言う所の『は? 何言ってんだコイツ?』と言うヤツだ。
「は? お前――――もしかして聞いてねぇのか?」
「な、何がよ?」
「いや、だから――――」
アルゥソ――――悠理から語られた内容はこうだ。
言うまでも無くアルゥソ・ツイターは偽名。彼が用意した英雄の名だ。
これからグレッセ王国を地盤として活動する際にどうしても美談と英雄が必要になる――――なるが、逆を言えばそこがネックになるとも言える。このアルゥソと言うキャラクターは“人の目につき易く、騙し易い影武者”と言う立ち位置だ。
具体的に言うと、悠理の顔をこうして甲冑で覆い、偽名を名乗り上げる事でその存在感を一人歩きさせようと言うのだ。この鎧、名付けて“白金のアルゥソ”にはパーツの各所に埋め込んだ精霊石を使って“生命神秘の気”を操る事が出来る。
――――いや、悠理の様に使えるという訳ではなく。精霊石に貯蔵された“生命神秘の気”を放出する事が出来るだけだ。だがしかし、そうする事で如何にもグレッセ王国を救った英雄がそこに居るのだと錯覚させる事が出来る。
これは悠理の不在時、別行動中に使う為の囮兼影者と言う訳だ。今後はこれを有効に活用する事で、悠理の素顔や情報を無闇に拡散させないと言う情報戦の一環。
無論、この話は会議に参加するメンバーには伝えてあるのだが…………。
「…………って事なんだが」
「――――も」
「も?」
「勿論聞いてたに決まるじゃない! あ、あははー……」
――――どうやら伝わってなかった様である。
「――――そう言う事にしといてやるか」
『だな』
ここは見なかった事にしてやるのが礼儀、として、アルゥソ…………こと悠理は苦笑しながらレーレに同意を求め、彼女もまたおかしそうに笑っていた。その姿を見て悠理はふと、また首を傾げて…………。
「それはそうと、ファルさんとお前は何でドレス着てねぇの? 俺、超楽しみにしてたのに」
『………………』
「………………」
――――投下された発言に、二人は顔を見合わせて固まり…………。たっぷり無言で見つめあった後、慌てた様に回れ――――右!
急いで、早急に、早急に着替えなければ! と高級宿屋の廊下を猛ダッシュし始めたのだった。
『お、おい急げファルール! 時間に余裕ねぇぞ!』
「しょ、承知した!」
この後、セレイナが着替え中だったので、ヨーハが別の侍女を二人に紹介した。
そして、その人に連れられて滅茶苦茶ドレスに着替えたには言うまでもないだろう――――。
次回より、式典開始――――ちょっと前!