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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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終戦、グレッセ王都!・式典にはドレスアップして出ようその一

えー、今回は最高に不安定ですごめんなさい!


俺の技量が足りない事は元より、ちょっと私生活でげんなりする事があって精神力を削られた結果です…………。


だから今日は早目に切り上げて、確り睡眠をとって、明日は良い結果を残せたら思います。


おやすみなさい!

 ――――時はグレッセ城での決戦より一週間後。

 アルフレドやコルヴェイ王達を退けた事により、グレッセ王都には一応の平和が戻ってきていた。


 一応、と言うのは、街の活気、住民達が心に負った傷……。それらが何とか癒え始めた頃――――と言う意味だ。この一週間、悠理達は住民と騎士達の精神ケアに費やしたと言って良い。


 何しろ、操られていた騎士、住民達は一人残らず祝福を奪われていたのだ。産まれた時より持っていた自分の一部を剥奪された感覚は想像に難くない。

 それにこの世界――――ノレッセアでは、“祝福喪失者”になる事は最大のハンデであり、差別対象。


 この大陸南方グレッセではそこまで酷くないが、場所によっては奴隷として扱われる事に場所も少なくない。カーニャ達はその現状を憂いて立ち上がった訳である。

 ――――神や世界の危機なんて話が舞い込んで、いつの間にか悠理達の旅の目的が変わりつつあったが…………。根本としてはそれが始まりだ。

 

 ――――話を戻そう。グレッセ解放後、悠理達が人々を全力でケアして回ったお陰で街には活気が戻りつつあった。それとともに、アルフレドによって国が乗っ取られた際、グレッセ王が逃がした家臣達も殆どがこの国へと帰ってきてくれていた。


 実を言えば、悠理達解放軍には政治に詳しい者が殆ど居らず、セレイナとヨーハが中心となって指示を出していたのが現状で、国としての機能は必要最低限であったと言わざるを得ない。

 ――――と言っても、人と人とが手を取り合って傷を絆の力で乗り越えていく様は、国としては正しい姿だった様に思う。


 家臣達が戻ってきた事により、国としての機能はこれから段々と回復していくハズ。

 そこでようやく時間が出来た――――と言う訳で、終戦から一週間目の今日、簡単な式典を開く事となったのだ。この戦いで活躍した悠理達はただいまその準備の真っ最中で――――。


――――――

――――

――


「……ねぇ、これ本当に着なきゃダメ?」


 グレッセ王都の高級宿、その一室ではカーニャ達が式典に出る為にドレスアップをしていた。

 普段の動きやすさを重視したカーニャの服装は、一転して煌びやかな純白のドレスへと変わっている。


 露出が極端に少ないデザインは、清純さの表れか。いつもは活発な印象の彼女も今回ばかりは良い所のお嬢様にしか見えない。

 肌も髪の毛もつやっつやだ。式典の為に朝から準備してもう昼前になる位、そりゃもう入念な準備だった。それもそのハズ。カーニャは今回の式典では重要な立場として紹介されるのだ。


「なぁ~に言ってるんですか! 大陸を救う英雄と神降ろしの巫女様の御披露目ですよ? 派手にやらなくてどうするんですか!」

「あ、あははは……」


 侍女として本来の仕事を全うできるのが余程嬉しいのか、ヨーハはうきうきとしながらカーニャのドレスを着付けしていた。そのテンションの高さに、既に着替えを終えていたノーレが苦笑した。


 ――――そう、カーニャは“神の代行者”として紹介される。それは今後起こるであろう、大陸北方――――コルヴェイ王率いるアムアレアとの戦いに備えての布石…………。


 倒せたハズがない。絶対に生きている。誰もが、彼を退けた悠理本人もそう確信していた。

 アルフレド達だってきっとまた襲ってくる。今度こそ、この国を守りきる為にも強力なカリスマ性が必要だ。そしてそれは大げさ方が、派手な方が良い。


 ――――この世界に迫る危機から人々を救う為、神の力を借りて勇者を召喚した少女…………。


 色々とチグハグな部分もあるが、カーニャもノーレも概ね了承している。どの道、彼女たちが掲げる“奴隷解放”を目指す為にも戦力や国家の力は必須。

 何やら国民の怒りに着け込んで利用しているみたいで、後味が悪いのは確かだが…………。


 ――――それでもやると決めたのだ。それに、どこかで大義名分を得なければ弱りきっているこのグレッセは他国に易々と侵攻を許してしまうだろう。

 そうなってはこの国を奪還した意味が無い。戦いになれば悠理達も当然協力を惜しまないだろう。しかし、これからは戦わずにして勝つ事、他国が戦いを避けたがる理由も必要となる。


 即ち、大陸を救う為に神が使わした英雄と協力を結んだ国――――と言う大義名分。

 式典の内容は伝達系の祝福によって近隣諸国にも届けられる。レイフォミアが製作した一時的に映像を閉じ込める精霊石も用意済みだ。これで大陸南方に揺さぶりをかけると共に、協力を仰ぐ。


 やや殴り込み商法、脅迫気味な方法だが、世界の限界がいつ訪れるか解らない今となっては時間が惜しい。大義名分を笠に着た侵略行為と言う批判も浴びるかも知れないが、そこはセレイナが『任せろ!』と汚名を被る事も厭わず約束してくれた。


 だからこそ、今日ここから新たな戦いを彼女達は始めるのだ。――――よって、今はその為のおめかし中である。

 

『お前は着ねぇのかファルール?』

「私は騎士だ。鎧姿こそが正装である」


 部屋の中にはカーニャ、ノーレ、ヨーハの他に、護衛としてレーレとファルールも居た。

 今回はあくまで悠理とカーニャの披露式なので、二人はドレス姿ではない。ノーレは『神を宿した少女の妹』として、無理矢理着飾られただけ。


 ――――いや、式典の正確な目的はグレッセ王国で何が起きたかを住民に包み隠さず知らせ、その不安を取り除く事が第一。


 先に延べた通り、今後の戦いに向けての布石という面も確かに重要だが、一番始めに企画した段階では国民の為と言う理由が一番だ。

 ――結果として政治的な要素がふんだんに盛り込まれた事に関しては申し訳ないとして。


「う~……、何回着てもこう言うドレスって苦手なのよねぇ……」

「あら? 舞踏会の経験でもおありでしたか?」

「え? あ、あぁっ、子供の頃にちょっと、ね……」


 着付けされながらも、どこかそわそわした様子のカーニャはつい自分の過去…………その一部を漏らしてしまう。これはもう毎回の事。しまった、と言う表情で妹の顔を覗き見る。そこまで含めて毎回のこと。

 ――――補足するに。この様なドレスを一般階級が着る機会など殆ど無く、運良く国主催の舞踏会へ参加が許されたとしても、それが数回も続く事など有り得ない。


 故にヨーハはこの会話からカーニャが貴族か、大規模な商人の娘である可能性を思いつく。思いついただけで、乙女の失敗に追及まではしなかった。


「――――そう言えばヨーハさん。こちらのドレスはどなたのなんですか?」

「んふふ~♪ それはひ・み・つ! ですよ~!」


 今回は大して怒って無さそうな感じで、ノーレのフォローが飛ぶ。カーニャはホッとしながらも妹が指摘したドレスに視線を向ける。

 そこには二着のドレス。一着は黒、もう一着はカーニャと同じく純白。


 片方の黒いドレスはセレイナが着るものだろう。彼女は長身である為、特注品であるのは明らかだ。

 しかし、もう一方は誰が着るのか解らない。ヨーハも含み笑いをしながら全力で煙に捲くつもり満々である。


『つーか、王家の持ち出し品なんだよなこれ? セレイナのにしては胸元が大きくねぇか?』

「亡き王妃様の物なのではないか?」

『あぁ、そっか』


 レーレとファルールもまた件のドレスを見て話に花を咲かせる。確かにレーレの指摘どおり、胸元が大きく露出するデザインになっていた。ちなみに、用意された服は全て王家からの持ち出しである為、どうしてもセレイナを基準に考えてしまう。


 それを考えるとノーレに合うサイズが存在する理由が説明出来ないのだが、ファルールの言葉によって疑問は氷解。グレッセ王妃がグラマーだったのかは謎であるにしても、その可能性がゼロで無い限りはそれで納得してしまえるのだ。


 ――――ちなみに、カーニャが着ているドレスはセレイナが幼少時に着ていたものであり、その事は彼女には伏せられている。悪しからず。


「おーい! まだ終わらねぇのか?」


 胸元が大きいドレスの謎が解明された所で、廊下からセレイナの催促。どうやら痺れを切らしているらしく、イラついている訳では無いだろうが、落ち着きない様子が扉越しでも伝わってくるかのようだ。


「もう少しですよ~。……はいっ、これでどうですかぁ?」

「――うん、特に変な所は無いわ」


 着付けが終わり、鏡の前でクルリと一回転。水色のツインテールと、純白のドレスがフワリと舞う。

 特に着崩れてた箇所も無く、緩いと言う部分も無い。流石は王女専属侍女、丁寧な仕事っぷりだ。


「良かったぁ! じゃあ、皆様は先に降りてて下さいね? 王家の仕来たりでセレイナ様のお着替えは見せられないので」


 仕事を完璧にこなせた事に満足してヨーハは笑顔を見せると、そう言ってカーニャ達を追い出した。

 ――――が、彼女達は後に知る。そんな仕来りはなかったのだ、と…………。

次回、謎の甲冑男現る!

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