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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その十

仮眠のつもりががっつり寝ちゃって慌てて書きました(焦)


何とか書けましたが雑な感じは否めなさ過ぎて申し訳ねぇッ!


――――くそぅ、減ったブクマの分を取り戻したかったんだが、このザマじゃ難しいよなぁ……。

「コレが――――最期の一撃だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「その程度ッ――――――――むっ!?」


 電撃が滞留するコルヴェイ王の掌へ悠理の拳が吸い込まれる――――が、当然の結果と言うべきか、バチバチと爆ぜる紫電に受け止められ、彼の一撃が王へ届く事はない。

 しかし――――。


「う………ぅぅ…!? ――――ァァァアアアアッ!!」


 ――――何も考えが無かったなど有り得ない。廣瀬悠理の諦めの悪さは折り紙つき。

 唸り声と共に悠理は塞き止めていた力の奔流を解き放つ。


 身体中のヒビから闇が――――“小宇宙の創成”が溢れ出す。それだけではない。

 まだ無事だったハズの突き出した右腕にも亀裂は走り、そこからも闇色のエネルギーは飛び出す。

 電撃を呑み込もうと、紫電に喰らいつく…………!


「勇者よ…………お主は――――!」


 悠理の変化にコルヴェイ王は悟る。彼は己の言葉通りに、この一撃を最期にするつもりなのだ。

 目の前の敵を打倒する為に、命を真っ赤に燃やし尽くすつもりなのだ。


 その証拠に、悠理の身体は現在進行形で崩壊しつつある。全身に次々と新たな亀裂が入り、そこから“小宇宙の創成”が噴出す。衰える気配は一切無く、身体を黒く染めながらも、コルヴェイ王を打倒せんと力を振り絞り、拳に力を込め続ける。


 ――――そして、その気迫にコルヴェイ王がジリジリと押され始めた。


「コルヴェイ王様!?」


 傍観者であるルシアンがその事実に驚愕を露にする。

 圧倒された訳ではなく、あくまでほんの僅かに押されたと言う程度。それを証拠に、王の身体はもうその場から動いてはいない。


 身体中に紫電を纏って、悠理の“小宇宙の創成”からその身を守り、闇を払わんと電撃を浴びせかけている。――――が、しかしあの男は屈しない。


 一瞬で死へと到着してもおかしくないハズの電撃を身体に浴びた――――ハズなのに立ち続けている。

 それは何故か? いやいや、それは考えるまでもないこと…………。 


「い、命知らずですわ……!」


 ――――馬鹿げている。ルシアンは思わずそう叫んだ。電撃を受けても怯まない理由は彼女の目に確りと映りこんでいた。

 ――――闇色の肌。悠理は暴走する力を解き放ち、あえて全身を浸食される事で自身のステータスを底上げしたのだ。ゲームで例えるならば、相手の属性攻撃を吸収、無効化する術…………と説明するべきだろう。


 しかし、その代償は自らの破滅を意味し、死を覚悟しなければ使えぬ禁断の術。

 そこまで…………そこまでするのか? 異世界から召喚されたとされる男が何の為に、その命を賭けるのか。

 ルシアンには到底理解出来ぬ男の意地が、そこにはあった。


 ――――そして、当然の事ながら、その姿は彼の勝利を願う女性達の目にも映りこんでいた。

 ボロボロになりながらも必死に、誰かの為に戦う…………英雄の姿が…………。


「ユ、ユーリっ!」

『あの馬鹿野郎…………また無茶を…………』

「ミ、ミスター…………」


 カーニャとレーレは何とか立ち上がるも、それで精一杯と言った様子。

 ファルールに関しては、コルヴェイ王の一撃で未だ立つ事叶わず。そもそも、セレイナが庇ってくれなければ今も気絶していたに違いない。隣で小さく呻くセレイナの様に…………。


「ユーリ……様……」


 最後に彼の名を呼んだのはヨーハ。瞳を閉じ、勝利を祈る様に手を組む。

 ――――どうか、どうかご無事で…………と。


 祈りが通じているのか、それとも男の意地が奇跡を起こしているのか。悠理は未だ倒れる事無く王へと喰らいついている。


 やがて、悠理の首が殆ど真っ黒に侵食された頃、コルヴェイ王が口を開く。一つの疑問を問質す為に。


「自分の死をそうも簡単に肯定するか? お主には――――――――野望も希望も無いのか!」


 どんな人間にも希望があり、野望がある。家族と平和に暮らしたい、今よりも高く強い権力を手に入れたい…………。理由は様々だが、それはそのままそっくり生きる理由と成り得る。


 コルヴェイ王もそうだ。胸に野望を抱き、あらゆる手段を講じてでも叶えたい願いの為に戦い続けている。それが叶うまで死ねないと。

 覇王と呼ばれた彼ですら生きる事に執着を見出していると言っても良い。だと言うのに――――――――この男はどうだ?


 生きて願いを叶え様と思っているとは到底思えない。何しろ、自ら死へと向かっている有様。

 そうまでして戦う理由が果たしてあるのだろうか? 大陸を救う為に召喚された男とは言え、それは命を賭けてまで成さねばならないことなのだろうか。そこまでする理由など、召喚されてからの短い間で出来るものなのだろうか…………。


 それは純粋な疑問。長い年月の恨み辛みで成り立つ自分には到底理解しかねる考え。

 だから問う。それに対して悠理は烈火の如く、怒りを宿して解答した。


「――――馬鹿言ってんじゃねぇよ…………。野望も希望も――――あるに決まってんだろうが!」

「ならば何故――――!」

「俺の後は――――――――誰かが継いでくれるさ!」


 その言葉にコルヴェイ王がはっとする。この男は命を投げ出している訳ではない。

 唯の命知らずならば、こうも自分に喰らい付くことなど出来はしないのだから。


 ――――誰かに思いを託す。それはとてもシンプルで、人間ならば誰でも思い願うこと。

 連綿と未来へ受け継がれる人の意志――――それは命そのものと言っていいのではないだろうか?


「その誰かの為にも…………、俺は――――――――道を残すんだよッ!」

 

 廣瀬悠理は生きた証を残す為にこうして戦っているのだ。しかし、理解したところで――――。


「――――大馬鹿者がぁッ!」


 ――――認める訳にはいかない。コルヴェイ王が持つ願いは誰かが継いでくれる様なモノではない。

 自分が叶えなければ、叶えようとしなければ道は断たれる…………だから。


 二人は唯、互いを否定しあう為に戦うしかない。

 全てを喰らい尽くそうとうねる暗闇と、闇をも否定し切り裂こうとする紫電。


 この二つの力の攻防は激化する一方だが、いずれどちらかが倒れるのは必定。

 そして残念な事に、それは悠理の方が不利だ。顔以外の殆どが黒く染まり、力を放出しているにも関わらず、コルヴェイ王を圧倒する要因には成り得ない。


「――――クソッ…………! 身体が…………持たねぇっ」


 おまけに身体は限界を当に超えている。今だって意地と気力で何とか立てているだけだ。

 最早、彼には接地している感触すら怪しいものになっていた。そうして決め手を出せないままにコルヴェイ王の力が…………増す。


「今度こそ――――塵化せ勇者よ!」

「ッ! 俺はぁっ――――!!」


 膨れ上がる電撃に負け堪るかと闇を放出させ続ける。これじゃ埒が明かないと知りながらも、諦める訳にはいかなくて…………。そんな馬鹿げた意地を貫こうと、躍起になろうとして――――。


「ユーリッ!」


 耳へ届いたカーニャの声にハッとする。目の前に立つ覇王から視線を外して、その後方に居る少女へ目を向けた。

 そこには八つの瞳があって、四人の女性が自分の事を見ている事にようやく気付く。

 その瞳も決して疑っていない。己の勝利を、生還を、その証拠に…………。


「負けんなぁぁぁぁぁっ!」

『負けんじゃねぇぇぇっ!』

「負けるなぁぁぁぁぁっ!」

「負けないでぇぇぇぇっ!」


 ――――彼女達から叱咤激励が飛ぶ。負けるな、その言葉は何よりもシンプルで力強くて、悠理の胸に真っ直ぐと突き刺さって…………。


「――――――――――――――――――――あったりめぇよぉッ!」


 それに応え様と悠理も叫ぶ! 身体の何処からか力が溢れてきてそのまま彼の力へと目に見える形で変換されていく! その力はコルヴェイ王の目にもはっきりと映っていた。


「何だ……この光は?」


 悠理の身体を七色に輝く“生命神秘の気”が包む。だが、それは以前にも増して強烈な光を放っている。

 そして、特に輝きを増した色は――――青と緑。


 これはアルフトレーンを立つ前夜、レイフォミアからの入れ知恵によって、悠理が“蒼天と蒼海の生命神秘”と“大樹と新緑の生命神秘”を覚えさせられた事による変化だ。


 英雄の力を強制発動させた事で、カーネス戦では存分に発揮できなかった真骨頂――――――――限界の限界を超えた今になってようやく発現したその力…………それは黒く染まった悠理の身体に吸い込まれていく。

 そして、消えたと思った七色の光は、彼の中で星の様に輝き始める。


 “生命神秘の気”と“小宇宙の創成”の融合――――それは本当に宇宙の様な光景だった。

 一人の人間と言う銀河を表したのが後者なら、その命の輝きを表したのが前者。


 二つの力の統合はかつてないほどのエネルギーを生み出していく。身体から噴き出る暗闇には星の輝きが入り混じり、全てを切り裂こうとする紫電の雷を打ち消し始めていた。


「…………っ! 我が押されて――――」

「オォォォォォォォォオッ!」


 そしてここで――――ダメ押しが入った。悠理の身体が――――真っ白に輝く。

 それは言うまでもなく英雄の力――――――――“悠久に(ユーリ)輝く(ライト)英雄(ヒロイック)”!


 世界を救う為に神レイフォミアから授けられた力。それは崩壊していく悠理を包み込み、彼を蝕む“小宇宙の創成”も、“生命神秘の気”も、コルヴェイ王の放つ電撃すら吸収して力へと変換。


 更に一際強烈な光が瞬いたと思えば、悠理の身体は瞬時に再生されていた。この事実に本人は気付いていなかった様だが…………。


「とどぉけぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」


 自身に与えられたあらゆる力を駆使し、その結果得た真っ白に輝く拳が遂に紫電を圧倒する。

 今までの苦戦が嘘の様に彼の拳は電撃を蹴散らし、コルヴェイ王の掌を弾いて彼の胸へと突き刺さったのだ!


「グ、ヌォォォ…………ッ!」


 殴れた衝撃で、ズザザと後退する覇王。電撃の他に纏っていた防御も何もかも、一切合財無かったことにされた。それでも何とか耐えようと脚に力を込めるが、胸には悠理の拳から放たれた光が留まっており、彼の身体に衝撃を与え続けている。


 その衝撃たるや、歴戦の覇王が全力を出しても押し切れぬ力であるのは、見る者が見れば直ぐに解っただろう。故に、その場でたった一人だけコルヴェイ王に仕える女性の行動は迅速だった。


「コ、コルヴェイ王様ッ!」


 瞬時に主の後ろへ現れたルシアンが強烈な光に押される王を抱きとめた。


「ルシアっ!? 離れ――――」


 珍しく狼狽した声でコルヴェイ王は部下へ退避を促すが――――女にだって退けない時はあるもの。

 それが主の危機であるならば尚更だ。


「――――貴方様を死なせはしませんッ!」


 そう叫んだ彼女の身体から紫色の光が放たれる。そして、その光が二人を包み込んだと同時、悠理が放った光が爆発する様に輝いて――――。


「…………ど、どうなったの?」


 ――――視界を焼く程の閃光が消え、カーニャが目を擦りながら周囲を確認する。


『コルヴェイ王達は居ねぇみたいだな…………』


 次いでレーレの声。その場にはもう敵対する存在が居ないのは解る。

 ただし、コルヴェイ王達の生死は不明。恐らくは生きているだろうと推測し、彼女は警戒を続けた。


「か、勝ったのか?」


 不安気に、ファルールが呟く。確証が何一つ無く、戦闘に参加すら出来なかった身からすれば、判断できないの仕方ないと言えた。


「ユ、ユーリ様は? ユーリ様はご無事ですかっ!!」


 敵が居なくなったのを確認してヨーハが叫ぶ。慌てて悠理が最後に立っていた場所を見れば――――そこに居た。…………居たが、彼は仰向けに倒れたままピクリとも動かない。


 先程と同じ様にきっと立ち上がる――――と、今度は思えなかった。何しろ目の前で起こった激戦に勝利した事の危うさは彼女達にも想像できたからだ。


「ま、まさか…………本当に?」

『馬鹿野郎ッ! そんな訳あ――――』


 カーニャが不吉な言葉を漏らせば、レーレが声を張り上げて否定しようとして…………。


「……………………」


 ふと、視界に変化が起こった。先程まで倒れたまま微動だにしなかった悠理が、その右拳を空へと突き上げている。まるで――――俺の勝ちだ! そう主張する様に。


「あ、あぁっ…………! ユーリ様ッ!」

「ユーリッ!」

「ミスター!」

『――――し、心配させやがって!』


 その姿に四人は傷ついた身体を引き摺って、我先にと駆け寄る。

 戦いは終わったのだと、そう確かな安堵感を覚えながら――――。

次回、終戦の式典編。

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