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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
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強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その九

――――友人と遊びに行って、帰宅し、執筆を始めたのは二時間前…………。


な、なんとか終わったぞ!


歩き疲れ&乗り物に疲れたか粗があるかも知れないけどね…………。


そういや、更新する前に見たらブクマが増えてたぞ。やったぜ。

 ――――――――悠理の命と魂を燃焼させた空間の大爆発…………。


 それはグレッセ城玉座の間、あおの天井を丸ごと消失させるほどの規模だった。

 丁度玉座の位置から上部分は始めから無かったかのように綺麗サッパリ。雲一つ無い晴天、真上に輝く太陽がその場に居た者達を照らす。


 影は二つ、悠理とコルヴェイ王のもの。だが、そのシルエットがグラリ、片方が倒れた。

 無念にも倒れたのは――――――――。


「う、ち、ちくし――――ょう……」


 ――――悠理だった。心の底から悔しそうに、目には泪させ見せながら前のめり…………。

 そのまま――――ピクリとも動かない。きっと、もう一度、諦めずに立つハズだ――――しかしそうはならない。顔のヒビから溢れていた“小宇宙の創成”の流出も止まり、亀裂だけが生々しく彼の肌に名残として刻まれているのみ。


 ここに――――勝敗は決したのだ。最期の最期まで足掻きはしたが…………このザマ。

 しかし、コルヴェイ王も無傷だったとは言い難い。何せ、彼は奥の手を使ったからこそこの戦いに勝利できたのだから。


「――――我に龍の力を使わせるとはな……」


 バチバチと覇王の周りで空気が爆ぜる。音に合わせて宙を走る光の筋…………。

 それは――――――――紫電。強大な雷の力が滞留している。彼の王が更なる力を隠し持っていた事は悠理も感じていた。――――勘付いてはいたが、これはあまりに強大。


 想像以上に凶悪な力の具現。覇王の身体を守る様に宙を走る紫電はまさにソレ。あまりに圧倒的な力は、命を賭けて放たれた一撃すら、容易に防いでしまったのだ。

 呟きの中に“龍”と言うワードが入っていたが――――それが悠理の耳に届く事はない。故に、その謎は謎のまま、指摘される事も無く流れて行く…………。


「コルヴェイ王様ッ! 御無事ですか!?」


 天井が消失した事に気付いて慌てて飛んできたのだろう。フードで隠れていても焦り顔が想像できる位に、ルシアンは慌てて現れた。

 主に近付くこうとして――――大きく飛び退く。今だにコルヴェイ王の周囲は紫電による防御が張られている。そこに飛び込んではひとたまりもない。


「ルシアか、問題ない。……アルフレド達は?」


 指を鳴らして紫電を消し去りつつ、彼は訊ねる。この場には彼女と悠理、そして己以外の姿は無い。

 爆発に飲まれたのかアルフレドの姿が無い。

 簡単に死ぬとは考え辛いし、死んでもらっては彼としても困る。共犯者達は互いの利益だけの為に協力する。


 だからこそ、その利益が回収できるまでは持ちつ持たれつ、だ。コルヴェイ王が神の側近の安否を気に掛ける理由はそれだけで十分。


「アルフレド様、アイザック様は回収済みです。撤収の頃合いだと思いまして……」

「大義である。――それにしても、だ」


 部下の手際を褒めながら、コルヴェイ王は『不可解だ』と悠理を見て思う。


「この者の力――――一体誰が与えたものだ……」


 今までに感じた事のない種類の力…………。無重力を強いる暗黒の空間、宇宙と言う彼等が掴んでいない概念。ファンタジーなこの世界では未だ解明されていない情報。

 それを握り、能力へと変えた男…………。始めから与えられていたとは考え難い。


 悠理は明らかに戸惑っていたし、未知なる力に焦りすら抱いていたからだ。戦いの中でコルヴェイ王はそんな印象を抱いていた。

 だからこそ、本人にも得体の知れない力――――その出自は非常に興味を抱かざるを得ない。


「コルヴェイ王様?」

「――――考えてもせんなきこと……か」


 ルシアンが王の異変に首を傾げると、彼はゆるゆると首を振って未練を断ち切った。

 戦いは終わったのだ。気にはなるが、それでも終わりは終わり。計画の障害に成りえる存在は排除しなければと、冷徹に斬って捨てる。


「さらばだ、異世界の勇者よ!」


 右手を悠理へ向ければ、そこには先程と同じ紫電。空気が爆ぜながら暴力的なエネルギーを高めていく。

 既にルシアンはコルヴェイ王の背後に退避。背中越しから事の成り行きを見守る。


 二人の視線、その先に居る男はやはり動かない。いや、例え動けたとしてもこの一撃は――――防ぐ事叶わぬ。そうして無慈悲に電撃が放たれ様として――――――――。


「――――させるもんですかぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 その場に響き渡る少女の怒号と共に、コルヴェイ王達を切り刻まんと刃が殺到する!


「っ、カーナリーニャ!?」


 驚きにルシアンが振り返ると、やはりそこにはカーニャが居て、悠理を殺させまいと祝福を駆使していた。現れた千を超える剣の群れ。


 無名の刃達は各々が複雑な動きを持って相手を翻弄しようとする。しかし――――――――相手が悪い。


「フンッ、手緩いぞッ!」


 悠理へ放つつもりだった電撃を、右手を掲げて空へと放出する。真昼だと言うのに、解き放たれた紫電は視界を真っ白に染め、耳を轟音が劈く。

 カーニャは瞬間的に危険を感じ、自分の周囲を召喚した剣で守った。音が止み、視界は一瞬だけに喪失したが、徐々に戻ってくる。


 そうして彼女が見た光景は――――自分が使役する剣が粉々に砕かれ、光となって消えて行く様であった。


「うっ……、ま、まだよ!」


 逃避したくなる様な現実を受け止めたカーニャは次なる行動へ出る。

 再度、剣の大群を召喚。しかし、今度はざっと八百本、見るからに弱体化しているが、無いよりはマシだ。今度は操作に意識を最大限振り分ける。


 出来るだけ時間を稼がなくてはならない。悠理がきっと――――立ち上がると信じて…………。

 カーネスがそうした様に、カーニャもまたその行為に命を投じる決意をする。


 その後ろから――――。


『カーニャッ、レイ! もっと気張りやがれ!』


 飛んでくるのは乱暴な声援(エール)。それはレーレのもの。

 少しふらつきながらも、カーニャの少し後ろに立ち、原初精霊アーキダインを召喚。二人の援護をするべく、コルヴェイ王達を取り囲ませた。


 ――――悠理によってコルヴェイ王達の戦いから弾き出されたカーニャとレイフォミア。

 彼女達はその間にレーレ達と合流。仲間達を回復させここまで駆けつけたのだった。


「やれるかファルール?」

「勿論ですセレイナ様!」


 レーレに少し遅れる形で、セレイナとファルールも駆け込んでくる。各々が剣を構えてコルヴェイ王へと狙いを定めた。少しも臆する事無く、果たすべき役割を重んじて、戦いへ挑む。


「――――ユーリ様っ! はぁ……はぁ…………っ、ユーリ様は――――ぁ!?」


 最期に登場したヨーハが倒れこんで微動だにしない悠理に息を呑む。口を両手で押さえ込み、悲鳴と、最悪の事態が己の言葉で具現化しない様に無理矢理口を噤んだ。


 しかし、その顔色は悪い。ここで悠理が死ぬことなど有り得ない――――そう信じていても震えは止まらないし、頭には最悪の結末がチラついて離れなかった…………。


「揃いも揃って……余程こやつが大事とみえる――――が、女子供が集まった所で……!」


 誰もが悠理を助ける為に集まって来たのだとコルヴェイ王は悟り、ならばと再び紫電を解き放った!

 荒れ狂う電撃が飛び散って床を砕き、石飛礫が辺りに降り注ぐ。


 そしてその紫電はカーニャ達にも当然牙を剥く。


「うっ、くぅっ……! お、押さえきれな――――きゃあっ!!」

「カーニャッ!」

「馬鹿ッ、お前も防げっ!」

『チッ、ヨーハ! 俺の後ろに――――うおっ!?』

「――――きゃあぁぁぁぁ!」


 ――――規模から考えれば、それは悠理へと放つハズだった一撃の十分の一にも満たないと解る。

 けれどもそれで十分だったのだ。たったその程度で――――カーニャ達は成す術も無く倒れ伏してしまったのだから…………。


「う……、な、何なのよっ……この力は……」


 剣も、アーキダイン達も尽くが破壊、消滅した。破壊力の次元が違いすぎる。

 いつか打倒すると決めた相手の力はここまでの者だったのかと、カーニャは歯噛みし、恨めし気にコルヴェイを睨んだ。


「無駄ですよカーナリーニャ。コルヴェイ王様は貴女が知る頃よりも遥かに強くなったのですから」


 知りたくも無い事実を教えられ、カーニャがルシアンを睨みつければ、彼女はまたコルヴェイ王の背中へと身を隠す。そうして視線が合うのは――――北方の覇王。


「カーナリーニャよ、この程度で我を止められると本気で思っておったのか?」

「う……るさいっ! アタシをその名前で……呼ぶな……!」


 その目は限りなく冷たく、発言の所為もあって自分を見下して居る様に感じられ、不愉快極まりない。

 絶対に屈してなるものかと睨む瞳は決して逸らさなかった。それが負けない為の強さだと頑なに信じて――――叫ぶ。

 

「アタシはカーニャッ! 大陸を救う英雄と共に歩む女よ!」


 この時、彼女は初めてコルヴェイ王達に名乗った。今の自分はお前達が知るカーナリーニャではないと。

 戦乱が渦巻くこの大陸を、奴隷としてお前達の良い様に扱われている人々を救う為に立ち上がったのだ。


 ――――アタシとノーレが召喚した勇者と共に!

 誇りを叫べ、決してそれを穢されるな。否定させるな! 今ここに居る意味を見失わない為に、ここへと辿り着けた道程を無意味にしない為に!


 強き信念、揺ぎ無い意志を瞳へ宿し、カーニャはコルヴェイ王に徹底抗戦の構えを崩さない。

 それを見たコルヴェイ王は呆れた様に鼻を鳴らして、笑う。――――どうも苦笑に近いものだった。


「フッ、相変わらず口だけは達者だな……」

「――――いいや、そうでもねぇさ……」


 コルヴェイ王の記憶に確かに存在するカーナリーニャとの思い出。ソレを懐かしむように瞳を閉じた時――――――――背後から聴こえるハズのない声。


 ゆっくりと振り返れば、そこにはゆっくりと立ち上がる悠理の姿がった。


「ユーリッ!?」


 カーニャ達が信じた通り、彼は立った。驚きに目をぱちくりさせる彼女に、悠理はウインクを一つ送って前を向く。コルヴェイ王は、やはりと言うべきなのか、呆れた様に悠理を見ていた。彼が何かを告げる前に悠理が先に口を開いた。


 ――――カーニャを馬鹿にするな、と。


「お前等にどんな因縁があるか知らんが、こいつは一筋縄じゃいかない女だぜ?」

「知った風な口を……」

「どっちがだよ? お前等が知ってんのはカーナリーニャってヤツだろ? ここにいるカーニャを見てねぇんだろうが」

「――――何だと?」


 会話が一旦途切れ。コルヴェイ王のこめかみがピクリと動き、対峙して初めて感情が揺れ動くのを悠理は感じていた。感情の名は――――――――怒り。


 何が気に障ったのかは知らないが、少なくとも突かれたくない部分を突いたのは間違いないらしい。

 王の背中に隠れたルシアンが慌てたように、落ち着きを無くし、オロオロとしている。


「さぁ、決着つけようぜコルヴェイ王。これが俺の最期の一撃になるだろう」


 パキパキと指を鳴らして、悠理が右拳を握りこんで構える。

 術理も何もない唯のド直球(ストレート)を放つだけの構えを。


「ちょ、ちょっと! 最期って――――」


 彼から発せられた不吉な言葉にカーニャは追及しようとしたが――――その時にはもう手遅れ。


「例え倒せなくても、コイツらに道は残してやるぜ!」


 ――――悠理は床を思いっきり蹴っ飛ばしてコルヴェイ王に殴りかかっていく!

 王は憤怒を瞳に滾らせ、右手に紫電を収束し、無慈悲に蛮勇を示そうとする男へ向ける――――が、電撃を解き放つ直前、そこへ吸い込まれるように叩き込まれたのは――――――――。


「――――おォォォォォォッッ!」


 ――――悠理の拳!

次回、決着!

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