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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
252/3922

強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その八

うおぉぉぉぉ! 書けた!


書けたけど凄いグチャグチャになってしまった!


隙を見て修正コースだなこれは…………。

「勇者よ、久方ぶりに本気を出してやろう! ハァッ!!」

「ヘッ、ありがたい事で――――ぐぅッ! …………クソッ、全力でぇ……迎え撃ってやらぁ!!」


 再び数多の剣を召喚し始めるコルヴェイ王。本気と言うだけあって、表情に真剣さが宿る。眼光だけでもビリビリとした威圧をこれでもかと言う程に感じる。


 悠理は迎え撃とうとするが、身体中に入ったヒビから“小宇宙の創成”が溢れ出し、彼の肉体を苛む……。

 ――――時間がない。どうしても焦りが募る。コルヴェイ王を撃退するまでは決して倒れない覚悟であるが、こればっかりは気合で最期まで持たせるのは難しい。


 今でさえ悠理はいっぱいいっぱいなのだ。胸の内で暴れ続けるエネルギーを何とか抑えつけ、こうして戦えているのは奇跡に等しい。


 だからこそ焦るのは仕方がないと言えよう。だが不幸な事に――――――――その焦りは加速させられる。


「――――跪け、数多の剣、そして……」


 剣を召喚するコルヴェイ王、その数ざっと千五百本。カーニャが召喚した数と同じだが、一本一本の質はこちらが遥かに上。名剣、名刀のオンパレード。

 キラリと光る刀身からは限界まで洗練された鋼がまるで意志を持った様にとてつもない威圧感を放っている。

 

 三百六十度、所狭しと並ぶ白刃。

 切っ先は全て悠理へと向き、王の処刑宣告を待ちわびている。――――が、悠理が焦ったのはその更に先の光景だった。


「おいおい……冗談だろ?」


 ――――あまりに馬鹿げた光景に眉をひそめるしかない。何故って、所狭しと並ぶ名剣、その空いた隙間を埋める様に新たな力がそこへと顕現されたからだ。


 炎、風、水、隕石、雷、光…………。ノレッセアに存在する闇を除いた六属性が、各々攻撃態勢を完了していた。こちらも王の合図を待つようにゆらゆらと揺れ動く。

 悠理が驚愕したのは、彼が創造した宇宙にて属性を生成した点にある。


 暗闇に包まれたこの世界において、属性を生成するエネルギーは原則遮断される仕組み。

 ――――と言うより、悠理が生成した空間には闇以外のエネルギーが一切無い。


 闇属性は空間と密接な関係があり、コルヴェイ王やカーニャの剣召喚、アルフレドの能力を借り受ける力は空間系なので例外。

 ルシアンも空間系の祝福持ちであるが、アレはまたルールが違う。だからこそ、彼女は能力を封印されこの場では役立たずとなってしまった訳だ。


 しかし、コルヴェイ王が見せた能力はそうではない。悠理はこの空間の支配者であるから、召喚系の能力なら空間の震えを感知可能だが、それらは一切感じなかった。

 ――――つまりは、彼は何らかの方法で空間の法則を無効化、或いは闇を別の属性に変換する術を持っている可能性が高い。


「我の祝福は“祝福を支配し、使役する”力。大陸北方統一の為に奪ってきた祝福は数知れず、その総てを意のままに扱える」


 ――――やはり、と悠理は更に顔をしかめる。コルヴェイ王の祝福はカーニャ達から聞いてはいた――――が、やはり実際に体感するとなると厄介なことこの上ない。

 身構える悠理を見据え、王が問いかけた。


「――――さぁ、異世界召喚者。この世界へ降り立った勇者よ。お主は切り抜けられるか?」

「――――上等ッ!」


 質問に中指をおっ立てて強がる悠理。その行為にどんな意味が込められているか知らないであろうコルヴェイ王は、それでもニヤリと笑って挑発を受け入れ――――指を鳴らす。

 それを合図として、剣が、闇を除く全ての属性が、牙となり爪となって襲い掛かろうと動き出した!


「うおぉぉぉぉぉぉ、震えろ! 俺の宇宙!!」


 殺到してくる数の暴力に咆哮する。迎撃準備はそれでオーケー。

 彼の叫びに呼応して空間が地震が起きたかの様に揺れ動き始めたのだ。


 悠理を基点として周囲の空間がグニャリと曲がった――――様な気がする。相変わらず、彼がここで使用する能力は黒一色か、透明なものだけ。

 けれど、曲げられたと思われる箇所に到達した剣、各属性が同じ様にグニャリと曲がって潰されていく。

 その様を見せられれば、気の所為ではなかったと言う事がよく解る。


「強引に捩じ伏せるつもりか……!」


 王の口から漏れたのは呆れか感嘆か。いずれにせよ、悠理の行動に強引さを感じたのは同じこと。

 その防御は固く、既に召喚した剣の十分の二は耳障りな金属音を響かせ破壊された。


 属性攻撃も同じ、爆発音、破裂音を掻き鳴らしては消えていく。

 群がる剣達の所為で悠理の姿は殆どコルヴェイ王には見えない。


 ――――だから、彼が数の暴力をものともせず攻撃態勢に入っていたのに少しばかり遅れた。


「オラァッ――――何っ?」

「甘い、一度見れば警戒して当然」


 腕を振るい、“黒き放物線”でコルヴェイ王を狙う――――が、手応えを感じつつも、潰れた剣の隙間から見えた彼の姿は…………無傷。


「我の周囲には祝福による障壁が幾層にも重ねられている。数百、数千の防御を一気に打ち破るのは不可能。――それが例え、お主が使う得体の知れぬ技でも……な!」


 明かされたトリックはやはり数の暴力。ありったけの力を使って練り上げられた絶対防御。

 物理と精神、あらゆる論理を積み上げて作られたこれは祝福と言う能力を詰め込んだ言わば集大成。人類の知恵の塊と言えるだろう。


「うぉぉぉっ、コルヴェイ王ォォォォォォッ!」

「来い勇者よ、その力を存分に振るうがいい!」


 見せ付けられた能力を超え、王へと一撃を加えようと悠理が吼える。

 その様を見ながら覇王が更に攻撃の手を強めた。追加で召喚された属性攻撃が雨霰の様に降り注ぐ。


「捩じ伏せろ! “黒い歪み”!!」


 ――――が、ここで悠理が神業を披露する。自身の周囲に小さなブラックホールを複数形成し、向けられた波状攻撃を凄まじい勢いで駆逐していく。その神業を行う為に、抑えていた力を少しばかり解放してしまった。

 お陰で顔のヒビは更に広がって、溢れ出る“小宇宙の創成”の量も増大。力が増していく代償に彼の身体はますます滅びへ近付いていく…………。


 命を吸わせた対価として、視界が徐々に開けて行き、コルヴェイ王のをその目に捉える事に成功する。

 しかし――――。


「空間をも超えて集え、“七つの理”。我が掴むは虚空の槍、総てを貫き、滅ぼし、無へ還せ。例えそれが――――根源を同じくする力であろうとも」


 ―――悠理がコルヴェイ王を視認した時、彼は新たな技を披露しようとしていた。

 王の周辺を巨大な属性の塊――――炎、水、隕石、風、雷、光。そして目には映らなかったがそこには闇のエネルギーも加わり、グルグルと渦を捲くように回転している。


 そしてそれらの属性は惹かれ合うようにくっつき始め、融合と分解を繰り返していく。

 最終的には何もかも消えてしまった。少なくとも目にはそう映る――――が、悠理の脳と本能は激しく警鐘を鳴らしていた。


 ――――アレは不味い!、と。


「降り注げ、虚空の矢。我は掲げ、後にそれを叩きつけるだろう。この一撃を以て我が名を知るがいい。我こそ――――」


 コルヴェイ王は透明な何かを確りと掴んで投擲の姿勢に入った。彼が作り上げたもの、それは――――――――虚空。

 メノラが大淫魔アルレインに対して使用した切札、七属性の反発によって生み出された破壊のエネルギー。だが彼女が使ったものとは当然完成度が違う。


 アルレインに向けられた虚空は針の様に細く小さかった。けれども、コルヴェイ王の手に握られているのは大人の二の腕くらいの太さ。長さは正確には測れないが、大体二メートル程度。

 それが――――――――悠理へ向かって今――――。


「――――覇王なり!」


 ――――――――投擲された! 全力投球と言った豪快な投げっぷりを披露するコルヴェイ王。

 ごっ、と音速の壁を突き抜けた音が鳴り、更に先の口上の如く、槍は小さな矢となって分裂。

 矢は雨の様に点ではなく、面を埋め尽くして、回避は許さぬとばかりに悠理へ降り注ぐ! 


「オォォォォォォォォォォッ!」


 正面にありったけの“黒い歪み”を作って防御する悠理だが…………吸い込んだ破壊エネルギーの処理が追いつかない。ブラックホールの内部で凄まじい爆発が起きて、中から破壊しようとしているのだ。

 “黒い歪み”が爆発の度に膨張し、衝撃が悠理の身を激しく揺らす。吼えて気合を入れ、持ちこたえようとするが――――。


「ヌゥンッ!」


 ――――止めの一撃。追加で放たれた虚空の槍は今度は分裂しない。真っ直ぐに“黒い歪み”に突き刺さって――――――――大爆発を引き起こす!


「ウ…………? うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ブラックホールが弾けて特大の衝撃波を生んで悠理の全身を打ちのめす。自分が作った空間の中をグルグルと回転しながら無様に吹き飛んでいく。

 それでも、幸運な事に身体から噴出し続ける“小宇宙の創成”のお陰でダメージは最小限に抑えられていた。


 ――――と言っても、それは死なずに済んだという意味で、ヒットポイントは危険域(レッドゾーン)

 某特撮の巨人で言うのなら、制限時間を示すタイマーがピコンピコンと点滅している状態。


 所謂、ほぼ限界へ達している。“小宇宙の創成”の侵食も勢いを増して悠理から肉体の自由を奪いつつあった。絶体絶命とはこのことである。


「あ、…………う……クソッ…………!」

「所詮はこの程度か…………。如何に強力な持っていようとも、それに振り回されていてはな」


 動かない身体を叱責する様に毒を吐くが、状況は好転しない。全身へ力を入れようとしてもビクビクと痙攣するだけ。

 その様を見たコルヴェイ王が悠理を詰る。彼の言葉は全く持って真実を射抜いていて、反論のしようもない。


「終わりだ勇者よ。お主に世界は重過ぎる。お主では救えぬ。絶望を噛み締めて――――死ね」


 ――――死刑宣告が降る。まともに動けない悠理へと、王は三度目になる虚空の槍を生成しようと、再び属性の塊を召喚するが…………。


「――――そいつはどう…………かな?」


 虫の息である悠理の一言でピタリと手が止まる。その瞬間、先程空間を歪めた時の様に空間が振動し始める――――が、さっきとは比べ物にならない程の激しい揺れが起こっていた。


「――――ッ!? お主、まさか――――――――」


 慢心創痍の身体で人が出来ることなどたかが知れている。

 けれどそれは、たかが笑う事が出来ぬほど必死さが溢れ、詰まった行動。

 それは日本人特有と言っていい戦術。その名を――――――――神風特攻!


「俺の作り出した宇宙はこれにて終焉を迎える…………。行くぜ? 死なないように気をつけな!」

「チッ――――!!」


 言い換えれば自爆。揺れと共にこの空間は急速に狭くなっている。

 残った最期の力を振り絞り、空間を極限まで圧縮して解き放つ。


 それは例えるのなら――――――――“宇宙の(ビッグ)誕生(バン)”。

 悠理が最期に放つ最大の抵抗。命の煌き、存在した証。


 自分の人生を走馬灯として見る時間など必要ないと言わんばかりに、彼は力を解き放った!


「砕け散れ! “終焉宇宙の残響”ッ!!」


 空間が極限にまで縮まり、悠理もコルヴェイ王も強力な重力に捕まってしまう。

 やがて、縮退し臨界を迎えたエネルギーがパンっと小気味良い破裂音を響かせた後――――轟音と共に爆発が空間を飲み込んでいった……。

次回、無念に倒れる。

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