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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
247/3922

強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その五

うっし、うっし! 体調が良いかは解らないけど、少なくとも悪い状態ではない。


ブクマも増えたし、土日ともアクセス数1000越えってのは始めての体験かな?

普段これ位やれてればもっとブクマも増えるんだろうけどねぇ…………。


俺の小説の何処を誰が気に入るか解らないし、難しい問題だよな。

まぁ、気長にやるさ。

「ここは――――何処だ?」


 ――コルヴェイ王の襲撃に倒れた悠理が目を覚ます。しかしそこは見知らぬ場所、グレッセ城玉座の間ではなかった。そもそも、一面の景色は暗闇。何も見えない。

 闇の世界で悠理はその身体に浮遊感を覚えていた。ゆらゆら、ぷかぷかと、黒い空間に浮かぶ。


 そも、地面所か、何処が上で下かも解らない。海の中では口から溢れ出し空気を頼りにすれば良いと聞くが…………。この場では役に立ちそうもないのは明白。

 いや、それよりも一番先に思い出さねばならぬのは自身に何が起きたか、だ。


「確か、俺は誰かに攻撃されて…………」


 見えない敵、視認不可能な一撃。カーネスとの戦いを終えて、どこかにホッとしていた自分が居たのは否めないが、それでもあれほど簡単にやられたのは何故なのだろうか?

 ――――自分は常に格上の敵とも戦ってきた。気持ちはいつだって挑戦者。力に対しての驕りはない、だから油断とは無縁のハズだ。


 それでも、ああも一方的にやられたのは――――――――力に差があったからなのか?


「俺は――――死んだ、のか?」


 自身よりも格上の誰かに一瞬にして葬られ、あっけなく無念の退場となったのだろうか…………。

 何ともやるせない気持ちになる。もしも、本当にここが死者の辿り着く場所であるのならば当然のこと。


 ――カーニャ達との約束は果たせなかったのだろうか? そう思うと、胸が締めつけられる様に痛む。

 この気持ちと、胸の痛みを幻だと思いたくは無い。思いたくは無いが――――自身が如何に致命傷を受けたかはよおく知っている。


 だからこそ、暗闇の世界は失墜の象徴にしか見えなくて…………。でもそれを認めたくなくて、悠理は足掻こうとする。手足を必死にバタバタと動かして、抵抗しようとした。


 そうしていると――――。


『――――――――』

「誰、だ?」


 ふと、気配を感じて振り向く――――するとそこには黄色に輝く“何か”があった。

 いや、もしかしたら居た、と言うのが正しいのかも知れない。何故なら、それは酷く中途半端ではあるが、人の形と言って良いシルエットを保っていたのだから。


 悠理の言葉への解答なのか、黄色の光は力強く瞬いた。 


『――――』

「え――――ここが俺の精神世界?」


 言葉は無かった。無かったけれど、悠理には不思議とそれが何を言いたいかは解っていた。

 それにしても……、ここが己の精神世界とは俄かには信じ難い。

 そもそも、暗闇が持つ意味とは得てして悪いものが多い。


 秘匿、隠蔽、恐怖、人の心に潜む負。狂気と闇。

 この世界が示すものは悠理自身にそう言う特性、あるいはそれらを宿すべき器、その本質があると言う事だろうか?

 彼は自分が真っ当な善人でないとの自覚はあったが、そこまで根暗じゃないよなー俺…………などと陰鬱な気持ちでその事実を受け止めようとして――――気付いた。


「…………っ、まるで宇宙じゃねぇか」


 そう、改めて暗闇に目を凝らして見れば、うっすらとした煌き。

 距離感もあやふやだが、きらきらとしたか細い、けれど確かな――――輝き。


 夜空に瞬く星の様に、街が灯す明かりの様に。ぼつぼつと浮かびあがる光。

 そうして悠理はやっと気付く、暗闇は確かに暗闇だが、絡み付く様な誰かを陥れんとする悪意は、そこにはないと。夜空の如く、或いは宇宙空間みたいに透き通った黒。


 思わず魅入ってしまう。自身の心がここまで澄んでいると自惚れはしない。

 けれど、そうありたい。素直にそう思える程にその光景は――――美しかった。


『――――――――』

「この景色も、俺がここに居る事にも、意味があるって?」


 瞳に映る小さな宇宙を堪能していると、再度黄色の光は輝く。

 一体何者なのか解らない。ここが悠理の精神世界だと言うのならば尚更。

 だが不思議と敵意は感じない。むしろ、どこかで見知った誰かが居てくれる様な奇妙な安心感すら覚えるほどだ。


『――――』

「何? 解ったならさっさと行け? おいおい、俺はまだ――――」


 どうやら、黄色の光はせっかちらしい。悠理は未だ己の精神世界に意味を見出していない。

 ――――だと言うのに、今は目にしただけで十分だ。そう言われた気がして…………。


「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 ここが宇宙だと言うのなら、それはブラックホール。突如、何もかも吸い込むような気流に、悠理は成す術も無く飲み込まれて――――。


――――――

――――

――


「俺がどうしたって?」


 ――――目を覚ましたと同時に悠理は宙へと浮いてた。状況は良く解っていない。改めて眼下に広がる面々を見ると…………。

 苦しそうに咳き込むレイフォミア、やたらガタイの良い壮年の男。恐らくは自身を攻撃した誰かだろう。

 そして、フードを被った女性とアルフレド。――――カーネスは…………居ない。


 多分、彼は戦って倒れたのだろうと予測。胸の中にその推測を留めて、事実の確認は一旦頭の隅に追いやる。今はこの危機を乗り越えねばならない。


 目覚めたばかりだと言うのに脳は驚くほどクリアな状態。――――それとは裏腹に、自身の内から溢れ出そうとする凶悪な力の奔流も感じているが…………今暫くそれは抑えておくべきだと理性で手綱を握った。

 ――――――――が。


「やれやれ、どうやら全然元気みた――――――――」


 アルフレドが凄く嫌そうな顔で悠理を見上げようとして、驚愕に目を見開き、顔を引き攣らせた。

 悠理は悟る――――抑えきれていない、と。


「な、なん、だ、それは?」


 彼等を見下ろす様に宙へ浮かぶ悠理だったが、その身体――――詳しく言えば背中から黒い何かが溢れ出ていた。それこそが悠理の内で暴れる新しき力、その奔流。

 ――――己が精神世界を認識、触れた事による能力の覚醒。


『ユ……ーリ……さん?』


 異変を感じ取ったのはレイフォミアも同じ。廣瀬悠理と言う男が途端にあやふやな、途方も無い存在へと変貌してしまった様に感じる。有体に言えば、得体の知れないモノへの――――恐怖。


 恐ろしさで震えるまでのレベルではないが、悠理がそんなモノへと変質している様な気がして、彼女は唖然とする他ない。

 戸惑うレイフォミアに気付くと、彼はいつもの彼らしく笑って言った。


「よぉ、レイ。動けるなら直ぐにこの場から離れな! 今の俺はちょっと――――」


 レイフォミアとカーニャの心配をしつつ、右手で胸をぎゅっと掴む。

 ――――頼むから暴れんじゃねぇぞ? そう祈るしかなかった。何故なら彼自身も未だにその力を把握できていないのだから……。


「――――ヤバイぜ…………!」


 そうして背中に滞留する黒い“何か”を解放する悠理。それは瞬く間に玉座の間を飲み込んで――――――――。


「むっ?」


 覇王が小さく唸ると同時、周囲一帯が暗闇に飲まれる。コルヴェイ王達は闇には取り込まれず、その存在を保っているが、果たしてどういった効果があるものなのかは様として知れない。

 また、レイフォミアと彼女が居る位置も同じく闇に飲まれず、色を残していた。…………が、それ以外は黒く染まりきっている。それが意味する所は――――。


「コルヴェイ王様ッ! あ、あら?」


 ルシアンが王の身を案じて近寄ろうとする――――とその身体はフワリと浮いて、あらぬ方向へと流れてしまう。


「これは――――身体が…………!」


 続いてアルフレドもそれを体感する。突如として身体が軽くなり、本来あるべき圧力から解き放たれた感覚に戸惑う。空を飛ぶのとは似ている様で違う。

 彼等はその感覚を知らない。いや、悠理自身も原理は良く解っていないが、何が起きているかは大体解った。何で自分にそんな事が出来るのかは、やっぱり謎だったが。


「運が悪かったなお前等! 今の俺は暴走状態だし、この力が何なのか解らねぇ――――が」


 悠理が掴んだ能力の効果、それは――――この暗闇が覆った空間は無重力になる、という事。

 彼等は普通なら体感できない無重力の感触に大いに困惑している。――――たった一人を除いて、だが。


 そのたった一人に向かって悠理は闘志に満ちた視線と言葉を送る。


「――お前がコルヴェイ王だって事は何となく解った。あってるよな?」

「いかにもだ。異世界から来た勇者にして、同族の“神殺し”よ」

「“神殺し”? あー、良く解らねぇが…………。とりあえず、お前をここで倒しちまえば後々楽だって事で良いのか?」

「――――フッ、誰に何を吹き込まれたのか知らんが…………。我を打倒できると思っているのか?」


 ――――覇王対自由の使者…………。遠い未来に起こるであろう対決が、今グレッセ城で実現しようとしている。止める者は居らず、その資格を持つ者も――――やはりこの場には居ないだろう。


 何よりも、当の本人達はそれを望んでいる。眼前の敵と刃を交える事を――――望んでいる。


「へっ、勿論! 言ったろ? 今の俺はヤベェって、なッ!」


 戦闘の火蓋を切る様に、悠理が右手を掲げ雄叫びを上げる。


「ウオォォォォォォォッ!」


 背中から溢れ出す暗闇が悠理の掌に収束していく。それがどんな力を秘めているかは彼自身も知らぬ。

 けれど、こうするより他ないとの直感に従い力を練り上げていく――――が。

 突如、彼の頬に黒い線が走る。ピシっ、と何かがひび割れるような音。

 その線が首筋から伸びている事と、そこから黒い“何か”が溢れ出ているのに気付いたのは、たった一人無重力に捕まっていないレイフォミアだった。 


『ユーリさんッ!? まさか、それが――――――――』


 ――――“生命神秘の気”の代償だと言うのですか?

 そう、彼の背中には“生命神秘の気”を使った負荷によって出来たヒビがあった。黒い“何か”はそこから漏れ出ている――――となれば、それが七色に輝く光を使う者が辿り着く破滅…………。


 もしくはその末路というべき――――暴走状態。何が起こるか予測不可能な危険状態。

 一刻も早く止めなければ! 動き出そうとするレイフォミアだが…………もう遅い。


「ぐうぅっ! 力を貸せ、俺の――――内なる宇宙よ!」


 悠理は眼前の男と戦うべく、その力を解き――――――――放つッ!

次回、その力の正体は?

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