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召喚者は究極自由人!  作者: 暮川 燦
第一章・召喚されし男とグレッセ王国編
246/3923

強襲、グレッセ王都!・覇王との邂逅、目を覚ます深淵その四

うぃー、それなりに書けたんじゃないかな?


台詞に対して説明多め。

――――えっ、いつもの事だろって?


まぁ、いつもよりその傾向が強いってことさ。

『っ!? カーネス!』


 ――――コルヴェイ王との激闘の末、強烈な一撃を叩き込む事に成功したカーネス…………。

 しかし、その代わりに彼は玉座の間を突き抜け、身体は外へ放り投げ出されていく。ゆっくりと倒れ、宙へと墜ちて行く光景を目の当たりにしてレイフォミアが叫ぶ。


 だがどうやっても間に合いはしない。それに今は悠理の治癒が最優先。

 この役目を放り出したら、カーネスは一体何の為に身を盾として戦ったのか?

 彼が賭した最期の希望を守る為にも、この場から動く訳にはいかず、人一人も満足に救えぬ身を彼女は嘆く。その悔しさを示すように手が固く握られていた……。


「まさか……コルヴェイ王様に血を流させるなんて……」


 傷ついた主の姿に驚きを隠せないルシアン。もう十年以上も彼の王に仕えている彼女だが、負傷したコルヴェイ王の姿など大陸西方ラスベリア女帝“ジェミカ”との戦い以外では殆ど初めてだ。


 いくら“遊戯”と称していても、王は常に全力を尽くすお方。故にカーネス相手に油断、手心を加えたと言う事は有り得ない。亡霊の意地が、貫き通すべき矜持が、覇王たるコルヴェイ王に一矢報いた……。


 ――そう認めざるを得ない。主に傷をつけられた事については怒り心頭であるが、素直に褒め称えるべき健闘であり、胸中は複雑だ。


 カーネス・ゴートライ…………。もしも、彼が生き残り、再びコルヴェイ王の前に立つ事があったら…………。

 ルシアンはそんな妄想をした。可能性は限りなく低い――――低いが、もしもの話とはそんな高い低いに関係なく行われるもの。

 だから彼女はその妄想を止めはしない。亡霊の騎士が復活し、再び王とまみえる事があるのなら、と。


 ――――その時は脅威となっているかも知れない。そんな可能性を秘めた男であると、コルヴェイ王の四姫たる彼女は予感した。同時に今ここでその未来が潰えかかっている事に安堵したのも間違いなく本音。


 カーネスが墜ちて行った壁をルシアンはフードの下でずっと睨みつけるのであった。

 そんな彼女の横で、警戒心とは別に同じ場所を見つめている者がいた。言うまでもなくレイフォミアだ。


『――こうなったら、ワタシが時間を稼ぐしか……!』


 未だ悠理は復活の兆しを見せない。顔色は良く、呼吸も整ってきている。

 だがもう少し、後一歩足りない。ほんの少しだけ時間が。

 ――――稼がねばならない。そのほんの少しの時間を。闘志と決意で持って立ち上がり、彼女は覇王をにらみ付けるが…………。


「それは無理だ。小娘に潜みし神よ」

『コルヴェイ王……』


 口の端を流れた血を手の甲で拭いながら覇王たる彼はゆっくりと近付いてきていた。

 嘲笑うわけでもなく、油断しているなどと言う事もない。唯々、ありふれた真実としてレイフォミアに不可能である事を告げる。身体中から滲み出る闘気は覇気へと昇華し、更なる戦いへの備えである事は窺い知れた。


 今度は――――本気だ。祝福を使うつもりで居る。確実にこちらを仕留めるという強い意志の表れ……。

 カーネスには取らなかった本気の態度をコルヴェイ王が取った。そこまでは解る。

 しかし、そこにはレイフォミアの知らない因縁が含まれている。正体こそ解らなかったが、彼女は身の危険をビリビリと感じていた。


 殺意、怒り、恨み、そのどれもがない交ぜになった感情。好意的でないのは一目瞭然。

 ――――しかし、当然ながら覚えない。それもそうだ、コルヴェイ王は二十数年前に歴史上で突如名を上げた男。レイフォミアは二百年前より眠りへと着いていた身。


 因縁を持ち込む余地はない――――ハズだ。けれど何か、ある。

 逆恨みでも何でもない、シンプルなほどの感情の昂ぶり。それは目に見えて明らか。


 故に――――彼から与えられた情報に大陸の守護神は驚愕を露にする事になる……。


「我は“祝福殺し”を超える“神殺し”。この世に残った二人――――いや、そこの男を含めて三人の内の一人だ」


 レイフォミアの前に立ち、顎で悠理を示しながら自身が何者であるかを語る。

 そも“神殺し”とは一体なんぞや? それはコルヴェイ王の一言でほぼ説明がつく。


 ここでメノラの事を思い出して欲しい。彼女の瞳と力は、千年前には珍しくなかった“神”と呼ばれる存在に与えられたもの。

 “神殺し”はそんな時に生まれた者達――――対神仕様の“祝福殺し”。或いはこう呼ぼう、天敵である、と。


 千年前にはゴロゴロいた神が、五百年前の“ノレッセアの審判”時には殆ど姿を消した理由が――――“神殺し”。淫魔の様に“神”と呼ばれるクラスまで力を高めた者、神獣やレイフォミアの様に生まれながらにして神の力を秘めし者。


 それらと同じ様に彼等もまた、その様な能力、宿命を宿して生れ落ちる。

 神の力に対して絶対的な中和、破壊力、無効化を持つ絶対的な天敵。今はとある事情によってその数は殆ど居ない。それは神が減ったことで、存在理由がなくなっのと――――更にもう一つ理由があった。


 ――――コルヴェイ王のレイフォミアに対する敵意もそこにある。


『“神殺し”……!? そんな、だって彼等は――――!』

「――――そうだ。あの時、大陸中央で起きた災厄によって残らず死んだ」


 遥か遠い記憶。大陸最大の戦争と歴史に名を刻んだ――――“ノレッセアの審判”。

 レイフォミアの…………いや、コルヴェイ王の脳裏にあの悲劇が過ぎった。それが――――因縁。


「――――そう、貴様が我が故郷を不毛な大地へと変えたあの時だ!」

『うっ……、ま、まさか、貴方は……?』

「――――やっとだ、我が復讐はやっと……成る!」


 覇王の表情に烈火の如き怒りが表れ、レイフォミアが同様を見せる。自分と彼の因縁に気付き動揺と隙を見せれば、コルヴェイ王の腕が伸び、抵抗する間もなく首を締め上げられ、身体を持ち上げられた。

 ゆっくりと、しかし万力の様な圧力で殺意と共に押し潰さんとされる。


『くっ、ぁ……あ……』


 手足をバタつかせ、神の力で持って対抗しようとするが――――発動しない。目に映るほどの派手さは皆無だが、“神殺し”の力は絶大。エネルギーを収束しようとすれば、直ぐに根源を叩かれ、発動プロセスが成立しない。

 それは彼が自身をそう名乗った事が間違いでない証明となった。


「コルヴェイ王様!? お止めください! その身体はカーナリーニャの――――」

「――――黙れ……!」

「ひっ!? あ、あぁ、あ……」


 怒りに身を任せ、首を絞めている少女が誰であるかも忘れ去った王をルシアンが諌めようとした。

 ――だが、彼の怒りは既に誰にも消せないほどの業火。その火の粉であっても飛び移れば、それは自身の破滅と同義。


 一睨みで主の本気を強制的に理解したルシアンは、感じた事のない恐怖心に身を焼かれ、竦み、力なく震えて跪く。止めなければ――――理性ではそう思うのに、本能が逆らうと警告を発して思考を恐怖で雁字搦めにされてしまう。


 動けない彼女を余所に、王の怒りと行為はエスカレートしていく。


「ようやく始められるのだ。この仇を果たさぬ限り我は……」


 ――――過去はなかった事になどできない。誰もが忘れ、歴史から消え去ったとしても。

 コルヴェイ王は忘れない。“復讐”を掲げる理由はそれだけで十分。ゆっくりと力を込めていく手に更なる力が加わろうとする。


「――――何も始められぬ!」


 覇王の手に黒い何かが絡みつく。それは闇、感情と共に揺れ動く憎しみの炎。

 黒い炎は蛇の様にしゅるりとレイフォミアの――――カーニャの身体に捲きつき、害を成そうと動きを見せようとして――――。


「――――それは困るかなぁ?」


 ――――唐突に声。それと同時にコルヴェイ王の手が無理矢理開かれる。

 声の主――――アルフレドの手から放たれた水色の糸によって。


「アルフレドか……」

『かはっ……ごほっ……ごほっ!』


 解放され激しく咳き込むレイフォミア。コルヴェイ王は冷たく見下ろしながら、視線を現れたアルフレドに向ける。神の側近である彼の男は悪びれた様子もなく、いつもの口調で声を上げた。


「道は違えどレイフォミア様はボクの主君なんだ。殺されては困るね。それに神の力も奪ってもらわなきゃね?」


 忠誠心と打算、感情と理性。ごちゃ混ぜになったアルフレドの考えに、王は辟易した様に顔を歪めることとなった。


「――――」

「不服かい?」

「――よかろう、今回は退いてやる……」


 不服は勿論の事。だが、彼の望みを叶える為にはアルフレドの助けは必要不可欠。

 機嫌を損ねるのは可能な限り避けねばならない。それが待望であった“復讐”であっても、だ。


 胸の内に燃える怒りを、『もう少し、もう少しだけ待て……』と抑える様に王は深く息を着いた。


「それと言っていた男は始末したぞ?」


 機嫌といえば、今回ここへ来たのはご機嫌取りの一環だったと思い出す。始末はまだだが、戦闘不能に追い込み、尚且つ気を失った状態ならば似たようなものだろう。


「それは良かった! ――――で、死体は何処だい?」

「――――――――――――何?」


 王の報告に嬉しさを隠そうともしないアルフレド。しかし、その発言に彼は怪訝な顔をするハメになった。何処にと言われても目の前に横たわっているではないか――――そう続けられなかったからだ。


「馬鹿な、先程までそこに――――」


 悠理の身体が消えていた。確かに、レイフォミアの首を締め上げる瞬間まではまだ意識を失っていたハズだ。いくらコルヴェイ王が怒りに己を見失って居たとしても、そんな大きな変化を見逃すなんて有り得ない。


 左右を軽く確認――――居ない。

 殺気や戦意、その他の気配――――なし。


 最後に血の匂い――――あり。それは――――頭上から…………!

 バッと警戒を強めて見上げればやはりそこに――――居た。


「――――俺がどうしたって?」


 自由の使者を名乗る男が――――復活していた。その身体に新たな力を宿して…………。

次回、操れない力は暴風でしかない。

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